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2023年9月13日水曜日

Hemicrania continua: 持続性片側頭痛

症例: 30台男性. 慢性経過の持続性頭痛を主訴に受診.

 頭痛は30歳前半で発症し, 常に右前頭部の頭痛. さらにその頭痛が急性増悪を繰り返す. 初期は片頭痛と診断されていた. 頭痛は締め付けられるような頭痛.

 頭痛増悪時は突き刺されるような, 眼の奥の痛みであり, 流涙や鼻汁を伴う. また眼瞼が腫れぼったくなることもある. 悪心嘔吐あり. 

 頭痛増強時はじっとしていられない.

 前兆症状は特にみとめられないとのこと.


 頭部画像検査は特に異常は認めず. 


というような症例.



Hemicrania Continua(HC)は持続性片側頭痛と訳され, 群発頭痛, Paroxysmal Hemicrania(PH)と同じく, 三叉神経・自律神経性頭痛の1つである.

(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)

・また, インドメタシンが著効する頭痛として有名. PHもインドメタシン反応性頭痛の1つである.

・持続性, 片側性の頭痛で, 流涙や結膜充血, 眼瞼下垂, 発汗, 鼻汁など自律神経症状を伴うことが多い.
 

・頭痛は左右でどちらかのみ生じ, 交代しない = Side-locked headacheの鑑別として重要

 補足: Side-locked headache

・クリニックにおける頭痛の1.8%[1.0-3.3]がHCであり
そこまで稀な一次性頭痛ではない.

(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)

・Side-locked headacheのうち, HCは4番目の原因.


 群発性頭痛, Side-locked migrane, cervicogenic headacheに次ぐ

・また, 三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)で2番目に多い(群発性頭痛に次ぐ)


HCの頭痛の特徴

・持続性の片側性頭痛に加えて, 増悪を繰り返す経過となる.

・基礎の慢性頭痛はVAS 3.3-5.2程度の中等度の頭痛であり,
 身体活動を妨げる程度ではない.

・増悪する頭痛はさまざまな程度, 性質の痛みであり, 重度のことが多い
 

 VAS 9.0との報告もある.

 増悪は60分〜1日程度が多く, 頻度は1日1-5回 (Cephalalgia 2012;32(11) 860–868)

・自律神経症状も伴う; 流涙や眼瞼浮腫, 鼻汁, 鼻閉, 耳閉感,
 前頭部の腫脹, 発赤, 発汗など.

・落ち着かない疼痛となる. 

・また片頭痛様の症状(悪心嘔吐など)もあり
 

 HCにおいて悪心は44%, 羞明 35%, 聴覚過敏 22%.


 これらは片頭痛症例よりも少ない(80-90%)

(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)

・HCにおける自律神経症状の頻度

(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)(Curr Pain Headache Rep. 2023 Aug 11. doi: 10.1007/s11916-023-01156-9.)


HCの診断基準


HCと片側固定された片頭痛の比較

(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)

他の頭痛との比較

(Curr Pain Headache Rep. 2023 Aug 11. doi: 10.1007/s11916-023-01156-9.)


HCの治療

・インドメタシンに反応する頭痛の1つであり, 診断においても重要(インドメタシン試験)

 治療は25mg tidより開始し, 1週間程度で増量する.
 

 10-18%が≤75mgで完全に頭痛は消失.
 

 40-50%が≤150mg/dで消失
 

 >40%が≥225mg/dで消失する.

・効果があればそのまま3-6ヶ月継続し, その後頭痛に応じて減量, 適切な継続量で継続. 

 多くの症例で減量が可能.

・インドメタシンで副作用が出現した場合, 他のCOX-2阻害薬やNSAID, トピラマート, メラトニン, ガバペンチン, ベラパミル, ステロイドを検討する.


インドメタシン試験

・75-150mg/日を経口投与(8時間毎に3回投与)
または100-200mgをIMし, 頭痛への反応性を評価する.

・頭痛の顕著な改善があればインドメタシン反応性頭痛としてHCもしくはPHを考慮.

・反応するタイミングは, 内服使用後2日以内に改善を示すことが多いが,
 完全に頭痛が消失するまでは4週間程度かかる例もある.

 IM投与例では2時間以内に疼痛が消失する.

・インドメタシン中止にて24時間以内に頭痛は再発する.


インドメタシン筋注は国内には製剤なし.

インドメタシン内服は製造中止になっており, 現状プロドラッグであるインドメタシンファルネシル(インフリーCP®)やアセメタシン(ランツジール®)が使用可能である.

・インドメタシンファルシネル 200mg = インドメタシン25mg換算

  (400mgより開始. 臨床上の有益性が上回れば増量可と添付文章に記載)

 アセメタシン 30mg = インドメタシン25mg換算 

  (1日最大用量 180mg: インドメタシン換算で150mg)