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2021年6月28日月曜日

回帰性リウマチ

 疾患例: 30歳台女性. 5-6年前より間欠的な関節炎症状が認められた.

・月に1-2回, 急性経過で関節痛を生じ, 1日〜数日で改善する.

・関節は通常1箇所程度で, 多くても2-3箇所.

・部位は手関節, MP, PIP, DIP, 膝など様々. 部位は一定ではない.

・指ではPIP-DIPの間の腫脹など, 関節のみではないようなエピソードもあった.

・間欠期では症状は認めない.

・近医にて関節リウマチを疑われ, RF, ACPAなど評価されるもいずれも陰性.

 XPでも骨びらんや変形は認められなかった.


来院時, 右示指PIP関節の腫脹, 疼痛が認められた.

関節エコーでは滑膜肥厚や血流増加は認められず, 関節周囲の浮腫, 血流の軽度増加を認めた.

NSAIDによる治療にて速やかに改善.

尿酸値は正常. 関節石灰化も明らかではなく, 結晶性関節炎のような印象も乏しかった.

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みたいな症例.

回帰性リウマチについてまとめます.


回帰性リウマチ Palindromic Rheumatism

・急性の関節炎, 関節周囲炎を生じるが,
 数時間から数日で改善し, 再発を繰り返す.
 

 後遺症は通常残さない.

・発熱は通常認めず, Labでも炎症反応以外は特に問題無し.


 RAとは異なり, RFは通常陰性となる.

・有病率は一般人口の5%とも言われており, 比較的多い疾患.


 男女比は1:1, 平均発症年齢は45y, 範囲は20-80台まで様々.

・予後は様々. 1/3は改善, 1/3は再発を繰り返し, 半数はRAへ進展する.

(Southern Medical Journal 2011;104:147-9)


回帰性リウマチで侵されやすい関節;

・肩, 膝, 手首, 足首, 小関節, 手関節が多い.


 股関節, 肘はやや少ないが, どの関節に生じても良い.

・脊椎や胸鎖関節は少ない; <5%

・単関節炎が多く, 非対称的, 遊走する.

・関節炎は2-3hrで増悪し, 48hr以内に消退する.

 
発熱は認めない.


 一部で一過性の皮内, 皮下結節を生じる例がある.

(Southern Medical Journal 2011;104:147-9)


PRの鑑別となる, 再発-寛解を繰り返す関節炎

(Best Practice & Research Clinical Rheumatology Vol. 18, No. 5, pp. 647–661, 2004 )

・Whipple病には注意したいところ(個人的に

回帰性リウマチの診断Criteria
・以下の5項目を満たすことが必要.

 1) 再発性の単, 多関節炎を6ヶ月以上認めている
 
2) 医師により関節炎が確認されている
 
3) 合計3箇所以上の関節で炎症が起ったことがある
 
4) XPでErosionを認めない

 5) RA, SLE, 結晶性関節炎など他の疾患が除外されている.
(Clin Rheumatol (2010) 29:83–86)


RPとRAの関係

(Nat Rev Rheumatol. 2019 Nov;15(11):687-695.)

・Cohortによると, 10年程度のフォローにおいて,
およそ4割~6割がRAとなる.

・20年以上フォローしたCohortでは2/3がRAを発症.
 

 移行は多くは10年以内に認められる.

・RAとPR双方とも, リスク因子は類似しており,
 PRの多くがRA関連抗体(ACPA)やRFが陽性となることから, 
PRはRAの前疾患として考えられていた.

・しかしながら, 2018年に発表されたPR症例のUS所見を評価した報告では, PRは滑膜炎ではなく関節周囲の炎症が主でることが示された.


 RAでは滑膜炎を伴わない関節周囲炎は少なく,
 RAとPRが同一の病態とすると矛盾する.


・また, PRはRA以外にも血管炎や他のCTDへ移行するとする報告もあり,

 一概に前駆病変とするのは難しい.


未治療のPR症例において, 炎症期と間欠期における
関節エコー所見を評価した報告

(Ann Rheum Dis. 2019 Jan;78(1):43-50.)

・PR患者は79例. 炎症期に受診できたのは31例の所見を評価.


 このうち持続性の関節炎(RA)に移行したのは7例

・PR群では, 炎症期では1-3箇所の関節で症状あり.


 関節は手指が8割, 足が3割程度, 大関節も5割


エコー所見

・炎症期の所見として, 滑膜炎を認めるのは23%のみ.

 
61%は関節外の炎症所見が認められる.

 
関節外のみが39%, 滑膜炎+関節外炎症所見が23%

ACPA別, 新規発症RA症例との比較

・PR症例では, ACPAの有無にかかわらず, 関節外炎症が主なのは同様.

 新規発症RAでは滑膜炎の頻度が7割と高い
関節外炎症単独は4%と非常に少ない.


RAへの移行リスク
・Cohortでは, 小関節炎の存在, PR診断時にACPA陽性は, その後のRA移行リスク因子となる
(Southern Medical Journal 2011;104:147-9)(Scand J Rheumatol 2010;39:287–291)


回帰性リウマチの治療

(Semin Arthritis Rheum. 2021 Feb;51(1):266-277.)

・PRの治療はRCTはなく, 経験的に行われている.

・炎症期の治療はNSAIDやPSL 10mg/dが用いられることが多い

・増悪の予防としては

 コルヒチン,  HCQ, 金製剤, MTX, AZA, SSZなどが用いられている

 
RTXの報告もある.