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2019年10月5日土曜日

前庭神経炎(疑い)症例で眼振の向きが変化.

右向きの水平方向性眼振,
さらにBedside head impulse test(bHIT)で左回旋時にVORが遅延したため,
左前庭神経炎と判断した症例.

 >> 補足: 左前庭機能低下と麻痺性眼振(右方向)

翌日の午後に評価すると,
眼振が左向きに変化.
bHITは左回旋時の遅れのまま不変.

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この変化は? 一体?










Recovery nystagmus

Recovery nystagmusは末梢性の眼振の治癒期で生じる, 患側方向の眼振.
基本的にメニエール病で多く認め, 前庭神経炎急性期で認めることは非常に希.

"メニエール病は発症~15分程度では刺激性の障害(= 患側への眼振)
 その後内耳機能の抑制が生じ(麻痺性眼振 =健側への眼振)
 改善する際に相対的な再度患側への眼振が生じることがある(刺激性)"
(Acta Oto-Laryngologica, 2012; 132: 498–504)

・83例の片側メニエール病症例の評価では
 遅発性麻痺性眼振が20%, 刺激性眼振が30%で認められた.
(Acta Oto-Laryngologica, 2012; 132: 498–504)


他の末梢性眼振でも上記のようなRecovery nystagmusは生じるが, 基本的には数週間〜数カ月経過して生じることが普通

前庭神経炎, 突発性難聴, 内耳障害症例において
眼振のStageを以下のように分類した際の経過をプロット
(Acta Otolaryngol (Stockh) 1995; Suppl 519: 188- 190.)
Stage Iは刺激性眼振: 極早期であり, 見つけることは希.
Stage IIが麻痺性眼振: 通常急性期で認められる, 健側方向眼振
Stage IIIHead-shaking nystagumusで評価され中枢性の代償期となる. その初期では健側方向, 晩期では患側
Stage IVで改善する際に患側方向への眼振(Recovery nystagumus)を生じることがある
Stage Vの治癒にいたるまでは数カ月かかる(A).
 また, Stage III-1,2に数カ月とどまる例もある(B).

患者の経過


前庭神経炎とメニエール病における, 体位性の眼振を評価した報告から
(Clin Exp Otorhinolaryngol. 2019 Aug;12(3):255-260.)
・急性期のVNでは麻痺性眼振が80%. Recovery type3%のみ
 フォロー時のVNでは麻痺性眼振42%, Recovery14%
・MDでは麻痺性眼振が38%, Recovery38%の頻度.


HC-BPPVのような体位による眼振の変化は急性のVN10%, MD22%で認められる.

この報告では急性期のRecovery nystagmusは前庭神経炎では3%と少ない.
 フォロー時の前庭神経炎では14%まで増加
メニエール病では38%と多い.

さらに, HC-BPPV(外側半規管のBPPV, Supine roll testにて向地方向, 背地方向性の眼振が認められる) 様の眼振パターンもこれら疾患でありえるというのが非常に興味深い新しい知見.


前庭神経炎でも, Canal paresisが軽度な症例が, 早期から眼振の向きが変わる可能性がある
(Clin Exp Otorhinolaryngol. 2017 Jun;10(2):148-152.)
VN 201例において, カロリック試験を行いCanal paresis<25%の群をMinimal Canal paresis群(MCP)と定義.
上記MCP 58例と, ≥25%Canal paresis 143例を比較した報告
・両群の背景は有意差なし
 眼振持続期間は有意にMCPで短い
 眼振報告の変化はMCP群で24%と多く, CP≥25%では5.6%と少ない.

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急性期で眼振の向きが変化するのはメニエールと思っていたものの,
前庭神経炎でも少ないながらそのようなパターンがありそう.

特にCanal paresisが軽度な症例で早期の眼振変化が出現する可能性が高く,
早く治る一つの指標なのかもしれない.

さてこの症例は早期に改善に向かうのだろうか?