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2021年2月28日日曜日

COVID-19感染のリスクとなる行動

(JAMA. 2021 Feb 22. doi: 10.1001/jama.2021.1995.)

COVID-19患者の20%, 80%の感染伝播に関連している

また, 感染の50%が無症候, または症状が出現する前の時期に感染している.

感染予防にはリスクのある行動を避けることが重要

・換気が不良な室内での長期間の滞在(相手と180cm以内の接近が15分以上)

・さらに不適当なマスク着用ではリスクが上昇する


米国において, SARS-CoV-2が陽性となった314例と陰性であったControl群において, 感染前の行動を比較し, どのような行動がリスクとなったかを評価した報告.

(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69(36):1258-1264.)

行動とリスク: (図はJAMAから引用. 見やすかったので)

・リスクとなるのはレストランでの食事.

 これはCOVID-19感染患者との接触が明らかであろうが, なかろうが感染のリスクとなる.

 また, バーやコーヒーショップもリスク因子.


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やはり飲食はリスクとして明らか.

緊急事態宣言が終わっても, ここを最低限注意しなければまた広がります.

2021年2月27日土曜日

本の感想:器質か心因か

 献本御礼

器質か心因か 尾久 守侑先生


この本は器質性疾患と心因性疾患の鑑別をテーマとした内容ではない。
むしろクリアカットに分類するのではなく, 双方の要素をどう考えて, 病態や症状を理解するかということを説明している.

心因反応は器質的疾患でも生じるため、両者の鑑別にこだわると片手落ちとなる. 
特に心因性疾患だ、と判断してしまうと、その背景の器質的疾患を見逃す可能性もある。

またその逆で、器質的疾患に合併した心因反応を蔑ろにすると、患者の治療もうまくいかないことが多い.

特に第3章の心因反応の方程式 の項は秀逸
心因反応の大きさを評価する方程式に
 = 患者のもともとの脆弱性 + 身体因の脳への侵襲 + 心因 の要素を考慮する、という内容であり、症例Baseで様々な教訓的な症例が簡単に解説されている。

思わず、あるある! とうなづいてしまう症例から、
へーーこんなものがあるのか! と勉強になるものまで。

一般内科外来や救急外来対応をしている医師ならば、必ず経験したことがあるエピソードも多い。

この点では、是非研修医にも読んでもらいたい。ただ、研修医にこの点の妙がわかるかどうか、、、ちょっと早いのかも。でも読んで欲しいなぁ。

また内科外来をする一般内科医も、専門医も一回は目を通して欲しいと思う。
世界が広がります。

自分が読んでいて、一番興奮したところは、
どの薬剤を使用しても、副作用を訴えてすぐに中断してしまう患者の一節
「著しいノセボ反応がどの薬剤に対しても起こってやめてしまう場合は、そもそも患者さんが身体疾患ではないと思っている、または向精神薬で治療するというモデルを無意識で受容できていないと考えるべきである」

これはハッと気付かされた。これだけでも読んで良かったと思えた部分である。

これ、確かに多いんです。もはや、「この人、絶対副作用くるわー」ってわかるくらいの嗅覚は鍛えられました。その嗅覚は上記のような患者さんの雰囲気を感じていたのだと、気付かされました。


結核性胸膜炎の胸水: LDH/ADA比

 結核性胸膜炎では胸水中のADAが上昇(≥40 U/L)することは有名.

一方で, 肺炎随伴性胸水や膿胸, そして非特異的胸膜炎やリウマチ性胸膜炎でもADAは上昇し, たまに鑑別に困ることがある.

その時に, 胸水中のLDH/ADAの比が鑑別につかえるかも, しれない.


(J Clin Microbiol. 2018 Jul 26;56(8):e00258-18.)

ニュージーランドの施設において, 1637例の胸水検体を評価.

・結核性胸膜炎は57

・各病態における胸水ADA, LDH, LDH/ADA


胸水ADATBでは高値となるものの感染症や悪性腫瘍でも高値となる例がある.


LDH/ADA
比では結核性胸膜炎では低値となる

胸水ADALDH/ADA比を組み合わせることで感度/特異度は改善する
・胸水ADAが上昇(≥15, または≥30 U/L)の患者においてLDH/ADAをチェック. <15では結核性の可能性が強まる.

南アフリカ, ケープタウンの施設において結核性胸膜炎が疑われた患者群を前向きに抽出.
(Respiration. 2021;100(1):59-63.)
・結核性胸膜炎と確定診断された160例と他の診断であった68例の胸水LDH/ADA比を評価. 比較した報告.
非結核例では悪性腫瘍. 非特異的胸膜炎, 肺炎随伴性など.
・ADAは結核性胸膜炎と肺炎随伴性で高値となりがち.
・LDH/ADA比は結核性, 非特異的胸膜炎で低値となる.

LDH/ADA
比のカットオフと感度, 特異度

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胸水ADAの上昇, 且つLDHがそこまで上昇していない, というのが結核性胸膜炎のポイント
同様にADAが上昇する感染関連の胸膜炎との鑑別はこの点で可能そうではある.

個人的には, 非特異的胸膜炎 → 後にIgG4胸膜炎であった症例において, 結核性胸膜炎と類似した胸水所見を示した経験がある.
実はこの疾患でもLDH/ADA比は低値となるので, 鑑別点にはなり難い.

また, RA関連胸水でも鑑別に迷ったことがある.
RA関連胸水でもADAは上昇するが, 膿胸に似ており, LDHも著明に上昇する.
したがって, これとの鑑別はできるかな, という印象はある.

こういった胸水マーカーのStudyでは, 膠原病関連は母集団に含まれていないことが多く,
免疫抑制が治療となる膠原病での胸水貯留鑑別の道はまだまだ遠い.

2021年2月25日木曜日

SARS-CoV-2のmRNAワクチンのリアルワールドデータ

 (BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine in a Nationwide Mass Vaccination Setting 10.1056/NEJMoa2101765 )

イスラエルにおいて, 12/20-2/1までにmRNAワクチン(ファイザー製)を接種した596618人と, 地域, 臨床的背景を合わせた非接種群を比較した観察Cohort.

・アウトカムはワクチン接種後14-20日以後(2回目接種後は7日後)からのSARS-CoV-2感染症, 重症, 死亡リスク.

母集団:


アウトカム

ワクチン接種後の感染率, 重症例, 死亡例の推移

・SARS-CoV-2感染, 症候性のCOVID-19, 入院, 重症, 死亡すべてワクチン接種群では減少

 2回接種後からの症例の上昇もほぼ認めていない.

ワクチンの有効率(1回目接種後 14-20日後, 21-27日後, 2回目接種後7日後からの発症例から計算)


2回接種後7日以後において,

 証明された感染症は92%低下: 1000人あたり8.6人減少

 症候性の感染症は94%低下: 1000人あたり4.6

 入院リスクは87%減少: 1000人あたり0.22

 重症例は92%減少: 1000人あたり0.32

・死亡は1回接種後, 21-27日以後で84%減少. 1000人あたり0.06

1回接種後2-3wk以後でも有効率は50%を超える.

 重症化リスクや死亡リスクも低下する

2021年2月24日水曜日

HAT療法の大規模RCT: VICTAS

 HAT療法は敗血症に対して, 大量ビタミンC, チアミン, ヒドロキシコルチゾンを併用する治療法

詳しくは これを参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2020/07/hat.html

その効果を評価した大規模Studyが発表.

(JAMA. 2021;325(8):742-751. doi:10.1001/jama.2020.24505 )

VICTAS: 敗血症により, 呼吸不全, 循環不全となり, ICU管理となった成人患者を対象としたDB-RCT.

・呼吸不全: P/F ≤300, SpO2/FiO2 ≤315気管挿管を行い侵襲的呼吸器管理, 非侵襲的呼吸器管理, High-flow nasal cannulaより流量40L/, またはFiO2 ≥0.4で管理されたことで定義

・循環不全: MAP≥65mmHgを維持するために補液1L以上行った状態で, 且つ1時間以上昇圧薬を使用

・上記患者群を, HAT療法群 vs Placebo群に割り付け, 予後を比較.

 HAT療法: Vit C 1.5g, チアミン 100mg, Hydrocortisone 50mg6h毎にICU退室, または最大96hまで継続.

両群ともOpen-labelHydrocortisoneは使用可能. その場合は最大投与量が1200mgまでとなるように調節された.

母集団

予定ではN=2000を目標としていたが, N=500時点での中間評価において, 資金提供の中断により継続終了.

提供中断の理由は資金提供者の優先事項の変更と記載

アウトカム

死亡リスク, ICU管理期間, RRT期間すべて有意差無し

・呼吸器管理期間昇圧薬使用期間も有意差なし

2021年2月19日金曜日

COVID-19感染症に対する回復者血清の報告2つ

 INFANT-COVID-19: 発症早期(<72h)軽症COVID-19患者を対象とし, 回復者血清を投与したDB-RCT.

(N Engl J Med 2021;384:610-8.)

患者は75歳以上の高齢者, または65-74歳で1つ以上の併発症を有する群(HT, DM, 肥満, CKD, 心血管疾患, COPD)

・重症呼吸器症状がある患者は除外

・回復者血清はSARS-CoV-2に対するIgGが高い血清を選択.

 >1:1000 SARS-CoV2 spike proteinを含む血清250mL vs Placebo群に割り付け, 重症化のリスクを比較.

母集団

・SpO2は96%

アウトカム

重症化(Severe respiratory disease)は有意に血清投与群で低い結果.

 Severe respiratory disease: 呼吸数 ≥30/分, SpO2 <93%で定義

他は有意差を認めない

・Life-threatening respiratory diseaseはFiO2 1.0, 人工呼吸器使用, ICU管理で定義

・Critical systemic illnessはP/F ≤200, Shock, MOFで定義


PlasmAr: 重症COVID-19感染症にて入院となった成人患者を対象としたDB-RCT.

(N Engl J Med 2021;384:619-29.)

・COVID-19PCRで陽性例または画像所見が典型的な例で定義

・重症の定義は以下: SpO2 <93%, P/F <300, SOFAまたはmSOFAが基礎値から2以上上昇のいずれかを満たす患者で定義.

授乳婦や妊婦, 妊娠可能女性で, 30日間の避妊薬の使用を拒否した患者, 血液製剤のアレルギー歴がある患者, SARS-CoV-2以外の病原体による肺炎, 多臓器不全などは除外.

上記を満たす患者群を回復者血清投与群 vs Placeboに割り付け, 30日予後を比較.

 抗ウイルス薬やGCの使用は許可された

・回復者血清はSARS-CoV-2抗体価が≥1:400のものが採用され, 1-5人分の血清を使用し, 抗体価が>1:800となる様に調節.

母集団. N=333

・65歳以下が半数以上を占める

・SpO2<93%を満たす症例がほぼ全例SOFAスコア2点以上の上昇は15%程度

・発症~導入までの中央値は8日間

・大半が鼻カニューラからの酸素投与

 Nasal high-flow5%のみ呼吸器管理例は無し

アウトカム


・死亡リスク, 呼吸器管理リスクに有意差なし

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この2つの報告からは,

早期の軽症例ではその後の呼吸状態増悪リスクを軽減させる可能性があるが,

発症1週間程度経過した重症例では回復者血清による予後改善効果は得られない結果

ANCA関連血管炎のステロイドフリー治療: Avacopan

Avacopanは経口投与可能なC5α受容体拮抗薬.

AAVではC5aC5a受容体が血管壁の炎症に強く関連しておりC5a受容体阻害薬はAAVの治療に有用な可能性が示唆されてきた.

2017年にCLEAR trialでAAVに対するAvacopan vs PSLで比較した小規模RCTが発表されたが, Avacopan単独でPSLと同等の寛解維持効果が得られた報告であった.(J Am Soc Nephrol 28: 2756–2767, 2017)

今回N=330の規模のRCTが発表: ADVOCATE trial

ADVOCATE: 初発例, 再発例のGPA, MPA患者で, CYC(その後AZA), RTXで治療が適応となる患者群を対象.

(N Engl J Med 2021;384:599-609.)

・PR3-ANCA, MPO-ANCAが陽性となり, eGFR≥15mL/min/1.73m2, BVAS score ver.3において, 大項目1つ以上, 非大項目3つ以上, または腎の項目が2つ以上を満たす(血尿, 蛋白尿).

・除外項目は4wk以内に合計3g以上のIVグルココルチコイドを使用, PSL 10mg/d以上を6wk以上継続している群

・対称患者ではStudy前に使用していた免疫抑制療法は全て中止とした

 スクリーリニング期間にPSL ≤20mg/dまで減量し, 4wk以内に終了

・上記を満たす患者群をCYC, RTXを使用しつつ,

 Avacopan 30mg 12回内服群

 PSL経口投与, Tapering群に割り付け, 再燃リスクを比較

  PSL60mg/dで開始され, 20wkOffまで減量する

・両群ともレスキューとしてステロイドパルス, 経口PSLを使用可能

CY, RTXレジメは

・IVCY 15mg/kg(最大1.2g)Day 1, wk 2, 4, 7, 10, 13

 POCY 2mg/kg/d(最大200mg)14wk

 RTX 375mg/m2/wk4wk

・CY群では15wkから経口AZA 2mg/kg/dに切り替え継続

RTXは追加投与なし

母集団

・PR3-ANCAMPOは半々程度

GPAMPAも半々程度

・臓器障害は腎臓が8肺が4

RTX治療が2/3

アウトカム


・26wkにおける寛解維持率は両者で有意差なし

52wkではAvacopanで有意に良好: AD 12.5%[2.6-22.3]

・GTI(GC toxicity Index)Avacopan群でより軽度となる

副作用頻度

・副作用にて薬剤中断したのはそれぞれ15.7%, 17.7%

・感染症はステロイドで多い印象

・肝障害は5.4%, 3.7%

2021年2月16日火曜日

関節リウマチでの病状の評価でPGAをなくしたら?

 関節リウマチの病勢の評価ではDAS28や、CDAI、SDAIなど用いることが多い.

これらは, 圧痛関節, 腫脹関節数(いずれも28箇所で評価), 炎症マーカー(ESRやCRP), そして患者さんの自己評価(PGA: patient global assessment. 10cmのメモリで評価. 10が最悪. DAS28では100mmで評価する)が含まれる(SDAIはCRP除く). 

これは自分の主観であるが, 実際RA診療をしていると, このPGAがなかなか下がってくれないことがよくある. 客観的に関節所見や炎症が改善していても, PGAが下がらない... 

実はRA以外の不調(変形性関節症や他疾患)があり, 純粋にRAのみの症状を評価するのが難しいことも原因としてあるのではないか, と思うのだが, このPGAはどの様に解釈したらよいのだろうか. というのはいつも悩む.

そんななか, このような報告がでた.

(Ann Rheum Dis. 2020 Oct 6;annrheumdis-2020-217171. doi: 10.1136/annrheumdis-2020-217171.)

Bioの効果を評価した, 2年以上フォローされ, XPによるアウトカムも評価されている11 RCTsMeta-analysisにおいて, 患者のデータを評価.

・寛解の定義はACR/EULAR Boolean基準を用い;

 ・圧痛関節28(TJC28)

 ・腫脹関節28(SJC28)

 CRP(1mg/dL)

 PGA(patient global assessment: 0-10)

 4項目で, 全てが≤1であることを

 (i)4V-remissionとし,

 (ii)上記+PGA>1で定義した4V-near-remission,

 (iii)PGAに関わらず, 他の3項目で≤1を達成した3V-remission,

 (iv)non-remission(TJC, SJC, CRPのどれかが>1)に分類

・分類は6-12ヶ月の時点で行われた

・アウトカムは各群における, 2年間のフォローでのGRO(good radiographic outcome), GFO(good functional outcome)達成の頻度を比較した(ΔmTSS≤0.5, ΔHAQ-DI≤0などで定義)

アウトカム

・導入StudyTNF-α阻害薬を評価したものが9と最も多い.

 N= 8114例で, 2322例は除外(29%). 主な除外理由は最終評価における画像所見が不明であったことが最多(71%)

寛解基準を満たす割合は,

 4V-R23.0%[18.0-28.0], 4V-near-R18.9%[15.4-22.1]

 3V-Rは上記の合計.

 非寛解例は58.1%[52.0-64.1]


4V-R
4V-near-RGRO

・4V-R4V-near-RΔmTSS≤0.5は同等.
一方で非寛解例は4V-near-Rと比較してΔmTSS増悪リスクが上昇
Cutoff≤0とすると有意差はない

GFOの比較

・ΔHAQ-DI4V-R群の方が良好となる
・患者の主観が入る評価のため, PGAの関連が強いと予測される

4V-R3V-R達成による各パラメータへの関連

・ΔmTSSについては双方とも同等といえるが
ΔHAQ-DIPGAを含んだ方がより関連性が高い

4Vから3Vに変更することで18.9%の患者でさらなる治療の強化が不要となる.
その分 対症療法に重きを置くことでよりGFOも改善が見込める可能性もある

2021年2月13日土曜日

COVID-19に対するTCZの大規模Study: RECOVERY

ここも参照 http://hospitalist-gim.blogspot.com/2021/01/covid-19tcz.html

 (DOI: 10.1101/2021.02.11.21249258)

RECOVERY: UKにおける数年人規模のRCT.

・COVID-19による入院症例(検査で証明, または臨床的に疑いが強い患者群), SpO2<92%, CRP≥7.5mg/dLを満たす群を対象.

・基礎疾患が主治医により, Studyに参加させることで不利益となるような病態の場合は除外. また小児例も除外

・通常治療に加えて

 TCZ 400mg~800mg vs Placebo群に割り付け, 予後を比較.

 12-24h後も改善ない場合はTCZの追加投与を行う.

・TCZWt>90kg800mg, 65-90kg600mg, 40-65kg400mg, ≤40kg8mg/kgを使用.

アウトカムは28日死亡率

母集団

N=4116

・呼吸器サポート症例が半数強

・検査上SARS-Cov2が証明されたのが94%であった.

ステロイドは8割で使用

アウトカム

・28日死亡率は有意にTCZで改善; ARR 4%, NNT 25

気管挿管施行例も少ない(初期に呼吸器使用されていない例で).

現在までの報告のまとめ

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・酸素投与が必要な症例において, TCZは増悪の予防効果, 生存率の改善が見込めそうである

 炎症が亢進(CRPが上昇)している患者では特によいのかもしれない.