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2019年11月1日金曜日

真性多血症で好酸球増多

中年の女性, 寝汗, 足の腓返りで受診.

身体所見上有意な所見は乏しく,
血液検査にて, 以下の様な所見が得られた.

WBC 20000/µL, Neu 51%, Ly 9%, Eo 30%
Hb 17.2g/dL, Ht 59%, MCV 70fl, フェリチン 19
血小板 15万/µL

画像検査にて脾腫を評価したところ, 著明に腫大した脾臓を確認
体腔内や表在リンパ節腫大は認められなかった.


どう考えるか?
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血液疾患である, ということは間違い無い.
好酸球がおよそ6000/µLと著明な好酸球増多があり,
鉄欠乏にもかかわらずHb 17台の多血症もある.




自分の結論としては, おそらくは
真性多血症+FGFR1再構成陽性例ではないかと考える.


真性多血症についてはこちらを参照

WHO2016の好酸球増多をきたす疾患は以下の通り
(Am J Hematol. 2017;92:1243–1259.)


・このうち骨髄増殖性疾患, 骨髄性・リンパ球性腫瘍による好酸球増多は,
 FIP1L1-PDGFRα, FIP1L1-PDGFRβ陽性例
 FTV6-PDGFRβ
 FGFR1再構成
 PCM1-JAK2 が関連しているものと, それ以外のNOS(not otherwise specified)に分類される.

・MPN(骨髄増殖性疾患: PV, ET, CMLなど)ではFIP1L1-PDGFRαを伴う好酸球増多やFGFR1再構成を伴う好酸球増多が挙げられている.

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Pubmedにて真性多血症と好酸球増多で検索すると, 件数は非常に少ないものの, 確かに上記FIP1L1-PDGFRαを合併した症例, FGFR1再構成を合併した症例の報告がある.

PV+FIP1L1-PDGFRα再構成+の症例: 54歳男性, 頭痛やめまい, 複視にて受診
・血液検査ではHb 20.8g/dL, Ht 67.7%, WBC 12700/µL, 血小板 12.6
・ヒドロキシウレアと瀉血療法にて対応し, Hbは低下.
 その4ヶ月後, WBCの上昇(23000), 好酸球増多(67%)が出現
・骨髄穿刺検体より, FIP1L1-PDGFRα再構成+
 JAK2V617F(exon 14)は陰性. JAK2 exon 12変異は未評価
・イマチニブにて反応性は良好であった.
(Cancer Genetics 205 (2012) 519-522)

PV8p12転座(FGFR1)を認めた8症例

・PVで上記転座を伴う症例は, 白血球増多, 好酸球増多を伴いやすく, また急性転化リスクが高い.
・JAK2V617Fを評価した2症例は双方とも陰性であった
(Cancer Genetics and Cytogenetics 199 (2010) 53-55)


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PVで好酸球増多を伴うことは稀ながらあり,
その場合は急性転化リスクも高い可能性がある.

関連するのはFIP1L1-PDGFRαやFGFR1再構成
基本的にPVで脾腫や好酸球増多がある症例では骨髄検査を行うべきと上記論文では指摘している