長年シェーグレン症候群として対応, 治療されていた患者.
同時期から糖尿病もあり. 最近コントロールも不良となってきている.
腹部CTでは, 膵臓のびまん性腫大もあり。。。これって実はIgG4関連疾患による自己免疫性疾患(AIP)+ミクリッツ病では? という疑いのもと, 再度精査したら結局AIP+ミクリッツ病+糖尿病であったというオチ. という架空の症例.
さて, この患者でステロイド投与はどうなんでしょうか?
DMに対して悪影響なったりしないだろうか?
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*ここでのAIPはtype1 AIP(IgG4関連)としています
AIPでは膵外分泌腺障害, 内分泌障害も高頻度で合併.
・膵外分泌腺障害は83-88%, 糖尿病は42-78%で合併する.
国内でAIP+DMと診断された102例の解析では,
(Journal of Digestive Diseases 2011; 12; 210–216)
AIP診断前にDMを診断されたのが35例(A)
AIPとDMがほぼ同時に診断されたのが58例(B)
AIP診断後にDMを診断されたのが9例(ステロイド開始後)(C).
DMの治療内容: 半数でインスリンを必要としている
AIP+DM患者に対するステロイド治療はどうするか?
AIPの治療はステロイド投与が基本.
・PSL0.6mg/kg/dを2-4wk継続し, その後減量 大体3-6ヶ月で終了もしくは<10mg/dで維持.
・AIPでは開始後2週間以内には反応を示す.
ステロイド無しでも24-75%は自然寛解を示す.
・自然寛解する例では, 症状が軽く, IgG4が比較的低値.
・軽症ならば経過観察するのも手.
・ステロイド投与の方が寛解までの期間も短い. 寛解率も高い(98% vs 74%)
(Curr Opin Rheumatol 2011;23:67-71)
AIP患者 607例中, 97例がステロイド投与せずに経過観察となった.
このうち54/97(55.7%)で一過性の寛解あり.
(J Hepatobiliary Pancreat Sci (2018) 25:223–230 )
・経過観察された群は全体的に軽症例が多い
・経過観察群において再燃のリスクとなる因子は新規発症DMと他臓器障害の合併
ということで今回の症例では経過観察で改善するとも思えず, やはり免疫抑制は考慮する必要がありそう
AIP+DM患者におけるステロイド治療でDMはどうなるか?
AIP+DM患者 30例(同時期に出現が17, AIP後DMが増悪したのが13例)において, ステロイド治療を開始した報告:
(Gut and Liver, Vol. 6, No. 4, October 2012, pp. 501-504 )
・投与開始3ヶ月後の評価では, 半数以上でDM改善を認めるが, 1割弱で増悪する可能性もある.
日本国内におけるCohort:
(Pancreas 2006;32:244-248)
・AIP患者167例中, 66.5%でDMを合併.
・AIPに関連したDMと判断された93例中, AIPと同時期に出現したのが52%, DMが先行した症例が33%.
AIP+DM症例における, ステロイド開始後のDMコントロールの変化
・ステロイド開始後にDMが改善傾向であったのは3-5割程度
増悪例が1-2割で認められる.
・インスリン使用例も改善する可能性がある.
AIPに対してステロイドを開始され, 12ヶ月以上フォローした47例を評価した報告
(Pancreas 2012;41: 691-695)
・このうち33例がAIP診断時にDMを合併(DMが先行したのが8, 同時期25)
・PSLは30-40mg/dで2-4wk継続し, その後2wk毎に5mg減量し, 10mg/dへ
以後は2.5-7.5mg/dで維持
・DMは専門医によりフォロー
・耐糖能の変化の定義はTable 1
DMの経過
・ステロイド開始後, DM, 耐糖能障害は一部で改善
・特にAIPと同時期にDMを診断された症例では改善が見込める.
ただし増悪する可能性もあり.
・HOMA-β, HOMA-Rの変化は16例で評価され, 改善が見込める例が多い
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自己免疫性膵炎に合併するDMでは, ステロイド治療により耐糖能障害の改善が得られる可能性がある.
半数程度は改善が見込めるが, 一方で増悪する可能性もあるため注意.
またDMを合併するようなAIPでは自然寛解するリスクも低く, PSLは考慮すべきだろう