ICU患者における血糖コントロール
このNICE-SUGAR studyにおいて, ICU管理中の低血糖エピソードと死亡リスクへの関連を評価したStudy (NEJM 2012;367:1108-18)
低血糖エピソードは Moderate; 血糖41-70mg/dLとSevere; 血糖≤40mg/dLと定義.
各群(Intensive control群とConventional control群)の低血糖の発症率は,
低血糖
|
Total
|
Intensive
|
Conventional
|
Moderate
|
45.0%
|
74.2%
|
15.8%
|
Severe
|
3.7%
|
6.9%
|
0.5%
|
低血糖エピソードのリスクファクター(Odds Ratio)
Moderate
|
Severe
|
Moderate
|
Severe
|
||
年齢 (1歳上昇毎)
|
1.00[1.00-1.01]
|
1.00[0.99-1.01]
|
外傷
|
1.28[1.03-1.59]
|
0.77[0.46-1.28]
|
APACHE II (1pt up)
|
1.01[1.00-1.02]
|
1.01[0.99-1.03]
|
糖尿病
|
1.24[1.01-1.52]
|
|
BMI(1上昇毎)
|
0.97[0.96-0.98]
|
0.96[0.94-0.99]
|
元々インスリン使用
|
1.61[1.14-2.28]
|
1.46[0.85-2.52]
|
男性
|
0.78[0.67-0.90]
|
0.88[0.66-1.17]
|
元々ステロイド使用
|
1.09[0.88-1.34]
|
1.51[1.05-2.18]
|
術後
|
0.82[0.71-0.96]
|
0.78[0.56-1.07]
|
心不全
|
1.24[1.07-1.44]
|
1.41[1.04-1.92]
|
Severe sepsis
|
1.28[1.08-1.53]
|
0.92[0.66-1.29]
|
Intensive group
|
24.19[20.98-27.88]
|
16.39[9.32-28.82]
|
低血糖エピソードと死亡リスクについて
Moderateの低血糖エピソードは死亡HR 1.41[1.39-1.85]
Severeの低血糖エピソードは死亡HR 2.10[1.59-2.77]と有意に死亡リスクを上昇させる.
Subgroup解析では,
Intensive control群, Conventional control群別の比較, 基礎疾患でDMがある群, 無い群別の比較, 術後患者群, 非術後患者群別の比較全てで低血糖エピソードは有意に死亡リスクを上昇させるという結果.
低血糖エピソードも, 1日でもあれば有意に死亡リスクを上昇させ得る.
複数回あればその分リスクは更に上昇.
また, 低血糖時, インスリンを使用していない群はより死亡リスクが高い(当然といえば当然)が, 使用している群も死亡リスクは上昇する
ちなみに, 死亡原因別の評価では, 低血糖エピソードはDistributive shockによる死亡リスクが特に上昇する. 不整脈や神経原性, 呼吸障害による死亡リスクには関与しない.
つまり低血糖エピソードを繰り返すとショックからの離脱が遅れることになる可能性がある? 感染症コントロールが効きにくくなる可能性があると解釈できるか.
血糖はしっかりコントロールしたいが、低血糖にしてしまっては逆効果であり, その辺のさじ加減が大事.