(追記 2019/10/16: IPF患者におけるANCA陽性転化について)
(CHEST 2019; 156(4):715-723)
IPFと診断された患者の一部でANCAが陽性となる例がある.
しかしながらその臨床的意義は不明確である.
UCSFとShicago大学における2つのCohortを解析.
IPFと診断された患者におけるMPO, PR3-ANCA陽性例を評価
・UCSF cohortにおけるIPF 353例のうち, 14例でANCA陽性(4.0%[2.2-6.5])
MPO-ANCAが6例, PR3-ANCAが8例.
・Shicago大学ではIPF 392例中, 20例でANCA陽性(5.1%[3.1-7.8])
MPO-ANCAが12例, PR3-ANCAが2例, 6例がIIFのみ陽性
ANCA陽性例と陰性例の比較
・ANCA陽性例は女性で多い
画像所見の比較
・蜂窩肺が中等度~高度な症例やGGOを伴う症例ではANCA陽性例が多い.
その後のAAV発症リスク
・UCSF cohortでは, 中央値18.3ヶ月間のフォローにて
MPO-ANCA陽性の2/6(33%)がMPAを診断.
双方とも診断後1年で発症
・Shicago大学では, 中央値10.5ヶ月のフォローにて,
MPO-ANCA陽性の3/12(25%)がAAVを診断
・腎炎が3例, 多発単神経炎が2例, 紫斑が1例, 副鼻腔炎が1例, 炎症性関節炎が1例
・PR3-ANCA陽性例ではフォロー期間中にAAV発症する患者はいなかった
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IPFの4-5%でANCA陽性であり, MPO-ANCA陽性例の1/4~1/3でその後1-2年程度でAAVを発症する可能性がある.
IPFとしてフォローされていた患者が, 腎炎を発症し, 結果的にMPAであった症例は自分も経験があります.
(追記)
IPF患者においてフォロー中にANCAが陽性化し, MPAを発症するということを指摘, 論文を紹介していただきました.
(BMJ Open Resp Res 2015;2:e000058. doi:10.1136/bmjresp-2014-000058)
日本で診断, フォローされたIPF 504例を後ろ向きに解析
・初診時にANCA陽性であったのは,
MPO-ANCAが20例(4.0%), PR3-ANCAが16例(3.2%)
・フォロー中にANCAを再評価されたのが264例で, 5.03年間[3.11-8.07]のフォロー期間において, 陽性化を認めたのが
MPO-ANCAが15例(5.7%), PR3-ANCA 14例(5.3%)
・陽性化率はそれぞれ13.10, 12.23/1000pt-y
・MPO-ANCA陽性化のリスク因子はRF陽性(HR 3.44[1.03-11.4]), ESR ≥40mm/h(HR 3.36[1.10-10.3])
・全経過でMPO-ANCAが陽性であった35例中, 9例でMPAを発症
全例でPSL投与されていなかった患者群.
PSLを使用していた患者ではMPA発症例はなかったが, 有意差は認めず
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IPFでは経過中に慢性的な抗原の暴露(おそらく経気道?)によりANCAが陽性化し,
MPAを発症する例がありそう、という解釈になる.
初期評価で陰性でも, その後の経過で血管炎については注意しておいた方が良いかもしれない.