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2018年8月14日火曜日

症例: 70歳台女性, 変な感じが持続する

70台女性主訴言葉で言い表せない感じ

 高血圧に対して降圧薬を使用している程度の背景の女性.
 特に今まで問題なく生活していた.
 3ヶ月ほど前より「言葉で言い表せないような感覚」を自覚最初は発作的に30分程度ありそれを繰り返していた強いて言うならばイライラ、モヤモヤ、不安などと言った症状動悸や冷や汗もあったとのこと
 症状の頻度は増加し常に変な感覚が付きまといたまに強く不安になるよっとした音や光が過敏に感じイライラムカムカするためにテレビも見ない食事も食べたくないなど症状が増悪した.
 他病院を受診し血液検査など一通り評価したが異常なし(甲状腺機能含む). 精神疾患が疑われ精神科がある病院を受診せよとのことで当院へ(精神科外来ありませんが・・・). そして内科へ.

 下痢はなくむしろ便秘気味嘔気食欲低下あり.

既往:高血圧内服:アムロジピン

 診察時はやや興奮気味ではあるが意識晴明見当識障害もなし. BP 130/60, HR 105bpm, reg. RR 22, SpO2 99%, BT 36.2
 頭頸部に問題なし心音は雑音や過剰心音なし頻脈. 他胸腹部に異常所見なし. 四肢の筋緊張は強くなかなか脱力してくれない促すと可能.
 DTRは減弱亢進なし左右差なし神経障害も明らかな異常なし.

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新規発症の精神症状であり精神科紹介前にやはり二次性の評価は必要
便秘症状や食欲低下などもあり甲状腺機能は前医にて正常範囲との報告.そこで基本的な血液検査を再度評価.

>>血清Ca 11.6mg/dLと高Ca血症あり.

ということで高Ca血症に伴う精神症の可能性を考慮. 補正をしつつ原因精査を開始した.


Ca血症では消化管症状とともに精神症状も有名.どのような症状があるのか?

Ca血症による精神症状
(Am J Psychiatry. 2017 Jul 1;174(7):620-622.)
・機序は不明確であるが, Caが中枢神経のMonoamine代謝に関わることが関連していると考えられている.
長期間の高Ca血症により生じるが, Ca血症の重症度と精神症状は相関するとは限らない.
 著明な高Ca血症は昏睡となるが, 10-14mg/dLでは抑うつ症状~イライラまで様々.

PHPT(原発性副甲状腺機能亢進症)において, 軽症の高Ca血症があり精神症状のみ認められる症例報告もある
(Am J Psychiatry. 2017 Jul 1;174(7):620-622.)
・PHPTに対して副甲状腺切除を行なった患者群の解析では,
 不安症状が43.1-53.0%
 抑うつ症状が33.0-62.1%, 自殺念慮が22%
 易怒症状が51.9%
 幻覚, 妄想が5-20%
 認知障害が37.3-46.5%
特に高齢者では見落とされやすい

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・高Ca血症による精神症状には抑うつ症状や無為など陰性症状〜興奮, 妄想幻覚, イライラなど陽性症状まで様々な精神症状呈する.
・精神症状は軽度の高Ca血症でも生じえる. 昏睡までいくのは>14mg/dLの高度上昇例で多い
急性~亜急性経過の精神症状認知機能低下では高Ca血症に伴うものの可能性も考慮する.(Psychosomatics 2002; 43:413–417)