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2020年9月29日火曜日

血管炎と冠動脈疾患

 全身性血管炎では冠動脈の炎症を生じ, ACSのリスクとなる.

・有名なのは川崎病や, EGPA(心筋炎)

・他にAAV全般, PAN, GCA, TAなどでも生じる

・報告では, PAN, 川崎病での頻度が高い. 他は高安病, BDで報告がある. 

 他の疾患では症例報告レベル.
(Rheumatol Int. 2017 Jan;37(1):151-167.)


2,465,697件のPCI施行例のうち, 2350(<1%)で自己免疫性血管炎を認めた

(JACC 2019 Jul 9 ;74(1):157-8)

・疾患別では, GCA1138例と最多次いでGPA 566, HV(過敏性血管炎) 171と続く.

血管炎(+)群ではより高齢, 女性例で多く, 30日以内の再入院リスクや死亡リスクが高い. 末梢血管障害や心筋症.


血管炎で使用する薬剤とそれによる心血管系イベントリスクへの影響.



・緑線はBenefitが期待できる

 赤線はRisk上昇の可能性がある

ステロイドは血管炎自体には良いものの心血管リスクを上昇させる作用もあるため長期使用は避けたい

Tocilizumabは脂質代謝異常に悪影響を及ぼす可能性がある.

(Rheumatol Int. 2017 Jan;37(1):151-167.)

2020年9月17日木曜日

ループス腎炎に対するベリムマブ: BLISS-LN

 BelimumabはB-lymphocyte stimulator(BLyS)に対するモノクローナル抗体.

・SLEではB cell過活動, 自己抗体, BLySの上昇が認められBLySに対するBelimumabによる治療効果が期待されている.

・これまでSLE全体に対してのBelimumabの効果を評価したRCTが複数発表されており, SELENA-SLEDAIの低下効果や急性増悪リスクの低下, ステロイド投与量の減少効果が示されてきた.

・ただし, 重度のLupus腎炎やCNSループス症例は母集団から除外されており, 重症例での使用については不明確の状態(CNS, 腎臓, 肺, 心臓など).

(Lancet 2011; 377: 721–31)(ARTHRITIS & RHEUMATISM Vol. 63, No. 12, December 2011, pp 3918–3930)Ann Rheum Dis 2018;77:355–363.)


2017年のReview文献における, Belimumabの利点, 欠点のまとめ


(Ther Adv Musculoskelet Dis. 2017 Mar;9(3):75-85.)


今回, Lupus腎炎症例におけるBelimumabのPhase 3 trialが発表: BLISS-LN

(N Engl J Med 2020;383:1117-28.)

活動性のLupus腎炎で通常の治療(MMF, CY+AZA)に加えてBelimumab 10mg/kg投与群 vs Placebo群に割り付け, 104wk継続. *Renal response, Complete renal responseを評価した報告

*Renal responseは尿蛋白/Cr≤0.7, eGFRの増悪が20%以下または≥60mL/min/1.73m2, rescue治療使用なしで定義

*Complete Renal responseは尿蛋白/Cr≤0.5, eGFRの増悪が10%以下または≥90mL/min/1.73m2, rescue治療使用なしで定義

・患者は18歳以上, ANA/dsDNA抗体陽性で, 1982年のACR分類基準を満たす群. さらにスクリーニングにおいて尿蛋白/Cr≥1, 腎生検で6ヶ月以内にLupus腎炎と診断された患者(III, IV, V)を対象.

寛解導入療法はランダム化の60日以内に施行されている

・除外基準: 1年以内の維持透析, eGFR<30mL/min/1.73m2, 以前にMMF, CY双方による寛解導入を失敗している, 3ヶ月以内にCYによる寛解導入療法を施行されている, 1年以内にB細胞標的療法(Belimumab含む)を施行されている群

Belimumab10mg/kg 経静脈投与を, Day 1, 15, 29, 以後28日毎に100wk継続する.

寛解導入療法はDay 1以前60日以内に施行されており, CY 500mg q2wk6回もしくはMMF 目標3g/dで行う.

寛解維持療法はCY-AZAでは, CYの最終投与後2wkからAZA 2mg/kg/dを開始し, MMFでは1-3g/d, 双方ともStudy終了まで継続

・治療医の判断で寛解導入時にmPSLパルス, その後PSL 0.5-1.0mg/kg/dは投与可能

ACEまたはARB, HCQ投与は推奨される.


母集団 アジア人が半数を占める


アウトカム

104wkにおけるRenal response43% vs 32%. OR 1.6[1.0-2.3], NNT 9と有意にBelimumabで良好.

・52wkにおいても, 同様にNNT 9Belimumabで良好となる.

・Complete renal response30% vs 20%. OR 1.7[1.1-2.7], NNT 10


・8wkから差が認められ始めている.

・死亡リスクや, ESKDリスクは同等だが, 蛋白尿の増悪, 腎機能低下リスクは有意に低下する.

副作用リスク



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ループス腎炎に対するBelimumabは有意にRenal response, CRRを改善させる.

そもそも20-30%でしかRenal response, CRRを達成できない状況で, +10%は大きい.

腎炎の有効な治療法の一つとなる

2020年9月16日水曜日

逆ゴットロン徴候: Inverse Gottron's sign/papule

 疼痛で体動ができない, という主訴で外来を受診した患者さん.

前額部の丘疹, 前頚部〜シャツの襟元までの丘疹

爪周囲紅斑, そして肘伸側の丘疹があり, これは皮膚筋炎だなぁ、という症例.

掌を見ると, 手掌指節関節屈側に丘疹を認めた. これは逆ゴットロン徴候! ということで, 抗MDA5抗体陽性DMを疑った.


後に評価したCTでは軽度のGGO, Consolidationを認め, ILD合併と判断, 早々に治療を開始した.


そういえばこの逆ゴットロン徴候って文献的にどうなんだろう?と思い調べてみた次第.


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逆ゴットロン徴候: Inverse Gottron's sign/papule


手掌側の指節関節, 手掌の襞に生じるGottron徴候様の皮疹.

 丘疹や落屑を伴う角化病変となる.

頻度は低いものの, 皮膚筋炎に対する特異性が高い所見と考えられ, 特に抗MDA5抗体陽性例での報告例が散見される (J Clin Rheumatol. 2016 Aug;22(5):274-5.)


MDA-5抗体陽性DMにおける粘膜皮膚所見の頻度のまとめ

(J Am Acad Dermatol 2018;78:776-85.)


・このまとめでは, 抗MDA-5抗体陽性DMにおけるPalmar papule(= Inverse Gottron's)の頻度は20-60%で認められる. 他に皮膚潰瘍の頻度も高い.


抗体と皮膚所見の関係

(Clin Rev Allergy Immunol. 2016 Dec;51(3):293-302.)


・毛髪や口腔内病変, 有痛性のInverse Gottron, 皮膚潰瘍は抗MDA-5抗体で目立つ.

無痛性/非紅斑性のInverse Gottronは抗TIF1抗体で認められる


77例のDM症例の皮膚粘膜所見を解析(このうち10例で抗MDA5抗体陽性)

(J Am Acad Dermatol. 2011 July ; 65(1): 25–34.)


・手の腫脹や, 関節痛/炎, 皮膚潰瘍, 手掌の丘疹, 機械工の手はMDA5抗体陽性例で多い

・特に手掌の丘疹所見は非抗MDA5抗体陽性例では1例のみと特異的な可能性がある

・手掌の丘疹は圧痛を伴う例が多く, 組織的にはInterface dermatitisは少なく, 皮膚のムチンの増加と血管壁へのリンパ球浸潤が認められる. 一部で血栓閉塞もあり.


所見の例

手掌の丘疹(Inverse Gottron's)


他, 抗MDA-5抗体陽性例に関連する皮膚所見


(J Am Acad Dermatol 2018;78:776-85.)

Iphoneに接続して使うエコー、Butterfly IQを島国日本から導入してみる日記 その2

 さて、これでアプリを手に入れることができた。

そして、本体を購入してみる! ということでHPにアクセス。

今回お世話になる友人のアドレスを入力し、いざ支払い! というところでまた一つ困難が待ち構えていました。


米国のカードじゃないとだめーー


正確にはBilling adress: 請求先住所が米国縛りなんです.

これはカード会社に登録してある住所と一致しないとセキュリティ上ダメでして,

日本のクレジットカードが使用できない, ということになります. 参った.


どうにかならないか, メールしてみました。返事はまた追って記載します。

>> 返事としては、やはり販売国以外でのカードは受け付けないとの返答でした. また, 米国の銀行からのACHを介した送金での支払いは可能とのことでした.


自分はどうしたか?

 自分はひとまず電子見積もりを依頼しました。「Electric quote」という項目を選択し, ひとまず進めると, その後メールにて見積もりが届きます。

 電子見積もり書には、「クレジットカードか, ACHかで支払ってね」とあります. 「誰か他の人が支払うなら、このメールをその人に転送してね」ともあります.

 そして試してみたところ, やはりクレジットカードは無理. Zipコード入力箇所があり、海外のカードでは難しそうです.

 そこでACHです。これはアメリカにおける送金方法の1つです

参考 https://transferwise.com/jp/blog/what-is-ach

参考 https://transferwise.com/jp/blog/how-to-use-transferwise

 このTranferWiseを介して, ACH送金が可能かどうかは未確認です. 少なくとも米国の銀行からならば, オンラインでACH送金が可能です. 

 そこで,  日本国内から米国の銀行口座を開設できる, Union bankがあります.  Union bankは三菱UFJ銀行の子会社で, 三菱UFJ銀行の口座があれば, ネットで開設可能です.

参考 https://www.bk.mufg.jp/tsukau/kaigai/kouza/cali/index.html

 これを利用すると, 送金が可能となりますので, 支払いが可能と思われます.

 思われる, と書いたのは, 自分はこれは利用しておらず,

 自分の場合は、幸い海外に銀行口座(Chase bank)がありました。これは学生時代に短期留学した際に作ったアカウントで、今も海外旅行時に使用しています。ここから、ACH振り込みができました。

 そして購入。アカウントの金が尽きるまで、ライセンスも振り込めるとは思うのですが、まあまだ数年持つでしょう。


米国の友人に建て替えてもらい、後で振り込むという形もあるかと思います。

この場合, ライセンス更新時にもその方にお手数かけてしまうのですが, ライセンス購入をiTuneで行うことで解決可能です.

>> これに関しては2020年1月の時点でButterfly IQ+ と同時に永続ライセンスが購入可能です.

 値段は本体1999ドル+1000ドル

 これならば一度お金を支払えば更新の必要はなく, 人に頼みやすいかもしれませんね.

米国IDでは日本のクレジットカードは登録できませんが, ネットでドル建てのiTuneギフトカードを購入し, 登録することが可能です(Appleギフトカードじゃないですので注意!).

このiTuneギフトカードはネットでおよそ10%増しで販売しているサイトがあり, 利用するとよいかも(420ドルがおよそ450ドル程度で購入可能. 日本円で5万円程度). いずれにしても更新料は高いっすね.  

ある程度自分のスタイルが決まれば、割り切ってBasicのみで運用というのもアリかもしれません。


Iphoneに接続して使うエコー、Butterfly IQを島国日本から導入してみる日記

 一部で超話題のIphoneやAndroidに接続して使用できるエコー! Butterfly IQ

https://www.butterflynetwork.com/iq


これ、ほんとに魅力的で、米国で医者をしている知り合いも個人で購入して楽しんでいる活用しているようです.


この度、コレを日本でセコセコと医者している自分が導入しようと四苦八苦する様を書いてみます.

先ずは、このデバイスの利点と問題点から簡潔にまとめてみます。


利点

・安い! 米国内で購入すると1999ドル! ちなみに日本でエコー買うとポータブルのやつで最低でも100万くらいします。それよりも安いのはあるが、いまいちです。

 ちなみに、一部の国でも購入可能ですが、その場合+1000ドルの2999ドルと割高です。

・Iphone, Androidに接続して使用できる!

・性能が良さそう あくまでも印象です.


この安さだけでも導入に値します. マイエコーを持つなんて、ほんの数年前には考えられない、一部では100万で個人所有の強者もいましたが、ありえない話でした。

これでしたら、在宅診療や開業医でも十分に活用できますし、日頃から診療にエコーを取り入れないと思っている一方で、なかなか病院に買ってもらえない自分のような内科医にも良い話です。

スムーズに導入できるならば、まず買います. 僕なら.


欠点 問題点

・最大の問題点が日本で販売されていない. 輸出してくれない.

 これに関連して、このデバイスを使用するためのアプリが国内のApple ID, Google ID(Android)でダウンロードできない! ← これが一番の問題点!

・デバイスを購入できて, Appをどうにかして使用する場合, Appを使用するための年間Licence料が420ドル/yかかる! Basic Planならタダですが、その場合B modeとColor dopplerのみです。


さて, この問題点に対して、どのようにアプローチするか, 解決するかを自分なりに色々やってみました(現在進行中)

実際買おうと思っている方は、IphoneやAndroidでまずはAppがDLできるかどうか試してからの方が安心です!


問題点その1:日本で販売されていない、輸出してくれない

 これは、海外にいる知人、医師にお願いして送ってもらうことで解決できます.

 購入はHPから購入し, それから配送. 

 1999ドルなので, 日本円とすると20万円越えですが, 関税はその6割に対してかかるため、課税価格<20万円、つまり関税は免除でいけます。ただし、消費税の10%がかかるため、2万円以上税金がかかることを覚悟しましょう.

 米国に旅行に行く時に見計らって購入でもよいですが、帰国時の関税で引っかかれば同様の結果です(配送料は浮きますが数千円程度)


問題点その2:アプリが国内のApple IDやGoogle IDではDLできない!

 これが非常に参りました. デバイスがあっても、運用するソフトがないとただの機械です.

 このために、米国のApple IDを作成せねばなりません。Google Playの海外IDについては以下のHPを参照ください。これもまためんどいです。

https://ischool.co.jp/2019-07-22-how-to-install-the-app-from-google-play-abroad/#toc1


 米国のApple IDを取得するのもエライめんどいです. 基本的に米国の住所、クレジットカード、電話番号があればいけますが, そんなん普通ないですよね?

 というわけで, このHPの方法を使用しました。https://maenomeri.tokyo/iphone_app_overseas/

・まず, Googleで新しいメアドを作成.

・AppleのHPでそのメアドを使用して、新規IDを国を米国にして作成

 この場合、電話番号登録がありますが、これは日本の番号でOKでした

 またお支払い情報登録云々は無視です。メアドと電話番号を登録し、番号認証が終われば、ひとまずはID作成完了です。それで閉じる.

・Iphoneの[設定] → 一番上の顔があるところ, Apple ID → [iTunesとApp Store]をタップ

・Apple ID: ~~~~ をタップし、サインアウトする

・上記で作成した米国のApple IDでサインインする

・Appストアを開いて, しばらく待つと米国のAppストアになる

 もし変わらなければ右上の人のマークをタップすると変わるかも

・検索で「Butterfly IQ」を探してインストール!

・この際, 「まだこのIDは承認されてないよ」とかでるので、そこからConfirmationする。

・この時、支払い情報のところに、「None」とでるので、そこをタップすると、カード無しで登録できる。

・住所は適当。知り合いか、もしくは現地のAppleストアの住所か

・電話番号の登録が必要であるが、これが米国の番号しかダメ.

 これは、アプリのTextPlus、またはNextPlusで解決.

 参考: https://ameblo.jp/wasted169/entry-12606406009.html

 上記で登録した住所と同じ地域で番号を作成するとよいかもしれない.

 このアプリでは米国の電話番号が無料で作成できる. SMSも受信できるため, 最初にApple IDを作成するところで使用しても良かったかもしれない.

 一部地域では対応していない(例 ハワイ)

・これでOK, アプリがDLできる! ← できた!


問題点その3:Licence契約の延長や変更がApp内課金だと困る!(未確認)

 この米国のIDによりAppはDLできた. これでデバイスがあれば使用はできるはず.

 しかしながら, このIDには支払い情報が登録されておらず, また登録したくてもできない!(米国のクレジットカード, 請求先住所がないので)

 デバイスを購入する際に1年間のライセンスも同時購入できるため, 最初の1年間は問題ないが,  その後は保証できないのが怖いところ.

 そこで調べると, どうやらHPからライセンスの変更や再購入ができるとのこと。

https://support.butterflynetwork.com/hc/en-us/articles/360039619971-Changing-Billing-and-Payment-Information?fbclid=IwAR2hGVadPUM9zB97g2iX7BZ_8uJhIf4-yf2K9KSpRwqEMPaRdAs3m5t8vhk

 ということは米国のApple IDで支払い情報がなくても継続はできそう!


問題点その4: Licence契約、高くない?

 高いです。年間4.5万円って、なかなかきつい。無料のBasicではB-modeとColor-dopplerのみとやや物足りない.

 グループ契約で年間1200ドルで5ライセンスOK というプランがあります.

 5人集まれば、一人当たり240ドルです!

 だれか! だれか一緒にやりませんか? 3人集まればOKですので。

 興味ある人はFBか、Twitterからメッセください!(先ずはPro契約でやるので、グループでやるとしても, 次年度からかな。)


と, いい感じで進みましたが, その後 また悪夢がまっているのでした...

その2に続く.

2020年9月15日火曜日

COVID-19の感染性は発症前〜発症後5日程度

 (JAMA Intern Med. 2020;180(9):1156-1163. doi:10.1001/jamainternmed.2020.2020)

台湾における前向きのContact Tracing Assessment

・検査で証明されたCOVID-19患者100例においてその患者との接触者におけるCOVID-19発症をフォロー.

接触期間は, 症状出現時を0日とし, -4日~14日間(隔離期間)で評価

 無症状患者では, 診断時を0日とした.

接触の定義は適切なPPEの使用無しで15分以上向かい合った状態で定義

 医療従事者の場合は, 適切なPPE無しで, 2m以内の接触で定義

・接触者は接触から14日間の自宅待機がなされその間の症状評価, COVID-19検査を評価した.(医療従事者や同室内生活家族では症状なくてもPCRを施行, それ以外は症状出現時に検査)

対象接触者は2761



接触後, COVID-19発症したのは22.

・その全例が発症前~発症後5日以内の接触であった.

・5日以後の接触例では発症者無し

Index caseが無症候であった場合, 接触者からの発症は無し


特にリスクが高いのが家族(これは無症状でもPCRをしたのもあると思う)


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接触者を前向きにフォローしたのが価値があると思う.

感染性は発症前(~4日)から、発症後5日程度が強い可能性.

無症候患者からの感染も当然あると思うが, リスクは低いかもしれない.

COVID-19における重症化リスクスコア(2020/9/15 UpDate)

(JAMA Intern Med. 2020;180(8):1081-1089. doi:10.1001/jamainternmed.2020.2033)

中国のNationwide cohortにおいて入院となったCOVID-19患者の重症化リスク因子を抽出し, スコアを作成.
・致命的なCOVID-19ICU管理, 人工呼吸器管理, 死亡で定義
Development cohort 1590, Validation cohort 710
Development cohortでは, 1.5%が重症肺炎(ATS市中肺炎ガイドライン)であり, 8.2%が致命的なCOVID-19となり, 死亡率は3.2%

Development cohortにおける致命的COVID-19リスク因子

・画像所見異常, 年齢, 血痰, 呼吸苦, 意識障害併存症の数, 悪性腫瘍の既往好中球/リンパ球比, LDH, 直接Bilがリスク因子


これらよりリスクスコアを作成

http://118.126.104.170 で計算可能
ValidationによるAUC0.88[0.85-0.91]

(2020/9/15 UpDate)
CALL score: 中国のFuyang Second People’s Hp(安徽省), Fifth Medical Center of Chinese PLA General Hp(北京)2020120日~222日に入院したCOVID-19患者を後ろ向きにReview
(Clinical Infectious Diseases® 2020;71(6):1393–9)
・増悪に関連する因子を評価し, Nomogramを作成した.
対象患者は208. 他病原体の重複感染症は除外された.
 このうち安定していた群は168(80.8%)
 入院後増悪した症例が40(19.2%)
増悪の定義は, 入院後以下の1項目以上を新規に認めるか, 胸部CT検査にて肺炎所見の増悪を認めることで定義:
 呼吸回数≥30/, 安静時SpO2≤93%, P/F ≤300, 人工呼吸器管理(この項目は重症肺炎の定義でもある)

重症化のリスク因子
・合併症(HT, DM, 心血管疾患, 慢性肺疾患, HIV)
 高齢者, リンパ球≤1000/µL, LDH高値が挙げられる

重症化予測のNomogram

スコアによる評価: 
CALL score
・≥6ptで感度95%, 特異度78%
・≥9ptで感度45%, 特異度97%


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入院となるCOVID-19患者ではこれら因子に注目し, 入院管理を行うことは重要と考えられる

2020年9月14日月曜日

菊池病のClinical score

菊池病についてはこちらも参照 

Validationされてないので, 適応には注意! ですが, 参考になると思ったので紹介

Intern Med J2020 Sep 8. doi: 10.1111/imj.15042. Online ahead of print. A clinical scoring approach for detection of histiocytic necrotizing lymphadenitis in adults


その前に, ちょうど最近 発熱外来からこのような相談がありました.

20台の男性で, 1週間前から40度の発熱が持続. 特に局所症状はなく倦怠感程度.

右頚部リンパ節は腫大. 触知する.

血液検査ではWBC 3100(Neu 50.6%, Ly37.5%), CRP 0.56mg/dL, LDH 470 IU/L.

 他の血球現象や肝胆道系酵素上昇など異常所見は認めず.


パッと聞いた感じでは菊池病っぽいなぁ、と思いました.

そんな状況で上記論文を見つけたのでチェック.


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18歳以上, リンパ節腫大があり, リンパ節生検を施行, 組織より診断が為された患者1194例を後ろ向きに解析

・このうち, 32例でHNL(histiocytic necrotizing lymphoadenitis, 菊池病)を診断.

・HNLを示唆する所見, 検査を評価, clinical scoreを作成した.

HNL, HNL群の比較では


 ・HNL群ではより若年: 29±11 vs 57±16

 ・発熱を認める患者, 頚部リンパ節腫大を認める患者WBCが低値, 好中球が低めとなる.

 ・LDHは上昇する例が多いが, 値は300~500程度.


HNLに関連する因子よりスコアを作成

・発熱 3

・頚部リンパ節腫大 2

WBC低下(<4000/µL) 2

・好中球<50% 1

LDH>300 U/L 2


スコアカットオフ 4点以上で,  感度90%, 特異度87%NHLを示唆



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冒頭の症例で計算すると, 9点. 好中球以外を満たす. 好中球も50%と惜しいライン

年齢も20代で菊池病らしいと言える.

ただやはり悪性リンパ腫は心配であるが, 経過からもまずは対象療法でよさそうではある.

このClinical scoreはValidationが未なので、適応には注意したいが, 注目するポイントとしては有用と思う

2020年9月13日日曜日

COVID-19に対するメチルプレドニゾロンのRCT

 こちらも参照: デキサメサゾンはCOVID-19における死亡率を低下させる

Metcovid: ≥18歳の臨床的, 画像的にCOVID-19が疑われた患者群を対象としたDB-RCT(phase 2b) @ブラジル (Clin Infect Dis. 2020 Aug 12;ciaa1177. doi: 10.1093/cid/ciaa1177. )

・患者は臨床的/画像的にCOVID-19が疑われた時点で導入された(治療の遅れを回避するために確定検査結果が出る前に導入).

 さらにSpO2≤94%(RA)またはO2投与, 侵襲性人工呼吸器管理症例を対象とした.

・mPSLアレルギーやHIV/AIDS患者, 慢性的なステロイドユーザー, 免疫抑制剤使用例, 妊婦/授乳婦, 非代償性肝硬変, 慢性腎不全患者は除外.

患者はmPSL 0.5mg/kg12, 5日間継続群 vs Placebo群に割り付け, 28日間の死亡リスクを比較.

・ARDSを満たす患者ではCTRX, AZT or CAMを併用

母集団


・前述のデキサメサゾンを評価したRECOVERYと対比させると,

 metCOVIDではより若年者(66-67歳 vs 55歳), 挿管患者が多い(15-16% vs 34%), 発症〜Study導入までが長い(8-9日 vs 13日)といった違いがある.

・SARS-CoV-2 PCR陽性はおよそ8割(RECOVERYでは9割程度と同等か)


アウトカム


28日死亡リスクは有意差なし

 数日後のPCR陽性率や人工呼吸器使用リスクなども同等


Sub解析では, 60歳以上の症例において,  mPSL投与による死亡リスク低下効果が期待できる


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RECOVERYでは酸素投与が必要となるCOVID-19患者ではデキサメサゾン 6mg/dの投与は酸素投与, 呼吸器管理必要例において, 人工呼吸器使用リスクや死亡リスクを低下させる結果であったが, 今回のmetCOVIDではmPSLによる死亡リスクの改善効果は証明できなかった.

60歳以上の症例では死亡リスク改善効果が期待できる.

metCOVIDとRECOVERYを比べると, RECOVERYはやや高齢者が多いが, 全体的な重症度はmetCOVIDよりも低く, 死亡率も全体では2-3割程度. 呼吸器管理群では4割, 酸素投与群では2-3割(Control群での死亡率)

metCOVIDでは全体の死亡率が38%と高い. また発症〜導入までおおよそ2wkという点も長い(RECOVERYでは1wk強程度). この辺はお国柄, 医療アクセスの問題もあるかもしれない.

ステロイドに可能性は期待したいが, どの症例で特に効果が期待できるか, もう少し情報を待ちたい