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2015年7月19日日曜日

頸部血管雑音と頸動脈狭窄/無症候性の頸動脈狭窄を評価する必要があるか?

頸動脈狭窄を評価する身体所見として、頸部血管雑音がある。

特に症状が無くても、45-54歳の2.3%, 75歳の8.2%で雑音を認め、
雑音は心筋梗塞発症リスク因子(OR 2.15[1.67−2.78])、心血管死亡リスク因子(OR 2.27[1.49−3.49])となる。(Lancet 2008;371:1587-94)

頸部血管雑音の頸動脈狭窄に対する感度、特異度を評価した26 trialsのメタアナリシス
狭窄率
感度
特異度
OR
25%
49.2%
90%
6.2[2.6-15.0]
50%
55.8%
82%
5.5[4.0-7.6]
60%
57.5%
80%
3.8[1.7-8.4]
70%
43.9%
86%
5.7[2.8-11.4]
75%
54%
87%
5.9[3.9-9.1]
80%
56%
68%
2.0[0.6-6.1]
臨床的に有意な狭窄
53%
83%
4.3[2.8-6.7]
(Q J Med 2012; 105:1171–1177)

 頸部血管雑音の頸動脈狭窄に対する特異性は高いものの、感度は50%前後。
 所見を認めれば狭窄がある可能性は高いものの、認めなくても否定はできない。

有意差はないものの、狭窄率が高いほど血管雑音を認める可能性は低下する傾向にある。

頸動脈狭窄の評価はいつすべきか?
TIAや脳梗塞患者、一過性黒内障患者では頸動脈狭窄の評価は行うべきであるが、
無症候の患者における狭窄スクリーニングは推奨されていない(U.S. Preventive Services Task Force Recommendation Statement 2014. Ann Intern Med. 2014;161:356-362.)。

なぜ無症候性の患者ではスクリーニングが推奨されない?
無症候性の内頸動脈狭窄の狭窄率と、脳梗塞発症リスクは以下のとおり
 狭窄率と同側の脳梗塞発症率
 狭窄率 50-69%では0.8%/年
 狭窄率 70-89%では1.4%/年
 狭窄率 90-99%では2.4%/年 (Eur J Vasc Endovasc Surg. 2005 Sep;30(3):275-84.)

無症候性の頸動脈狭窄患者を対象として、内科的治療 vs 内科的治療+内膜切除術の脳梗塞予防効果を比較したスタディのメタアナリシスでは、

 内膜切除術では長期的には脳梗塞を予防する効果が期待できるが、
 短期的には脳梗塞リスク、また死亡リスクを上昇させる可能性がある。
(Ann Intern Med. 2013;158:676-685.)
RR

RCTs Non-RCTs
長期予後 同側のStroke 0.72[0.58-0.90] 0.93[0.14-6.42]

Stroke 0.68[0.56-0.82] 0.86[0.44-1.66]

死亡 1.05[0.97-1.14] 2.81[1.99-3.98]
術後~30d Stroke 5.94[2.06-17.12] NA

死亡 3.68[0.77-17.72] NA

無症候性の頸動脈狭窄に対する内膜切除、血管内ステントの効果を評価したLevel 1 trialのまとめ (JAMA 2013;310:1612-1618)
ACAS trialは内膜切除+内科的治療 vs 内科的治療を比較
ACST trialは早期の内膜切除 vs 晩期の内膜切除
CRESTは内膜切除 vs 血管内ステント術 を比較。

ちなみに、
無症候性の内頸動脈狭窄患者に内膜切除術を行った場合
周術期合併症リスクが<3%と0%の時の脳梗塞予防効果を算出すると、
 1000件の内膜切除術を施行し, 5年間の脳梗塞予防効果は周術期合併症リスク2.3-2.8%で53-59例(約5.5%)
 0%の仮定で82-83例(約8.3%)
90%以上の患者でCEAの意義はなかったという結論になる(10年間でも4.6%と7.4%)
(Eur J Vasc Endovasc Surg (2014) 48, 633-640 )

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つまり、無症候性の頸動脈狭窄において、内科的治療に加えて血管再灌流療法を行う意義が今の所はっきりしていないため、スクリーニングは行わない、ということ。

内科的治療は基本的には降圧療法、糖尿病治療、高脂血症の治療であり、スクリーニングを行おうが、行わないであろうが、あまり方針に変わりはない(抗血小板薬をどうするか、という判断には関わるかもしれない)

内膜切除術や血管内ステントでわずかながら脳梗塞の予防は可能であり、今後はどの患者群で行えばより予防効果が高まるか(対費用効果的にも)が明らかになれば、スクリーニングを行う意義もでてくるというもの。

ちなみに無症候性の頸動脈狭窄患者におけるTIA/脳梗塞のリスク因子は以下のとおり
 CT/MRIで無症候性脳梗塞所見あり
 狭窄の増悪傾向あり
 低エコープラーク, GSM<15
 辺縁不整のプラーク
 TCDで塞栓子を検出
 内部に脂肪や壊死を含むプラーク, 欠けているプラーク
 プラーク内出血所見
 プラーク面積>80mm2
 内膜近傍の低エコー領域>10mm2
 頭蓋内血管まで連続性に狭窄あり
 同側, 対側のTIA, 脳梗塞の既往

低リスク群は, >75歳, 狭窄の増悪なし, GSM>30, 上記のプラークの性状なし.
(Eur J Vasc Endovasc Surg (2014) 48, 633-640)

これらでスコアを作成して、⚪︎⚪︎点なら無症候性でも手術を行う
ということになってゆくのではないのかね。

2015年7月16日木曜日

市中肺炎の原因

Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization among U.S. Adults. NEJM 2015
米国のChicago, Nashvilleにおける2320例の成人市中肺炎症例の解析.
 28日以内の入院歴がある症例, 免疫不全患者は除外.

原因微生物の頻度
 評価は培養, 菌体, 各種ウイルスPCR, 尿中抗原など使用可能ものをすべて使用
病原体が不明なものが62%と多く, 細菌性は14%のみ(肺炎球菌 5%).
ウイルス性が24%と1/4を占める。

年齢別の原因微生物
 どの年代でもRhinovirusによる市中肺炎の頻度は高い。

ちなみにメタアナリシスによるアジア各国における市中肺炎の原因頻度
(Trans R Soc Trop Med Hyg 2014; 108: 326–337)
入院患者群
肺炎球菌
インフルエンザ桿菌
Staph.
aureus
クレブシエラ肺炎
他のGNB
マイコプラズマ
クラミジア
肺炎
レジオネラ
ウイルス
TB
日本
26%
10%
3%
2%
4%
8%
5%
1%
5%
-
韓国
14%
1%
-
3%
-
7%
9%
1%
-
-
台湾
23%
5%
1%
7%
2%
14%
8%
2%
-
-
中国
9%
9%
2%
3%
3%
11%
5%
3%
11%
-
ベトナム
11%
11%
-
3%
-
-
-
-
-
-
タイ
12%
3%
4%
9%
5%
2%
7%
4%
22%
-
マレーシア
4%
4%
4%
10%
9%
7%
6%
4%
-
7%
シンガポール
5%
4%
-
2%
-
7%
-
1%
-
-
インドネシア
-
-
-
-
-
3%
0
3%
-
-
フィリピン
12%
19%
-
6%
-
-
-
-
-
-
インド
9%
1%
6%
9%
14%
14%
15%
6%
-
3%

外来患者群
ウイルス性の頻度は低いけども、これは検査方法でも差がでるので、
これらの数字がどこまで信頼できるかはよくわかりません。

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いままでウイルス性肺炎は小児で多い、と思っていましたが、成人でも結構多い。
Lancetの2011のReviewでは、ウイルス性市中肺炎は<5歳、>75歳で頻度が高くなるとのこと。
(Lancet 2011;377:1264-75)

細菌性肺炎とウイルス性肺炎の病状の比較
 当然ウイルス性肺炎は非定型肺炎様な病状となる。(Lancet 2011;377:1264-75)

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たしかにここ数カ月で、高齢者の市中肺炎、画像は非定型肺炎様で、マイコもレジオネラもクラミジアも陰性、という人は数例いました。
喀痰は採取できないか、採取できてもあまり有意な菌体はグラム染色で検出できず、という感じで、抗生剤をどうしようかな、とその都度迷う。

そういう症例はウイルス性肺炎として、抗生剤フリーで見るのも手なのかもしれません、、、
、、、が、ウイルス性肺炎と細菌性肺炎の合併は多い(H1N1インフルによる肺炎の4−24%で細菌感染を合併する[Lancet 2011;377:1264-75])という話もあるので、判断が相変わらず難しい。

まぁ、そういう症例(非定型っぽくて、喀痰が有意ではなくて、温泉やペットやマイコプラズマとの暴露歴もなく、マイコ迅速陰性、レジオネラ尿中抗原陰性例の高齢者。長い!)はジスロマックくらいでフォローするのもあり、と捉えておこう(注: no evidenceです)。
(今まではβラクタム+ジスロマックやLVFXとしてしまいましたが、、、)

2015年7月10日金曜日

COPD患者の肺癌スクリーニング

COPDは肺癌のリスク因子であり、
肺癌スクリーニングを評価したStudyのメタでは
CT所見にて肺気腫を認める場合, 肺癌診断リスクは OR 2.11[1.10-4.04]と約2倍となる (Lung Cancer 77 (2012) 58–63)

ただし、COPD患者において肺癌をどの程度の頻度でスクリーニングすべきか、という点は明確には決まっていない。

GOLD 1−2の軽症〜中等症COPD患者を
2つのコホートから年齢, 性別, BMI, FEV1, 喫煙量を合わせて抽出 (Respiratory Medicine (2013) 107, 702-707 )
 コホートはLow-dose CTで年1回スクリーニングを行う前向きコホートと, BMIとCOPDのリスクを評価する目的の前向きコホート研究.
 それぞれより年齢, 性別, BMI, FEV1, 喫煙量をMatchさせて抽出し, スクリーニング群と非スクリーニング群で肺癌診断率、死亡率を比較した(各群333例ずつ抽出)。

アウトカム(31ヶ月のフォロー)
 スクリーニング群では肺癌発症率は1.79/100pt-y, 肺癌死亡は0.08/100pt−y
 コントロール群では肺癌発症率 4.14/100pt−y, 肺癌死亡は2.48/100pt−y
 それぞれの肺癌発症率は比較できないものの,
 肺癌診断時のステージはスクリーニング群で有意に早期癌が多い。
 また、肺癌死亡率は有意にスクリーニング群で低い結果。

参考) 肺癌のステージと5年生存率 (Curr Probl Diagn Radiol 2013;42:220–230.)

どのようなCOPD患者で肺癌リスクが高いのであろうか、という評価にCOPD−LUCSS(lung cancer screening score)というものがある

2つの肺癌スクリーニングコホート(P−IELCAP, PLuSS)よりCOPD患者群を抽出し, 肺癌のリスクを評価. (Am J Respir Crit Care Med Vol 191, Iss 3, pp 285–291, Feb 1, 2015)
 PLuSSにおいてCOPD患者の肺癌リスクを評価するスコアを作成し
 P-IELCAPにてバリデーションを施行.
COPD患者において肺癌のリスク因子となるのは以下の4項目
 4項目でCOPD−LUCSS(lung cancer screening score)を作成
COPD−LUCSS
HR
点数
年齢>60歳
2.3[1.5-2.3]
3
BMI<25
1.2[0.9-1.8]
1
喫煙 >60 pack−years
1.5[1.1-2.2]
2
画像にて肺気腫所見
2.7[1.7-4.3]
4

スコアと肺癌発症率
COPD−LUCSS 0−6点がLow−risk群、7−10点がHigh−risk群と判断する。
High−risk群は肺癌 HR 3.5[1.7-7.1]。

-------------------------

COPDでは肺癌スクリーニング、フォローが必要なのであろうが、
全例で行うのか? その頻度はどうするのか? 方法は? まだまだよくわかりません。

肺癌リスク因子やスコア別でスクリーニングの適応や方法を考え、
それをStudyで検証し、実臨床へ応用できるようになるまではまだまだかかりそうです。

High-riskならば少なくとも年1回の画像評価はしてもいいと思います。個人的には。