症例: 80歳代男性. 1ヶ月前からの全身痛、発熱、体重減少.
特に既往のない男性. 1ヶ月前より股関節, 膝の疼痛が出現. その後肩関節, 肘, 手関節の疼痛も出現し, 指DIPの疼痛や朝2-3時間持続する強張りが出現した.
1ヶ月で体重は3kg低下, 37度台の発熱も持続.
この経過よりPMRや高齢発症RA, 心内膜炎を考慮し, 精査をしたところ,
血液培養陰性. 心雑音なし
ANA陰性、抗CCP抗体陰性、RF陰性、ANCA陰性
血沈 >140mm/h
とPMR。。。と思いきや,
TP 8.2g/dL, Alb 2.4g/dLとTP/Alb乖離が著明.
さらに精査をすすめると, IgG 3600mg/dL, IgM, IgAは抑制され低値
FLC κ/λ比 32と著明に開大し, BJP陽性.
腎障害や貧血, 高Ca血症, CTで見える範囲の骨病変なし.
これら所見より,
IgGκ型の(くすぶり型)多発性骨髄腫 + ALアミロイド関節症と判断し, マルク予定とした.
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多発性骨髄腫では関節症状を伴うことは稀.
伴う場合は, クリオグロブリン血症, IgM型MM, そしてALアミロイドーシスを考慮する.
・MMではアミロイドの関節沈着によりRA様の関節症状を呈することがあるが, RA患者でMMのリスクが上昇することはない (PLoS ONE 9(3): e91461. doi:10.1371/journal.pone.0091461)
MMに伴うアミロイド関節症101例の解析
(Seminars in Arthritis and Rheumatism 43 (2013) 405–412)
・MM診断前に関節炎を認めた症例が63例. 33例が初期にRAと診断された
・他の症状は,
体重減少, 倦怠感, 手根管症候群, 巨舌, 軟部組織病変など.
・どれも頻度は1/3まで
関節炎は多関節炎が多い. 強張りの合併頻度も高い
・関節炎の期間は1-84ヶ月と様々
・ANA, RF, ACPA陽性率は低い
関節炎〜MM診断までの期間(A)
罹患関節数(B)
罹患関節(C)
MM+アミロイド関節症患者における各所見の感度.
・巨舌, 手根管症候群, Shoulder pads,
高Ca血症
低ガンマグロブリン血症
腎障害
関節周囲の骨病変
BJタンパク
・上記いずれかを認めるのが91%
治療に対する関節症状の反応性
・化学療法に対しては中等度~良好な反応を示す例が多いが,
DMARDやNSAID, ステロイド投与に対しては反応は様々
MMにおいて, 初期にSeronegative RAと判断された症例Review
・小~大関節まで様々. 軸関節もあり
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ALアミロイドーシスではRAやPMRに類似する病態を呈することがある
血清陰性RAやPMRにおいて, TP/Alb乖離や低Ig, Ca高値, 腎障害, 巨舌, 手根管症候群などなど認める場合や, 治療への反応が不良な場合はALアミロイドーシス+MMも念頭においておくとよいかもしれない.