(PLoS ONE 15(4): e0231966.)
日本における2つの流行期(2012-13, 2018-19)において, 成人例の風疹と非風疹例を比較した報告.
・流行期間中に発熱, 皮疹やリンパ節腫大でNCGMを受診し, 風疹IgMを評価された症例を対象
・風疹はIgM(ELISA)の強陽性, またはPCR陽性で定義
弱陽性例は除外(後に強陽性となった症例は診断)
・上記で診断された風疹例は82例.
同時期に診療した非風疹例 139例と比較した.
両群の症状, 所見の比較
・症状/所見で重要なのは顔面の皮疹と結膜充血
・成人の風疹例の94%が結膜炎所見を認める
風疹疑い患者において, 結膜炎があればOR 85.6で風疹を示唆する
高リスク群(1962-1979年生)における評価
・この群でも9割は結膜炎を認めており, 診断に有用な所見と言える
また, ワクチン(-)群と1回接種歴がある群の比較では, 症状や所見に差は認められない.
-----------------------
結膜炎所見は風疹診療にとっては重要な所見となり得る.
勉強になりました.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2020年4月27日月曜日
2020年4月25日土曜日
本の感想: ブラックジャックの解釈学
献本御礼
まず感想の前に、発見した誤植をば
p126-129の図番号. 図5-6が2つある
p174の本文中の図7は図8の間違い
この本も鬼才國松先生の作品.
手塚治虫の漫画, ブラックジャックを現代の医学知識で見直し, 診断を再確認, またはエピソードを医学的に補足し, より楽しむような本.
当時の手塚先生の医学的知識やその先見の明を解説、称賛していたりもしている.
自分が得た一番の印象は,
「スッゲェ ファンブック キター」である.
ブラックジャックが大好きな内科医が, 本気でブラックジャックに挑戦した本.
僕もブラックジャックを読んで育った世代なので, 取り上げられていた どのエピソードも覚えていたし, 改めてあの漫画の面白さを思い出せた.
医学生や医者になってからは実は手元に本がなく, 読んでいないのだが,
第6章の「救命救急医ブラックジャック」は, たしかに!と改めて驚いた.
確かに40年近く前の作品とは思えない新しさである.
いやほんと, 40年前とは思えない. 僕がちょうど生まれる時代に連載していたとは.
改めてスゲェな. ブラックジャック
(あれ? ブラックジャックの解釈学からブラックジャックの感想になっている?)
ブラックジャックの解釈学はファンブックとしても非常に良い出来で, ブラックジャックが好きな非医療者でも楽しめる内容だと思う(一部難しいかも. でもファンならば乗り越えられるはず!)
ブラックジャックが好きな医療者ならばハマること間違いないと思う.
まず感想の前に、発見した誤植をば
p126-129の図番号. 図5-6が2つある
p174の本文中の図7は図8の間違い
この本も鬼才國松先生の作品.
手塚治虫の漫画, ブラックジャックを現代の医学知識で見直し, 診断を再確認, またはエピソードを医学的に補足し, より楽しむような本.
当時の手塚先生の医学的知識やその先見の明を解説、称賛していたりもしている.
自分が得た一番の印象は,
「スッゲェ ファンブック キター」である.
ブラックジャックが大好きな内科医が, 本気でブラックジャックに挑戦した本.
僕もブラックジャックを読んで育った世代なので, 取り上げられていた どのエピソードも覚えていたし, 改めてあの漫画の面白さを思い出せた.
医学生や医者になってからは実は手元に本がなく, 読んでいないのだが,
第6章の「救命救急医ブラックジャック」は, たしかに!と改めて驚いた.
確かに40年近く前の作品とは思えない新しさである.
いやほんと, 40年前とは思えない. 僕がちょうど生まれる時代に連載していたとは.
改めてスゲェな. ブラックジャック
(あれ? ブラックジャックの解釈学からブラックジャックの感想になっている?)
ブラックジャックの解釈学はファンブックとしても非常に良い出来で, ブラックジャックが好きな非医療者でも楽しめる内容だと思う(一部難しいかも. でもファンならば乗り越えられるはず!)
ブラックジャックが好きな医療者ならばハマること間違いないと思う.
2020年4月24日金曜日
EGPAにおけるMPO-ANCA陽性, 陰性例の神経病理の比較
(Neurology. 2020 Apr 21;94(16):e1726-e1737.)
名古屋大学における後ろ向き解析
腓腹神経生検を行なったEGPA 82例において, MPO-ANCA陽性例 32.9%と陰性例 67.1%で所見を比較. PR3-ANCA陽性例は無し.
陽性例, 陰性例の比較
・MPO-ANCA陽性例の方が上肢の障害が多く, CRPも高値となる
MPO-ANCA陰性例
名古屋大学における後ろ向き解析
腓腹神経生検を行なったEGPA 82例において, MPO-ANCA陽性例 32.9%と陰性例 67.1%で所見を比較. PR3-ANCA陽性例は無し.
陽性例, 陰性例の比較
・MPO-ANCA陽性例の方が上肢の障害が多く, CRPも高値となる
病理所見の比較
・MPO-ANCA陽性例では, 神経周囲の血管の破壊像が多く, 陰性例では抗酸球浸潤を伴う例が多く, 血管内の閉塞伴うことが多い.
病理所見の例
MPO-ANCA陽性例
MPO-ANCA陰性例
両者の血管サイズと血管内の好酸球占有の程度
---------------------
EGPAは血管炎としての側面と好酸球増多に伴う臓器障害の2面性があり, 診療する際はどちらが優位なのかを意識しつつ, CYCやRTXの使用, メポリズマブの使用などを検討する.
今回の報告では
MPO-ANCA陽性例では血管炎(による神経障害)が優位,
陰性例では好酸球増多が優位(抗酸球浸潤やそれによる血管閉塞, 虚血により神経障害が生じる)となることを示してくれた非常に興味深いもの.
この図で綺麗にまとめてくれています
癌性リンパ管症
急性経過の呼吸苦, SpO2の低下があり, 入院となった高齢女性.
CTでは両側性のGGOと小葉間隔壁肥厚が認められ間質性肺炎急性増悪を考慮され相談.
背景には大腸癌があり, 肝転移も指摘.
また以前のCTではILDを疑う所見はなく, βD-グルカンも陰性.(コロナを疑う所見ではないが, 一応PCRも陰性)
上記から, 癌性リンパ管症の可能性を疑った.
癌性リンパ管症は肺内のリンパ管系に癌細胞が浸潤, リンパ管塞栓を呈する病態
・Pulmonary Lymphangitis Carcinomatosis: PLCと呼ばれる
・リンパ管が閉塞するため, 間質液が貯留し, O2拡散も障害される
・画像所見が明らかになる前に症状が出現する.
画像所見が出現する頃には進行していることが多い.
・また, 画像所見も様々なパターンとなる. うっ血性心不全や肺炎, 肺血栓塞栓, 喘息, サルコイドーシス, 肺線維症, 放射線肺炎など.
あまりReviewとして癌性リンパ管症をまとめている論文は見つけられず,
2019年に今までの報告例をまとめたMetaと画像所見を検討した論文があったのでそれらをまとめる.
予後は悪く, 入院が必要なPLCの場合, 生存期間の中央値は2週間
CTでは両側性のGGOと小葉間隔壁肥厚が認められ間質性肺炎急性増悪を考慮され相談.
背景には大腸癌があり, 肝転移も指摘.
また以前のCTではILDを疑う所見はなく, βD-グルカンも陰性.(コロナを疑う所見ではないが, 一応PCRも陰性)
上記から, 癌性リンパ管症の可能性を疑った.
癌性リンパ管症は肺内のリンパ管系に癌細胞が浸潤, リンパ管塞栓を呈する病態
・Pulmonary Lymphangitis Carcinomatosis: PLCと呼ばれる
・リンパ管が閉塞するため, 間質液が貯留し, O2拡散も障害される
・画像所見が明らかになる前に症状が出現する.
画像所見が出現する頃には進行していることが多い.
・また, 画像所見も様々なパターンとなる. うっ血性心不全や肺炎, 肺血栓塞栓, 喘息, サルコイドーシス, 肺線維症, 放射線肺炎など.
あまりReviewとして癌性リンパ管症をまとめている論文は見つけられず,
2019年に今までの報告例をまとめたMetaと画像所見を検討した論文があったのでそれらをまとめる.
Postgrad Med. 2019 Jun;131(5):309-318. doi: 10.1080/00325481.2019.1595982.
1970-2018年に報告されたPLCのMeta-analysis(139例)
・原発巣の頻度
乳癌, 肺癌, 胃癌が最も多い
・PLCの症状
呼吸苦が最多.
咳嗽は1/3程度の頻度
・PLCの予後
悪性腫瘍診断~PLC診断までは36wk~92wkと幅がある
PLCによる呼吸器症状出現からの生存期間の中央値は60日だが, 0wk~1080wkとこれもまた差が大きい. 数日間の急性経過もある.
入院してからは14日間と予後は悪い
肺癌でPLCが疑われた94例において, HRCTとPET/CT検査所見を評価.
PLCに関連する検査所見を評価した.
(J Nucl Med. 2020 Jan;61(1):26-32. doi: 10.2967/jnumed.119.229575.)
・上記のうち, 病理的にPLCと診断されたのは69例(73%)
・HRCT所見:
PLCの可能性を上げる所見は
気管支血管周囲束の肥厚
リンパ節腫大のみ.
--------------------------------
気管支血管周囲束は気管支, 血管, リンパ管が含まれるため, リンパ管の閉塞で気管支血管周囲束の肥厚や, 小葉間隔壁の肥厚が生じる.
同様に静脈圧が上昇する肺水腫でも同様の所見が認められる.
あまり特異的な所見はなく, 担癌患者で, 縦隔や肺のリンパ節腫大があり, 肺水腫様所見を伴う場合は考慮するという感じになるか.(びまん性, 局所性)
画像所見よりも酸素化の低下や呼吸苦が先行することもあるため, 注意. 肺画像は派手になりがちだが, 咳嗽は1/3のみというのも特徴的かもしれない.
予後は悪く, 入院が必要なPLCの場合, 生存期間の中央値は2週間
2020年4月20日月曜日
IFN-γ release assayの値と結核発症リスク
IGRA陽性例における活動性結核発症PPVはMeta-analysisによると2.7%[2.3-3.2], NPVは99.7%であり, IGRA陽性自体が活動性結核発症を予測するのに有用かというとそうでもない.
基本的に免疫抑制状態の患者で評価すべきものと言える.
ではIGRAの値が発症リスクに関連するかどうかを評価したCohort
UKにおける, TB暴露者と移民9610例を対象としたCohort.
(Am J Respir Crit Care Med Vol 201, Iss 8, pp 984–991, Apr 15, 2020)
・10045例を評価し, 175例が活動性TB, 260例が潜在性TBとして治療
残る9610例を4.7年[3.8-5.5]フォローした
・フォロー期間中のTB発症頻度と,QFT-GIT, T-SPOT.TB, TSTの値との関連を評価.
母集団
各検査の値とTB発症率(/1000pt-y)
Cutoffと感度, 特異度
・値が高いほど特異度は高くなるものの, 感度は非常に低い
・また特異度も著明に差が出るわけでもない
-----------------------
いちおうQFT, T-SPOT高値(強陽性)は活動性結核発症リスク因子となるものの, そもそも活動性となる頻度が低く, 強いリスク因子となるかと言われるとそうでもない.
参考程度に
基本的に免疫抑制状態の患者で評価すべきものと言える.
ではIGRAの値が発症リスクに関連するかどうかを評価したCohort
UKにおける, TB暴露者と移民9610例を対象としたCohort.
(Am J Respir Crit Care Med Vol 201, Iss 8, pp 984–991, Apr 15, 2020)
・10045例を評価し, 175例が活動性TB, 260例が潜在性TBとして治療
残る9610例を4.7年[3.8-5.5]フォローした
・フォロー期間中のTB発症頻度と,QFT-GIT, T-SPOT.TB, TSTの値との関連を評価.
母集団
各検査の値とTB発症率(/1000pt-y)
Cutoffと感度, 特異度
・値が高いほど特異度は高くなるものの, 感度は非常に低い
・また特異度も著明に差が出るわけでもない
-----------------------
いちおうQFT, T-SPOT高値(強陽性)は活動性結核発症リスク因子となるものの, そもそも活動性となる頻度が低く, 強いリスク因子となるかと言われるとそうでもない.
参考程度に
2020年4月15日水曜日
間質性膀胱炎とシェーグレン症候群
長年 下部尿路症状にて治療を受けている中年〜高齢女性.
間質性膀胱炎の診断がされている.
この度, 免疫グロブリンの上昇などを認めて紹介.
Dry eyeやDry mouth症状を認め, 多クローン性IgGの上昇もあり.
ANAは>640倍, Homogeneous.
抗SS-A抗体陽性.
ということで, シェーグレン症候群による間質性膀胱炎なのだろう, という話.
------------------------
間質性膀胱炎: Painful Bladder Syndrome/ Interstitial cystitis
慢性の骨盤痛, 頻尿, 尿症状を来す疾患
(BMJ 2009;339:b2707)(Arch Gynecol Obstet (2007) 275:223–229)
・女性に多く, 男女比は1:5
・米国では,
医師の診断したPBS 女性 197/100,000, 男性41/100,000
膀胱鏡を施行して診断したのは 99, 19/100,000,
膀胱鏡, 膀胱拡張させて診断したのは 45, 8/100,000と, その殆どが臨床診断となっている.
・年間発症率は女性で21/100,000, 男性 4/100,000.
・感染や, 他器質的所見を認めない膀胱の疼痛, 頻尿症状を認める.
・大きく2 typeに分類され,
Classic; 炎症性の膀胱壁変化が原因(Hunner-type)
Non-classic; 膀胱鏡所見はNegativeだが, 症状を認める(最多)
・蓄尿されると症状が増悪することが多く, 昼夜頻尿を認める
Hunner lesions/ulcerは膀胱鏡において, 膀胱壁に白色の潰瘍や傷があり, その周囲に赤色の粘膜, 放射状の小血管を認める所見
PBSの原因は未だ不明のまま
・感染症説; PBS/IC患者群ではUTIの既往が有意に多いとされるが, 実際に培養で証明されたUTIでは無い点, PCRや組織的に感染が証明できていない点から関連は低いとされる.
ただし, 抗生剤はPBS/ICの治療薬として効果が期待できるのも確か.
・膀胱上皮の障害説; glycosaminoglycan(GAG)層の障害により, 膀胱壁内へ尿が流入し, 炎症を惹起する説.
・免疫異常説; PBS/IC患者ではSLE, SSc, 線維筋痛症, Sjogren症候群が多い. 膀胱壁や上皮への抗体産生による慢性炎症が原因とする説.
・神経原性の炎症説; 膀胱にある感覚神経末端における, 肥満細胞を介する炎症惹起説. 慢性の内臓痛がPBSの主体と考える.
PBS/ICでは特に特徴的な組織所見は無し.
PBS/ICの診断基準
(Clin J Am Soc Nephrol 4: 1844–1857, 2009.)
通常のPBS/ICの治療
・症状緩和としてアミトリプチリンや, 重度の場合はオピオイドも使用される.
・シクロスポリンは75%で臨床的改善が得られるとの報告もある
・非薬剤治療として認知行動療法や神経根刺激療法など.
(J Urol. 2015 May;193(5):1545-53.)
ここからがメイン
自己免疫疾患と間質性膀胱炎
(Joint Bone Spine. 2015 Jul;82(4):245-50.)(Clin Rheumatol. 2014 Aug;33(8):1189-93.)
自己免疫性疾患にICが合併する報告もある
・SS 46例中14%でICや下部尿路症状を合併する報告(SLEでは9%, 健常Controlでも9%)
・また, SSの5%でICが合併, Controlでは0.3%
pSSに合併するICでは, muscarinic M3受容体抗体の関連が指摘されている.
・M3受容体は膀胱の排尿筋細胞にも存在し, コリン作動性の膀胱収縮に関連する受容体
(Nat Clin Pract Urol. 2007 Sep;4(9):484-91.)
PBS/IC患者における他疾患の合併率
・自己免疫性疾患では, IBD, SLE, RA, pSSは関連性がありそう.
(Nat Clin Pract Urol. 2007 Sep;4(9):484-91.)
台湾におけるNational cohort
(PLoS ONE 14(11): e0225455.)
・2001-2010年に新規に診断されたpSS症例と同時期の年齢, 性別を合わせたControl群を抽出し, 過活動性膀胱, Bladder pain syndrome/ICの頻度を比較.
・pSS cohortはN=11526, Control群は115260例を導入
pSSにおけるOAB, BPS/ICの頻度は其々42, 5/10000pt-y
OAB HR 1.68, BPS/IC HR 2.34と有意に上昇する結果
・また,
pSS罹患期間が長いほど,
<65歳,
女性例,
Dry mouthやDry eyeの治療を行なっている群ほどリスクは上昇する
pSSに合併したPBS/ICの治療
pSSと合併するICの症例報告では, PSL 20mg~0.5mg/kgの投与で症状は軽快~改善
・減量に伴い再燃する経過となる.
・ステロイド以外にはシクロホスファミド, アザチオプリン, タクロリムス, シクロスポリンの併用の報告あり.
(Joint Bone Spine. 2015 Jul;82(4):245-50.)(Mod Rheumatol. 2016;26(3):445-9.)
--------------------------------
患者のQOLを著しく下げるPBS/IC.
その背景にはpSSや自己免疫性疾患があるかもしれない
この場合はステロイドや免疫抑制薬による症状の改善も期待できる可能性がある.
間質性膀胱炎の診断がされている.
この度, 免疫グロブリンの上昇などを認めて紹介.
Dry eyeやDry mouth症状を認め, 多クローン性IgGの上昇もあり.
ANAは>640倍, Homogeneous.
抗SS-A抗体陽性.
ということで, シェーグレン症候群による間質性膀胱炎なのだろう, という話.
------------------------
間質性膀胱炎: Painful Bladder Syndrome/ Interstitial cystitis
慢性の骨盤痛, 頻尿, 尿症状を来す疾患
(BMJ 2009;339:b2707)(Arch Gynecol Obstet (2007) 275:223–229)
・女性に多く, 男女比は1:5
・米国では,
医師の診断したPBS 女性 197/100,000, 男性41/100,000
膀胱鏡を施行して診断したのは 99, 19/100,000,
膀胱鏡, 膀胱拡張させて診断したのは 45, 8/100,000と, その殆どが臨床診断となっている.
・年間発症率は女性で21/100,000, 男性 4/100,000.
・感染や, 他器質的所見を認めない膀胱の疼痛, 頻尿症状を認める.
・大きく2 typeに分類され,
Classic; 炎症性の膀胱壁変化が原因(Hunner-type)
Non-classic; 膀胱鏡所見はNegativeだが, 症状を認める(最多)
・蓄尿されると症状が増悪することが多く, 昼夜頻尿を認める
Hunner lesions/ulcerは膀胱鏡において, 膀胱壁に白色の潰瘍や傷があり, その周囲に赤色の粘膜, 放射状の小血管を認める所見
PBSの原因は未だ不明のまま
・感染症説; PBS/IC患者群ではUTIの既往が有意に多いとされるが, 実際に培養で証明されたUTIでは無い点, PCRや組織的に感染が証明できていない点から関連は低いとされる.
ただし, 抗生剤はPBS/ICの治療薬として効果が期待できるのも確か.
・膀胱上皮の障害説; glycosaminoglycan(GAG)層の障害により, 膀胱壁内へ尿が流入し, 炎症を惹起する説.
・免疫異常説; PBS/IC患者ではSLE, SSc, 線維筋痛症, Sjogren症候群が多い. 膀胱壁や上皮への抗体産生による慢性炎症が原因とする説.
・神経原性の炎症説; 膀胱にある感覚神経末端における, 肥満細胞を介する炎症惹起説. 慢性の内臓痛がPBSの主体と考える.
PBS/ICでは特に特徴的な組織所見は無し.
PBS/ICの診断基準
(Clin J Am Soc Nephrol 4: 1844–1857, 2009.)
通常のPBS/ICの治療
・症状緩和としてアミトリプチリンや, 重度の場合はオピオイドも使用される.
・シクロスポリンは75%で臨床的改善が得られるとの報告もある
・非薬剤治療として認知行動療法や神経根刺激療法など.
(J Urol. 2015 May;193(5):1545-53.)
ここからがメイン
自己免疫疾患と間質性膀胱炎
(Joint Bone Spine. 2015 Jul;82(4):245-50.)(Clin Rheumatol. 2014 Aug;33(8):1189-93.)
自己免疫性疾患にICが合併する報告もある
・SS 46例中14%でICや下部尿路症状を合併する報告(SLEでは9%, 健常Controlでも9%)
・また, SSの5%でICが合併, Controlでは0.3%
pSSに合併するICでは, muscarinic M3受容体抗体の関連が指摘されている.
・M3受容体は膀胱の排尿筋細胞にも存在し, コリン作動性の膀胱収縮に関連する受容体
(Nat Clin Pract Urol. 2007 Sep;4(9):484-91.)
PBS/IC患者における他疾患の合併率
・自己免疫性疾患では, IBD, SLE, RA, pSSは関連性がありそう.
(Nat Clin Pract Urol. 2007 Sep;4(9):484-91.)
台湾におけるNational cohort
(PLoS ONE 14(11): e0225455.)
・2001-2010年に新規に診断されたpSS症例と同時期の年齢, 性別を合わせたControl群を抽出し, 過活動性膀胱, Bladder pain syndrome/ICの頻度を比較.
・pSS cohortはN=11526, Control群は115260例を導入
pSSにおけるOAB, BPS/ICの頻度は其々42, 5/10000pt-y
OAB HR 1.68, BPS/IC HR 2.34と有意に上昇する結果
・また,
pSS罹患期間が長いほど,
<65歳,
女性例,
Dry mouthやDry eyeの治療を行なっている群ほどリスクは上昇する
pSSに合併したPBS/ICの治療
pSSと合併するICの症例報告では, PSL 20mg~0.5mg/kgの投与で症状は軽快~改善
・減量に伴い再燃する経過となる.
・ステロイド以外にはシクロホスファミド, アザチオプリン, タクロリムス, シクロスポリンの併用の報告あり.
(Joint Bone Spine. 2015 Jul;82(4):245-50.)(Mod Rheumatol. 2016;26(3):445-9.)
--------------------------------
患者のQOLを著しく下げるPBS/IC.
その背景にはpSSや自己免疫性疾患があるかもしれない
この場合はステロイドや免疫抑制薬による症状の改善も期待できる可能性がある.
本の感想: Kunimatsu's Lists
献本御礼
Kunimatsu's Lists 〜國松の鑑別リスト〜
この春に一気に4冊? の本を刊行し, #國祭り 真っ最中の國松先生の鑑別診断リスト.
この本には文章がありません, とありますが, 本当に文章なかった. びっくりした.
其々の状況に鑑別診断が羅列しているのですが, その数がパない.
数えるのがめんどくさいので数えませんが
さらに追加して欲しい項目や鑑別疾患の提案などを募集しており,
読者とともに進化していく書籍らしい.
ザッと流してみてますが, 「腸管感染症の原因病原体(ウイルス以外)」のところで「クドア」が入っているところでお茶を吹いた.
國松先生には今度MACの清掃費用を請求したい.
クドアを入れるならば、馬刺しや鹿刺しによる住肉胞子虫も入れて欲しいと狩猟内科医の私は強く思うのであった.
よし、メールしよう.
2020年4月14日火曜日
本の感想: 精神症状から身体疾患を見抜く
献本御礼
精神症状から身体疾患を見抜く
慶應義塾大学 精神・神経科の尾久守侑先生が書かれた本.
ご本人とは面識はないものの, どうやら詩人らしい.
医者という肩書以外に誇るものがない自分にとっては, そういう+αにすごく憧れる.
今はハンターという肩書に見合うように精進しているところ.
まあそれは置いておいて,
この題名から, まず自分好みということは確定.
ネットの世界の心の友である國松先生が監修というところもホッとする.
医者になってから,
ずっと総合診療という世界で生きてきており,
その役割から, 総合病院の各科で解決できない患者が最終的に集まってきて,
さらにそれを他に回せない立場で色々足掻き,
結局今は自己流で内科と精神科の狭間のような疾患をフォローしている.
精神科の専門書も読んではみたものの, いまいちピンとくるものがなく, まさにこのような内容の本を待っていた.
しかもそれを献本いただいた. これはうれしい.
で, 読んでみました.
いちいち腑に落ちる感じ.
これは通読するのが正しい.
日頃色々工夫して, 失敗と成功をしながらなんとなく身についた診療スタイルが, 改めて言語化されて, さらにそこから一歩進むことができる感覚.
さらに、「あれの時のこれ, 気づけてなかったなぁ」という反省もたくさん.
さらにこの狭間診療のレベルを確実に引き上げてくれる本でした.
内容の具体的な部分は書きません.
狭間診療している人はホント読んだほうが良いです.
専門診療しかしてない人も, 自身の病棟患者のうつ病とか気づけてますか?
たまにそのまま退院して, その後 僕の外来に流れ着いたりしてますよ!
ということで, そういうものに気付けたことがない人も是非おすすめです.
精神症状から身体疾患を見抜く
慶應義塾大学 精神・神経科の尾久守侑先生が書かれた本.
ご本人とは面識はないものの, どうやら詩人らしい.
医者という肩書以外に誇るものがない自分にとっては, そういう+αにすごく憧れる.
今はハンターという肩書に見合うように精進しているところ.
まあそれは置いておいて,
この題名から, まず自分好みということは確定.
ネットの世界の心の友である國松先生が監修というところもホッとする.
医者になってから,
ずっと総合診療という世界で生きてきており,
その役割から, 総合病院の各科で解決できない患者が最終的に集まってきて,
さらにそれを他に回せない立場で色々足掻き,
結局今は自己流で内科と精神科の狭間のような疾患をフォローしている.
精神科の専門書も読んではみたものの, いまいちピンとくるものがなく, まさにこのような内容の本を待っていた.
しかもそれを献本いただいた. これはうれしい.
で, 読んでみました.
いちいち腑に落ちる感じ.
これは通読するのが正しい.
日頃色々工夫して, 失敗と成功をしながらなんとなく身についた診療スタイルが, 改めて言語化されて, さらにそこから一歩進むことができる感覚.
さらに、「あれの時のこれ, 気づけてなかったなぁ」という反省もたくさん.
さらにこの狭間診療のレベルを確実に引き上げてくれる本でした.
内容の具体的な部分は書きません.
狭間診療している人はホント読んだほうが良いです.
専門診療しかしてない人も, 自身の病棟患者のうつ病とか気づけてますか?
たまにそのまま退院して, その後 僕の外来に流れ着いたりしてますよ!
ということで, そういうものに気付けたことがない人も是非おすすめです.
高ガンマグロブリン血症性紫斑
症例 30台女性
慢性経過の繰り返す下肢の点状紫斑を認めて紹介.
下肢の浮腫が生じ, それと同時に点状紫斑が出現. 1週間程度で自然に消失するが, 一部で色素沈着を残す.
関節症状や他の皮疹は無し. 発熱も無し.
さらに病歴を聞くと口渇感やドライアイ症状が認められた.
血液検査では
IgG 2700mg/dL, 多クローン性. 他免疫グロブリンの抑制なし
クリオグロブリン陰性
抗SS-A抗体陽性 ということで, pSSに伴う高ガンマグロブリン血症性紫斑と診断.
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Hypergammaglobulinemic purpura
高ガンマグロブリン血症を伴う, 繰り返す紫斑を生じる病態
(The Journal of Dermatology 1995;22:186-190)(AMA Arch Derm. 1958 Jan;77(1):23-33.)
・Sjogren症候群や, SLE, 自己免疫性肝炎, B細胞性リンパ増殖性疾患, サルコイドーシス, 肝硬変, 結核などの慢性感染症などで報告がある.
・慢性の繰り返す紫斑を生じる.
紫斑はpalpable purpuraが下肢を中心に認められる.
・組織では血管周囲の好中球浸潤と, 赤血球の漏出が認められる.
・5例の報告では, IgG値は2000-5000程度の上昇.
血液の過粘稠の関連も示唆されているが, 実際のViscosityは軽度上昇~正常範囲のことが多い.
紫斑の発作は長期間の立位や運動により誘発される
・初期には短時間の丘疹やじんま疹様の皮疹を認め, その際焼けるような感覚や疼痛を伴うことも多い.
・掻痒感は基本的にはない
・その30分程度経過後に点状紫斑や小紫斑が出現.
・改善時には色素沈着を残す
・局所的な筋痛や皮膚の痛みは数日間残存することもある
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q08.html)
pSSに伴う血管炎ではクリオグロブリン血症も有名
両者で臨床上に違いはあるのか?
pSSにおける, クリオグロブリン血症性 vs 高γグロブリン血症性紫斑の比較
(Scand J Rheumatol. 2015;44(1):36-41.)
・pSS 1170例を対象としたCohortにおいて, 紫斑を認めた症例は106例(9.1%)
このうち33/106(31.1%)でクリオグロブリンが陽性.
また19/33は高γグロブリン血症も認められた
・紫斑や血管炎所見を認めない1032例において, 474例(44.5%)で高γグロブリン血症を認め, 26例(2.4%)でクリオグロブリンが陽性.
このCohortにおいて, 米国/西欧のpSS診断基準を満たし, 且つクリオグロブリン, γグロブリンの検査を施行され, HCV抗体陰性を満たす652例を抽出.
・この中でクリオグロブリン血症性血管炎(CV) 23例, 高γグロブリン血症性血管炎40例, Control 589例を比較した.
多変量解析によるCV, HGVに関連する因子
・末梢神経障害や低C4, 抗SSB抗体陽性はCVリスクに関連
・抗SS-A抗体, RF陽性はHGVリスクに関連する
慢性経過の繰り返す下肢の点状紫斑を認めて紹介.
下肢の浮腫が生じ, それと同時に点状紫斑が出現. 1週間程度で自然に消失するが, 一部で色素沈着を残す.
関節症状や他の皮疹は無し. 発熱も無し.
さらに病歴を聞くと口渇感やドライアイ症状が認められた.
血液検査では
IgG 2700mg/dL, 多クローン性. 他免疫グロブリンの抑制なし
クリオグロブリン陰性
抗SS-A抗体陽性 ということで, pSSに伴う高ガンマグロブリン血症性紫斑と診断.
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Hypergammaglobulinemic purpura
高ガンマグロブリン血症を伴う, 繰り返す紫斑を生じる病態
(The Journal of Dermatology 1995;22:186-190)(AMA Arch Derm. 1958 Jan;77(1):23-33.)
・Sjogren症候群や, SLE, 自己免疫性肝炎, B細胞性リンパ増殖性疾患, サルコイドーシス, 肝硬変, 結核などの慢性感染症などで報告がある.
・慢性の繰り返す紫斑を生じる.
紫斑はpalpable purpuraが下肢を中心に認められる.
・組織では血管周囲の好中球浸潤と, 赤血球の漏出が認められる.
・5例の報告では, IgG値は2000-5000程度の上昇.
血液の過粘稠の関連も示唆されているが, 実際のViscosityは軽度上昇~正常範囲のことが多い.
紫斑の発作は長期間の立位や運動により誘発される
・初期には短時間の丘疹やじんま疹様の皮疹を認め, その際焼けるような感覚や疼痛を伴うことも多い.
・掻痒感は基本的にはない
・その30分程度経過後に点状紫斑や小紫斑が出現.
・改善時には色素沈着を残す
・局所的な筋痛や皮膚の痛みは数日間残存することもある
(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q08.html)
pSSに伴う血管炎ではクリオグロブリン血症も有名
両者で臨床上に違いはあるのか?
pSSにおける, クリオグロブリン血症性 vs 高γグロブリン血症性紫斑の比較
(Scand J Rheumatol. 2015;44(1):36-41.)
・pSS 1170例を対象としたCohortにおいて, 紫斑を認めた症例は106例(9.1%)
このうち33/106(31.1%)でクリオグロブリンが陽性.
また19/33は高γグロブリン血症も認められた
・紫斑や血管炎所見を認めない1032例において, 474例(44.5%)で高γグロブリン血症を認め, 26例(2.4%)でクリオグロブリンが陽性.
このCohortにおいて, 米国/西欧のpSS診断基準を満たし, 且つクリオグロブリン, γグロブリンの検査を施行され, HCV抗体陰性を満たす652例を抽出.
・この中でクリオグロブリン血症性血管炎(CV) 23例, 高γグロブリン血症性血管炎40例, Control 589例を比較した.
多変量解析によるCV, HGVに関連する因子
・末梢神経障害や低C4, 抗SSB抗体陽性はCVリスクに関連
・抗SS-A抗体, RF陽性はHGVリスクに関連する