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2013年11月21日木曜日

髄膜炎に合併する水頭症

細菌性髄膜炎で入院、治療して約1ヶ月前に退院したが、その後 悪心嘔吐がぶり返し, 頭部CTで水頭症を認めた. 意識障害はない.

髄膜炎は水頭症のリスクの1つとしては有名だが、実際はどの程度合併し得るのか?

Neurology® 2010;75:918–923
市中発症の細菌性髄膜炎577例のRetrospective studyでは, 水頭症を併発したのは26例(5%).
 1例を除き, 交通性水頭症であった.
起因菌で多いのは肺炎球菌, リステリア.

入院時に水頭症を認めたのが 69%, 入院中に発症したのが31%.
入院〜水頭症発症までの期間は7d[1-37]

水頭症発症例 vs 非発症例の比較;

水頭症+髄膜炎症例の方が死亡リスク, 神経予後は悪い
水頭症合併自体が予後不良因子となる可能性があるが, 水頭症になるまでの強い炎症によるものが原因か, 水頭症自体が予後不良の原因かは不明瞭

 入院中の水頭症発症例では, 意識障害や痙攣, 神経局所症状を呈し, 画像評価がされ発見されるパターンが多い.

もう一つ文献を紹介;
BMC Infectious Diseases 2013, 13:321
1998-2010年に受診した北デンマークにおける市中細菌性髄膜炎症例 165例中, 水頭症合併は5例(3%)であった.
 全例が交通性水頭症で, 初診時に既に合併していた例が3例, 他2例は入院後44, 99日後に診断(意識障害で画像検査)

原因菌頻度; 
 水頭症はE coliで2/6 例, S aureusで3/7 例で認めた. Listeriaでは合併例は無し.

 水頭症を来した5例では全例神経予後不良であった
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細菌性髄膜炎における水頭症合併頻度は3-5%位と少ないながらあり得る.
その6割-7割が細菌性髄膜炎時に既に合併しており, 3-4割が入院後に後から出現するパターン. 出現までの期間は数日〜2-3ヶ月後のこともある.

後から出現する場合は, 意識障害や痙攣や神経症状が出現し, 画像検査を行い判明するパターンが多く, 治療しても神経学的予後は不良のことが多い.

予後が不良な理由としては,
 そもそも水頭症となるような強い炎症の髄膜炎だった可能性も考えられるし,
 髄膜炎診断後に画像フォローする習慣, 意味(cost-benefit的)が無いため, 有症状となってから診断, 対応するためだからなのか, よくわからないが, 多分前者の用な気がする…

 特に数ヶ月後に出現した水頭症は特に。慢性経過ならばNPHのようにある程度可逆性の部分もあるのではないかな。

2013年11月20日水曜日

心房細動にはダイエット

JAMA. 2013;310(19):2050-2060
症候性のAf* 150例のSingle center, partially blinded RCT.
 ダイエット指導群 vs 通常の生活指導群に割り付け, Afの症状, 持続時間を比較. 
 両群とも他のメタボリックシンドロームへの介入は積極的に行った.

*症候性のPaf, persistent Af患者で, BMI>27, 腹囲>100cm(男性), 90cm(女性), 年齢21-75yを満たす患者.
 DMでインスリン管理中, 重度の心臓弁膜症がある場合は除外.
 経過中にアブレーションを受けた患者はその時点で中断.

ダイエット指導; 800-1200kcal/dのカロリー制限と, 20分の運動を週3回 → 45分を3回/wkに徐々に増量.

母集団;

アウトカム;


介入群では有意にAfの症状は改善するが, 追跡率が介入群(56%), Control群(52%)というのが何とも.

ちなみに脱落した患者の内訳介入, Control
他のStudyに参加; 7名, 10名
アブレーション; 10名,14名
アドヒアランス不良; 3名, 0名
消化管症状; 3名, 0名
Thyrotoxicosis; 2名, 1名
INR不安定; 2名, 0名
悪性腫瘍; 2名, 0名
; 4名, ACS, HF, 貧血等

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追跡率に難がありますが、ダイエットを頑張れた人ではかなりの改善が見込めている. 抗不整脈薬では副作用の面でもなかなか大変ですし、痩せて改善するならばそら当然痩せさせるべきですね。

脳梗塞急性期の降圧療法

t-PAの適応となる脳梗塞例ではt-PA適応基準に則り, 収縮期血圧<180まで降圧する.
また, 著明に血圧が高い患者 >220/120でも降圧することが勧められている.

上記を満たさない患者において, 脳梗塞急性期の降圧はどうすべきか?
色々Studyがでている.

Stroke(ICH, Infarction)179名をLabetalol vs Lisinopril (トランデート®) vs Placeboで降圧(RCT, ITT) (Lancet Neurol 2009;8:48-56)
 目標はsBP 145-155mmHg, ΔsBP 15mmHg
 高血圧脳症, sBP>200は除外されている, 平均NIHSS score 9[5-16]
 低血圧による症状出現時は中止とする
 経口摂取可能ならば内服, 不可能ならば舌下 or IVで投与.

アウトカム;
Outcome
降圧群(n=113)
プラセボ群(n=59)
RR
2wk後の死亡, 完全依存
61%
59%
1.03[0.80-1.33]
72hr以内のNIHSS 4以上の増加
6%
5%
1.22[0.32-4.54]
24hr時点でのΔsBP
21[17-25]
11[5-17]
P=0.004
重大な副作用


0.91[0.69-1.12]


降圧をしたところでそれで神経予後が改善することも無いし, 死亡リスクが減少することもないが, 降圧をしても害になることもない, という結論.

SCAST; 脳梗塞, 出血患者2029名のDB-RCT.
 発症<30hrの脳梗塞例を対象とし, 
 Candesartan 4mg(D1), 16mg(D3-7) vs Placeobに割り付け, 予後を比較.

 当然血圧はCandesartan群で有意に低下するが, 6mo 心血管系イベントは有意差無し(12% vs 11%, HR1.09[0.84-1.41])
 他, 各Outcomeも有意差無し. むしろCandesartan群でStokeの進行リスクがあがる傾向(6% vs 4%, HR1.47[1.01-2.13]) 

 この文献でそれまでの11 trialsをまとめて, Meta-analysisもされていたが, 死亡, 予後への影響は有意差無し(HR 1.04[0.97-1.12])

そして今回発表されたCATIS trial (JAMA online first; Effects of Immediate Blood Pressure Reduction on Death and Major Disability in Patients With Acute Ischemic Stroke The CATIS Randomized Clinical Trial)
CATIS trial; 中国におけるSingle-blind RCT.
 脳梗塞発症48h以内で, sBP 140-220mmHgを満たす4071例を, 降圧群(24h以内に10-25%の降圧, 7d以内に<140/90を達成) vs 経過観察群(降圧薬を全て中止)に割り付け, 予後を比較.
 血圧>220/120の患者, t-PA使用群は除外.

母集団

アウトカム

神経学的予後, 死亡リスク, 脳梗塞再発, 血管イベントすべて両群で有意差無し.
 Subanalysisでも特に有意差のでる項目は無し.
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と, いうことで,
正直どちらでも良いという印象.
別に降圧してもしなくても, それで害になることも無い.

内服できそうならば降圧薬を再開, 開始したらいいのではないでしょうか。

2013年11月15日金曜日

糖尿病性腎症による尿中蛋白の量

Am J Kidney Dis 54:840-849

Irbesartan in Diabetic Nephropathy Trialにおいて, タンパク尿の程度, ネフローゼ症候群の頻度を評価.
 Studyは2型DMで, HT(+), 尿中蛋白 >0.9g/d, Cre 1.0-3.0mg/dLのN=1715を対象としたRCT(Irbesartan vs Placebo)
 1608名で尿中蛋白を評価し, 1467名でネフローゼ症候群の症状, 所見の有無が評価可能であった.

尿中タンパク量の分布;
 44%で尿中蛋白量3.5g/dを超える

また, 尿中タンパク量 3.5g/dは尿中アルブミン量 2.2g/dに相当する

Cre 1-3mg/dL, 尿中タンパク量>0.9g/dの群では,
実に半数がネフローゼ領域のタンパク尿を呈する.

正直 実際の印象よりも多かった.

ちなみに, ネフローゼ領域の尿中タンパク量の存在を示唆する所見は以下の通り,

ただし, 2型糖尿病533例の腎生検にて, その3.7%で微小変化群が認められた報告もあり, 治療可能な原因がある可能性もあることに注意すべき. The Scientific World JOURNAL (2005) 5, 828–833

2013年11月14日木曜日

採尿方法と培養の偽陽性

N Engl J Med 2013;369:1883-91.
18-49歳の女性で, 膀胱炎症状で来院した226名, 236回のエピソードにおいて, 尿道カテーテルにて採尿した後に, 自己排尿の中間尿を採取.
 カテーテル尿と中間尿の尿培養結果を比較. 比較できたのは202検体
 カテーテル尿と中間尿, 双方とも培養陽性となったのが70%であった.
カテーテル尿で陽性, 中間尿で陰性となった例はほぼ無く,
中間尿のみで陽性となった例が8%. → Contaminationの可能性
 特にGram陽性菌でその傾向が強い. (S. saprophyticusを除く)
 腸球菌は20例で検出され, 内18例がコンタミの可能性, 
 GBSは25例で検出され, 内23例がコンタミの可能性.
 S. saprophyticusは偽陽性は無し.

中間尿における菌種と定量による原因菌の感度, 特異度
 E coliはどの量でもと疑わしいが, 腸球菌とGBSはどの量でもPPVは低い.
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膀胱炎において, 外来でグラム染色をするとたまにGPCが混ざっていることがあり,
その場合抗生剤選択に迷うことがある.

GPC clusterならば腐性ブドウ球菌として治療するが、
GPC chainの場合に腸球菌カバーが必要かどうか, 
 具体的には第一世代セフェムでよいか、アミノペニシリンにするか, という点で迷うことがあるが, 基本的に無視しても大丈夫ということか.

SLE患者の妊娠



Systemic lupus erythematosus SLE 全身性エリテマトーデス
Pregnancy 妊娠

2013年11月13日水曜日

薬剤性ループス、血管炎について

いくつかの薬剤により血管炎やLupus, 筋炎を発症することが知られている.
薬剤性の自己免疫性疾患のCase reviewでは, 2009-2010の2年間の検索で56例が報告.
27例(48.2%)が血管炎, 8例(14.3%)がLupus, 13例(23.2%)が筋炎, 2例(3.6%)が強皮症.

薬剤性Lupus 11例の原因薬剤は,
 最も多いのがINFで3例. 次いで化学療法(Doxorubicin, cyclophosphamide, fluorouracil)
 他はフェニトイン, セフェピム, チクロピジンで報告あり.
薬剤性血管炎 16例の原因薬剤は,
 抗TNF阻害薬, Propylthiouracil, levamisole含有コカイン等.
 抗TNF阻害薬では, Infliximabが6例, Etenarceptが2例, Golumimab 1例.
 抗甲状腺薬はPTU ± Methimazoleでの報告が大半.
 他の薬剤として, 化学療法, 抗生剤, スタチン, GRH agonist, インフルエンザワクチンの報告がある.
薬剤性筋炎 13例の原因薬剤
 最も多いのは抗TNF阻害薬とスタチン
 スタチンは限局性の筋炎が有名だが, 免疫に由来する壊死性筋炎を生じることがある.
薬剤性強皮症 2例の原因薬剤
 パクリタキセルと抗TNF阻害薬で報告あり.
それ以外の薬剤性 膠原病
 抗てんかん薬によるシェーグレン症候群の報告, Risedronate, efalizumabによるRAの報告がある.

まとめると, 
膠原病の原因となり得る薬剤は主に4種類; 抗TNF阻害薬, 化学療法, PTU, INFが特に多い.
 抗TNF阻害薬や化学療法はどのタイプも来し得る.
 PTUは血管炎が主. 特にANCA関連血管炎の原因となる.
 INFはSLEや筋炎の原因となり得る.
(Curr Opin Rheumatol 2012, 24:182 – 186)

Propylthiouracil(PTU)による薬剤性膠原病を色々まとめてみると,

PTUによる11例の膠原病の解析(Rheumatol Int (2012) 32:679–681)
11例中, 7例が血管炎で4例がLupusであった.
 血管炎はANCA陽性で, 血管炎所見ある場合に診断し,
 LupusはANA陽性で, 1つ以上のSLEの特徴を有し, 血管炎所見(-)で定義

ANCAは全例で陽性.
 薬剤開始〜発症までは15m〜134mと様々. 長期間経過後に発症する可能性もある.
 血管炎はLupusよりPTU長期内服例で多い(74.7±29.3m vs 32.3±24.9m)

PTUによる血管炎, 薬剤性Lupusの解析(42例のLiterature reviewと4例の経験例の報告)
(Semin Arthritis Rheum. 2006 Aug;36(1):4-9.)
 1966-2004年に血管炎 30例, 薬剤性Lupus 12例が報告.
 経験例では血管炎が1例, Lupus 3例であった.

経験例の4例は以下の通り
 PTU-Lupus 3例全てでp-ANCAは陽性となる. 血管炎でもANCA陽性.

Literature reviewの42例は,
血管炎症例の方がLupusよりもより高齢であり, PTUの内服期間も長い傾向がある.

臨床所見とLabの比較;
 Lupusではより筋骨格系症状が多く, 血管炎では腎障害, 肺障害が多い
 PTU-lupusではANA陽性が90%, ANCAは血管炎もLupusも同程度陽性. c-ANCAはLupusでの陽性例は無かった.

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経験例4例とReview 42例, (Rheumatol Int (2012) 32:679–681)から4例のPTU-lupus例を考慮すると, PTUによる薬剤性Lupusでは主にp-ANCAとANAが陽性となることが多く, p-ANCAは13/19(68%)で陽性となり, 血管炎ではほぼ全例でANCA陽性となることが分かる. 

PTUの場合 内服開始から10年経過後に血管炎, Lupus発症する例もあり, いつ起きても良いが, 基本的に長期内服群では血管炎の方が多い.