80歳台男性. 自己免疫性疾患も疑う病状であったため, 自己抗体, 補体, 免疫グロブリンなどチェックしたところ, CH50のみ低い結果が. C3,4は正常範囲. これはどう解釈したら良いだろうか? 次の一手は?
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補体低下の原因は以下を参照.
機序
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免疫複合体の形成
C3,4双方が低下(Classical pathway) |
SLE, MPGN, クリオグロブリン血症(I-III)
糸球体腎炎や血管炎を呈する慢性感染症 感染後糸球体腎炎, リウマチ性血管炎, 特発性血管炎, Serum sickness, 薬剤性ループス, 薬剤過敏性症候群, 化学療法, 甲状腺疾患, Jejunal ileal bypass, B細胞性リンパ増殖性疾患 |
免疫以外の原因
主にC3の低下(Alternative pathway) |
動脈硬化性塞栓症, HUS/TTP, 重症敗血症, 重度の低栄養, 肝不全, 急性膵炎, 先天性の補体経路異常, 熱傷, 急性心筋梗塞, 造影剤使用, 透析, Cardiopulmonary bypass, マラリアによる溶血発作, 全身性ウイルス感染症, ポルフィリア
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検査ではC3,C4,CH50がコマーシャルベースで評価可能であり,
・C3, C4は血中に最も多く存在する補体成分で主に肝臓で産生される.
・CH50は50% hemolytic complement activityを示し, 一定の赤血球を50%溶血させるのに必要な補体活性. 補体全体を反映する
基本的にC3もしくはC4低値ならばCH50も低下するが,
C3,C4正常でCH50低下の場合はCold activationと他の補体成分の欠損を考慮する
・Cold activation: 採血後低温にすると補体が活性化する現象
HCVやクリオグロブリン血症に関連する.
上記評価には37度に維持して評価, もしくはEDTA血漿を用いて再評価し, 正常化を確認
(Journal of Clinical Immunology 1992;12(5):362-370)
補体のCold-Dependent Activation(CDAC)
・補体成分は正常, 37度血清やEDTA血漿で評価したCH50は正常だが, 通常の検査にてCH50が低値となる現象
リウマチ性疾患 170例において, 補体を評価した報告では, 19例で持続的な補体低下が認められた.
(Clin Exp Immunol 1997; 107:83–88 )
・このうち9例でCDACと判断
・リウマチ性疾患間でCDACリスクは同等
・有意差を認めるのはリウマチ因子とHCV
ということで, EDTA血漿で再評価+HCVを評価すると, HCV抗体陽性との結果. かなりCDACが疑わしい状況と言える.
ところで, もし補体欠損であったらどうなのだろうか?ということも気になったのでサラッとだけ触れる.
日本人で多い補体欠損はC9欠損
(Int Immunol. 1989;1(1):85-9.)
・大阪の献血データ 145640件において補体を評価した報告では, 138例でC9欠損が認められた. これら症例のCH50は13.1±3.0U/mL
・頻度としてはC9欠損は0.095%
他のC5-C8の異常は0.011%
・CDACによるCH50低値は657件. 0.451%であった.
補体欠損とリスクとなる感染症, 関連疾患
・一部ではSLEやSLE様症候群を呈する.
・C5-C9では髄膜炎菌による髄膜炎, 敗血症リスク
・C9欠損は日本人で多いとの記載がある.