ページ

2020年4月14日火曜日

高ガンマグロブリン血症性紫斑

症例 30台女性

慢性経過の繰り返す下肢の点状紫斑を認めて紹介.
下肢の浮腫が生じ, それと同時に点状紫斑が出現. 1週間程度で自然に消失するが, 一部で色素沈着を残す.
関節症状や他の皮疹は無し. 発熱も無し.

さらに病歴を聞くと口渇感やドライアイ症状が認められた.

血液検査では
IgG 2700mg/dL, 多クローン性. 他免疫グロブリンの抑制なし
クリオグロブリン陰性
抗SS-A抗体陽性 ということで, pSSに伴う高ガンマグロブリン血症性紫斑と診断.

 -------

Hypergammaglobulinemic purpura

高ガンマグロブリン血症を伴う, 繰り返す紫斑を生じる病態
(The Journal of Dermatology 1995;22:186-190)(AMA Arch Derm. 1958 Jan;77(1):23-33.)
・Sjogren症候群や, SLE, 自己免疫性肝炎, B細胞性リンパ増殖性疾患, サルコイドーシス, 肝硬変, 結核などの慢性感染症などで報告がある.
・慢性の繰り返す紫斑を生じる.
 紫斑はpalpable purpuraが下肢を中心に認められる.
組織では血管周囲の好中球浸潤と, 赤血球の漏出が認められる.
・5例の報告では, IgG値は2000-5000程度の上昇.
 血液の過粘稠の関連も示唆されているが, 実際のViscosityは軽度上昇~正常範囲のことが多い.

紫斑の発作は長期間の立位や運動により誘発される
・初期には短時間の丘疹やじんま疹様の皮疹を認め,  その際焼けるような感覚や疼痛を伴うことも多い
・掻痒感は基本的にはない
・その30分程度経過後に点状紫斑や小紫斑が出現.
・改善時には色素沈着を残す
・局所的な筋痛や皮膚の痛みは数日間残存することもある

(https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q08.html)

pSSに伴う血管炎ではクリオグロブリン血症も有名
両者で臨床上に違いはあるのか?

pSSにおける, クリオグロブリン血症性 vs 高γグロブリン血症性紫斑の比較
(Scand J Rheumatol. 2015;44(1):36-41.)
・pSS 1170例を対象としたCohortにおいて, 紫斑を認めた症例は106(9.1%)
 このうち33/106(31.1%)でクリオグロブリンが陽性.
 また19/33は高γグロブリン血症も認められた
・紫斑や血管炎所見を認めない1032例において474(44.5%)で高γグロブリン血症を認め26(2.4%)でクリオグロブリンが陽性.

このCohortにおいて, 米国/西欧のpSS診断基準を満たし, 且つクリオグロブリン, γグロブリンの検査を施行され, HCV抗体陰性を満たす652例を抽出.
この中でクリオグロブリン血症性血管炎(CV) 23, 高γグロブリン血症性血管炎40, Control 589例を比較した.

多変量解析によるCV, HGVに関連する因子
・末梢神経障害や低C4, SSB抗体陽性はCVリスクに関連
SS-A抗体, RF陽性はHGVリスクに関連する