症例: 30台男性. 慢性経過の持続性頭痛を主訴に受診.
頭痛は30歳前半で発症し, 常に右前頭部の頭痛. さらにその頭痛が急性増悪を繰り返す. 初期は片頭痛と診断されていた. 頭痛は締め付けられるような頭痛.
頭痛増悪時は突き刺されるような, 眼の奥の痛みであり, 流涙や鼻汁を伴う. また眼瞼が腫れぼったくなることもある. 悪心嘔吐あり.
頭痛増強時はじっとしていられない.
前兆症状は特にみとめられないとのこと.
頭部画像検査は特に異常は認めず.
というような症例.
Hemicrania Continua(HC)は持続性片側頭痛と訳され, 群発頭痛, Paroxysmal Hemicrania(PH)と同じく, 三叉神経・自律神経性頭痛の1つである.
(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)
・また, インドメタシンが著効する頭痛として有名. PHもインドメタシン反応性頭痛の1つである.
・持続性, 片側性の頭痛で, 流涙や結膜充血, 眼瞼下垂, 発汗, 鼻汁など自律神経症状を伴うことが多い.
・頭痛は左右でどちらかのみ生じ, 交代しない = Side-locked headacheの鑑別として重要
・クリニックにおける頭痛の1.8%[1.0-3.3]がHCであり そこまで稀な一次性頭痛ではない.
(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)
・Side-locked headacheのうち, HCは4番目の原因.
群発性頭痛, Side-locked migrane, cervicogenic headacheに次ぐ
・また, 三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)で2番目に多い(群発性頭痛に次ぐ)
HCの頭痛の特徴
・持続性の片側性頭痛に加えて, 増悪を繰り返す経過となる.
・基礎の慢性頭痛はVAS 3.3-5.2程度の中等度の頭痛であり, 身体活動を妨げる程度ではない.
・増悪する頭痛はさまざまな程度, 性質の痛みであり, 重度のことが多い
VAS 9.0との報告もある.
増悪は60分〜1日程度が多く, 頻度は1日1-5回 (Cephalalgia 2012;32(11) 860–868)
・自律神経症状も伴う; 流涙や眼瞼浮腫, 鼻汁, 鼻閉, 耳閉感, 前頭部の腫脹, 発赤, 発汗など.
・落ち着かない疼痛となる.
・また片頭痛様の症状(悪心嘔吐など)もあり
HCにおいて悪心は44%, 羞明 35%, 聴覚過敏 22%.
これらは片頭痛症例よりも少ない(80-90%)
(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)
・HCにおける自律神経症状の頻度
(Cephalalgia. 2023 Jan;43(1):3331024221131343.)(Curr Pain Headache Rep. 2023 Aug 11. doi: 10.1007/s11916-023-01156-9.)HCの診断基準
HCと片側固定された片頭痛の比較
(Ann Indian Acad Neurol 2018;21:S23-30.)他の頭痛との比較
(Curr Pain Headache Rep. 2023 Aug 11. doi: 10.1007/s11916-023-01156-9.)HCの治療
・インドメタシンに反応する頭痛の1つであり, 診断においても重要(インドメタシン試験)
治療は25mg tidより開始し, 1週間程度で増量する.
10-18%が≤75mgで完全に頭痛は消失.
40-50%が≤150mg/dで消失
>40%が≥225mg/dで消失する.
・効果があればそのまま3-6ヶ月継続し, その後頭痛に応じて減量, 適切な継続量で継続.
多くの症例で減量が可能.
・インドメタシンで副作用が出現した場合, 他のCOX-2阻害薬やNSAID, トピラマート, メラトニン, ガバペンチン, ベラパミル, ステロイドを検討する.
インドメタシン試験
・75-150mg/日を経口投与(8時間毎に3回投与) または100-200mgをIMし, 頭痛への反応性を評価する.
・頭痛の顕著な改善があればインドメタシン反応性頭痛としてHCもしくはPHを考慮.
・反応するタイミングは, 内服使用後2日以内に改善を示すことが多いが, 完全に頭痛が消失するまでは4週間程度かかる例もある.
IM投与例では2時間以内に疼痛が消失する.
・インドメタシン中止にて24時間以内に頭痛は再発する.
インドメタシン筋注は国内には製剤なし.
インドメタシン内服は製造中止になっており, 現状プロドラッグであるインドメタシンファルネシル(インフリーCP®)やアセメタシン(ランツジール®)が使用可能である.
・インドメタシンファルシネル 200mg = インドメタシン25mg換算
(400mgより開始. 臨床上の有益性が上回れば増量可と添付文章に記載)
アセメタシン 30mg = インドメタシン25mg換算
(1日最大用量 180mg: インドメタシン換算で150mg)