原因不明の片側性, 滲出性胸水貯留の症例. 内服薬剤にバルプロ酸の記載があった.
たしか, 薬剤性の胸水貯留の原因にバルプロ酸があったはず...
そこでバルプロ酸の胸水貯留にはどのような特徴があるのか, 調べてみる.
(Clin Toxicol (Phila). 2021 Oct;59(10):869-876.)
バルプロ酸による胸水貯留
1970-2020年に報告されたバルプロ酸による胸水貯留例をReviewした報告
・他に原因が考えられるものを除外し, 28例がバルプロ酸による胸水貯留と判断された.
・胸水のタイプは主に4つに分類された;
> 多くが好酸球が優位な滲出性胸水となる(17/28, 60.7%) . このうち末梢血好酸球増多は10例で認められた
> 他にはリンパ球が優位な滲出性胸水が2/28で報告.
> 漏出性胸水が3/28(10.7%)
> バルプロ酸による薬剤性Lupusに伴う胸水貯留が5/28(17.9%). このうち好酸球性の胸水が3例. ANAは全例で陽性であり, 抗ヒストン抗体は2例で陽性であった.
好酸球性胸水例: 開始後~2ヶ月程度が多い.
リンパ球性胸水, 漏出性胸水例: 好酸球性よりも薬剤開始後時間が経過している印象
薬剤性Lupus症例: 開始後早期のものもあるが, 数年経過して発症しているものが2/5あり.
薬剤性Lupus以外の症例における評価
・両側性は8/23であり, 半数以上が片側性. また, 心嚢液貯留も伴う例がある.
薬剤性Lupus例の評価
・これも両側性は2/5.
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バルプロ酸による胸水貯留は稀な病態であるが, ありえる.
薬剤開始後数カ月以内に生じる場合は主に好酸球優位の滲出性胸水となる.
時間が経つとリンパ球優位の滲出性胸水や漏出性が生じえる.
また, 数年の経過で薬剤性Lupusを発症し, 胸水貯留を生じるパターンもある.
薬剤の中止により数カ月で改善する経過となる.