ページ

2022年11月11日金曜日

自己免疫性内耳障害: 膠原病における難聴の合併頻度は?

 2021年に以下についてブログに書いた.

免疫介在性内耳障害, 自己免疫性内耳障害


それからも, ちょこちょこ膠原病患者さん亜急性〜慢性で生じる難聴±内耳障害(ふらつき)という患者さんは診療する機会がある. 悲しいかな, 新たに紹介される患者さんで, 数年前より難聴が進行し, 気づかれず/また気づかれてもステロイドトライアルを行なっていおらず, すでに不可逆性となっている症例もある.


特に通常のフォローで免疫抑制(特にステロイド)を使用する頻度が低い, シェーグレン症候群や, 強皮症の患者さんで目立つ気がする.


ステロイドが適応となる患者さんではその治療により抑えられている/治療されているということもあるのだろうか.



各疾患における難聴の頻度と少し調べてみた.

強直性脊椎炎患者のMetaでは,
聴力障害を伴う頻度は42.4%[29.2-56.2]
(J Rheumatol. 2021 Jan 1;48(1):40-47.)
・非AS患者との比較で, 聴力障害のORは4.65[2.73-7.91]と有意にリスクは上昇
・特に高音において, 聴力障害の程度が強い

SSc患者における感音性難聴
(Clin Rheumatol. 2018 Sep;37(9):2439-2446.)

・2割弱で難聴を自覚
. 耳鳴は4割強と多い. 
 難聴のほとんどが感音性
・SScのタイプや他のパラメータとの関連性は認められない.
(皮膚所見やNFC所見など)

シェーグレン症候群の観察研究のMeta-analysisにおいて,
 難聴の合併率は36.7%(バイアス中程度を除いた頻度).
・感音性難聴は42.6%[27.8-58.8]

 伝音性は5%, 混合性難聴が2.3%と, ほぼ感音性難聴となる.
(Rheumatol Int. 2022 Oct 28. doi: 10.1007/s00296-022-05235-9. Online ahead of print.)


レビューより, SS, RA, SLEにおける難聴の頻度とその音域
(Int J Mol Sci. 2022 Sep 23;23(19):11181. )

・自己免疫性内耳障害では高音での聴力低下の頻度が高い.

 通常会話で使用する500-2000Hzは保たれることも多く, 
気づかれていないこともある


------------------------------

膠原病患者さんではそれなりに難聴を伴う頻度が高い.
そしてその難聴は治療可能な可能性がある.
ステロイドを2週間程度使用し, 聴力検査で改善があればそのまま継続/減量しつつ維持/他薬剤へ置き換え, 反応がないと判断されれば2週間で終了する.

その辺に意識を向けると, 引っ掛けられる患者さんはそれなりにいるように思う.