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2020年4月24日金曜日

癌性リンパ管症

急性経過の呼吸苦, SpO2の低下があり, 入院となった高齢女性.
CTでは両側性のGGOと小葉間隔壁肥厚が認められ間質性肺炎急性増悪を考慮され相談.

背景には大腸癌があり, 肝転移も指摘.
また以前のCTではILDを疑う所見はなく, βD-グルカンも陰性.(コロナを疑う所見ではないが, 一応PCRも陰性)

上記から, 癌性リンパ管症の可能性を疑った.

癌性リンパ管症は肺内のリンパ管系に癌細胞が浸潤, リンパ管塞栓を呈する病態
・Pulmonary Lymphangitis Carcinomatosis: PLCと呼ばれる
・リンパ管が閉塞するため, 間質液が貯留し, O2拡散も障害される
・画像所見が明らかになる前に症状が出現する
 画像所見が出現する頃には進行していることが多い.
また, 画像所見も様々なパターンとなる. うっ血性心不全や肺炎, 肺血栓塞栓, 喘息, サルコイドーシス, 肺線維症, 放射線肺炎など.

あまりReviewとして癌性リンパ管症をまとめている論文は見つけられず,
2019年に今までの報告例をまとめたMetaと画像所見を検討した論文があったのでそれらをまとめる.

Postgrad Med. 2019 Jun;131(5):309-318. doi: 10.1080/00325481.2019.1595982. 
1970-2018年に報告されたPLCMeta-analysis(139)
・原発巣の頻度
 乳癌, 肺癌, 胃癌が最も多い

・PLCの症状
 呼吸苦が最多.
 咳嗽は1/3程度の頻度

・PLCの予後

 悪性腫瘍診断~PLC診断までは36wk~92wkと幅がある
 PLCによる呼吸器症状出現からの生存期間の中央値は60日だが, 0wk~1080wkとこれもまた差が大きい. 数日間の急性経過もある.
 入院してからは14日間と予後は悪い

肺癌でPLCが疑われた94例において, HRCTPET/CT検査所見を評価.
PLCに関連する検査所見を評価した.
(J Nucl Med. 2020 Jan;61(1):26-32. doi: 10.2967/jnumed.119.229575.)
・上記のうち, 病理的にPLCと診断されたのは69(73%)
・HRCT所見
 PLCの可能性を上げる所見は
 気管支血管周囲束の肥厚
 リンパ節腫大のみ.

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気管支血管周囲束は気管支, 血管, リンパ管が含まれるため, リンパ管の閉塞で気管支血管周囲束の肥厚や, 小葉間隔壁の肥厚が生じる.
同様に静脈圧が上昇する肺水腫でも同様の所見が認められる.

あまり特異的な所見はなく, 担癌患者で, 縦隔や肺のリンパ節腫大があり, 肺水腫様所見を伴う場合は考慮するという感じになるか.(びまん性, 局所性)

画像所見よりも酸素化の低下や呼吸苦が先行することもあるため, 注意. 肺画像は派手になりがちだが, 咳嗽は1/3のみというのも特徴的かもしれない.

予後は悪く, 入院が必要なPLCの場合, 生存期間の中央値は2週間