まだ診断はついていませんが...
70台男性. 急性経過の認知機能障害, 手足・舌のミオクローヌス様運動
数日〜1週間程度の経過で増悪した上記症状にて受診. 小脳失調は認めない.
色々鑑別した結果,
髄液: リンパ球優位の細胞数増多(10-30程度), 蛋白増加
髄液細胞診陰性
頭部MRI正常
血液培養、髄液培養陰性(抗酸菌含む). Tau蛋白陰性, HSV-PCR陰性
T-SPOT陰性
一般的な自己抗体は陰性.
抗甲状腺抗体陰性
腫瘍精査では何も引っかからず。
病歴や所見, 検査は長くなるので端折ります
ミオクローヌスが目立ったことから, CJDを鑑別にいれつつ精査, フォローしましたが、診断つかず, 精査の数週間で状態は増悪.
尿閉, 起立性低血圧といった自律神経症状も出現した.
感染症の可能性は乏しく神経内科相談の上mPSLパルスを施行すると, 明らかに反応があり改善傾向を認めた.
という経過. その後IVIGを施行.
この経過からLGI-1抗体がでるのではないかと精査中(結果未)
さて, CJDに類似した自己免疫性脳症でPubmedを漁ると, VGKC抗体脳炎と橋本脳症がよく引っかかる.
CJDを疑われた346例で細胞表面抗体を評価したところ, 6例で陽性.
・CASPR2抗体, LGI-1抗体, NMDAR抗体, AQP4抗体, Tr抗体, 不明が1例ずつ
・ただし, これら6例はどれもCJDの診断基準(possible, probable)は満たさなかった.
(JAMA Neurol. 2014;71(1):74-78. )
初期にCJDと判断され, 最終的に自己免疫性脳症であった8例中, 6例はLGI-1抗体陽性例, 2例がCASPR2抗体陽性例.
(Journal of Neuroimmunology 295–296 (2016) 1–8 )
・LGI-1抗体とCASPR2抗体 = VGKC抗体
・上記8例と, CJD19例を比較
・ミオクローヌスはCJDで, ミオクローヌス様運動は自己免疫性脳炎で認める.
・自律神経障害も自己免疫性脳炎で認める所見
VGKC抗体脳炎で認められるMyoclonus-like symptomをMyoclonusと判断され, CJDを疑われる場合が多い.
・CJDにおけるMyoclonusは感度が高い所見ではあるものの, CJDの中期~後期で多く出現する症状.
一方で, Myoclonus-like symptomは自己免疫性脳炎の早期に認められる症状であり, 病初期で認められる場合はCJDよりも自己免疫性脳症を疑うべきかもしれない.
また, 橋本脳症もCJDに類似する報告があり,
(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1999;66:172–176 )
・急速進行性の認知症, ミオクローヌス, 精神症状, 失調など症状が類似している
・てんかん発作や局所症状はCJDでは稀
変動性の経過もCJDらしくないと言える.