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2018年5月17日木曜日

ICS維持投与の前にICS+LABA頓用?

SMART療法はICS+LABAを維持療法+リリーバーとして使用する使用法であるが,
ICS維持投与を必要とする軽症喘息に対してICS+LABAをリリーバーとしてのみ使用する治療法を評価したRCTがNEJMより発表されました.

SMARTならぬSRTになるのか?
(SMART: Single combination budesonide-formoterol inhaler Maintenance And Reliever Therapy)

SYGMA1: N Engl J Med 2018;378:1865-76.
軽症喘息症例3849例を対象としたDB-RCT
・患者は12歳以上で, ICSLeukotriene-R阻害薬の定期使用が必要となる患者群を対象.
 (GINA2012で診断, Step 2の治療が適応となる患者群)
・Terbutaline頓用吸入群(SABA)
 Budesonide-Formoterol頓用群(200/6µg)
 Budesonide 200µg 12回吸入+Terbutaline頓用群 に割付け52wk継続.
 喘息症状, 夜間症状, 重症喘息発作頻度, FEV1などを比較

B-Fはシムビコート® (ただし国内では160/4.5µgと量が異なる)

母集団データ

アウトカム
・喘息のコントロール良好(週あたりの良好な期間)B-F頓用群で34.4%, SABA頓用群で31.1%, OR1.14[1.00-1.30]有意にB-F頓用群で良好となる
 ただし, 最も良いのはBudesonide維持療法 44.4%, OR 0.64[0.57-0.73]

喘息発作リスクはB-F頓用とBudesonide維持で同等


SYGMA2: N Engl J Med 2018;378:1877-87.
軽症喘息症例4215例を対象としたDB-RCT.
・患者は12歳以上で, ICS定期使用の適応がある患者を対象.
 (GINA2012で診断, Step 2の治療が適応となる患者群)
・Budesonide-formoterol(200µg, 6µg)を頓用群
 Budesonide 200µg 12回吸入群+terbutaline頓用に割付け, 52wk継続
 重症喘息発作リスクを比較.

母集団データ

アウトカム
重症発作のリスクは両者で有意差なし: RR0.97[0.78-1.20]


FEV1の変化はB-F頓用群でより少ない.
・ACQ-5スコアはBudesonide定期群でより低下(症状の改善)を認める

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・SABA頓用で対応困難でICS維持投与を必要とする軽症喘息では,
 ICS維持の前にICS+LABAの頓用療法も考慮してもよいかもしれない.
・ICS+LABAの頓用ではICS維持と比較して喘息発作頻度の改善効果は同等.
 自覚症状はICS維持療法の方がより改善が見込める

・喘息には発作を来たしやすいサブタイプがあり(EPA: exacerbation-prone asthma. Am J Respir Crit Care Med Vol 195, Iss 3, pp 302–313, Feb 1, 2017), そのような場合やアドヒアランスの関係で定期吸入が難しい患者では選択肢の一つとして覚えておくとよいかもしれない.