シガテラ中毒: Ciguatera Fish Poisoning(CFP)
シガテラ中毒は主にサンゴ礁域で毒化した魚を摂取することで生じる中毒症
・シガトキシン(Ciguatoxin)は底生性渦鞭毛藻(Gambierdiscus toxicus)とその近縁種により産生され, 藻食魚 → 肉食魚と蓄積する
毒素は加熱や冷凍で不活化されずに残存.
・主に熱帯・亜熱帯域で多いが, 地中海でもGambierdiscus属が確認されている.
日本国内では沖縄で多い.
九州~関東からの報告もあり, 太平洋沿岸域のイシガキダイが原因と考えられている
(食衛誌 2013;54(6):385-391)
国内のシガテラ中毒の季節性と地域
・毎年1-8件程度報告されている. その9割が沖縄
・原因となる魚類とその中毒発生の場所
(食衛誌 2012;53(2):105-120)
沖縄ではしばしばアウトブレイクも生じる
(Toxicon 56 (2010) 656–661)
・1997-2006年に33回のアウトブレイクを認め, 103例のシガテラ中毒例が報告されている
・アウトブレイクの原因魚
シガテラ中毒の症状
症状は消化管症状, 神経症状, 心血管症状がある
(Mar Drugs. 2017 Mar 14;15(3). pii: E72. doi: 10.3390/md15030072.
An Updated Review of Ciguatera Fish Poisoning: Clinical, Epidemiological, Environmental, and Public Health Management.)(N Z Med J. 2016 Oct 28;129(1444):111-114.)
消化管症状: 摂取後6-12時間以内に出現し, 1-4日持続.
・悪心嘔吐, 腹痛, 下痢は早期に出現する
ただし, 全例で認めるわけではない
神経症状: 末梢神経症状は摂取後2日以内に生じる
・末梢神経症状: 感覚障害, そう痒感, 筋肉痛, 関節痛, 金属味, 頭痛, めまいなど.
古典的に温度感覚の逆転が認められる(冷刺激を焼けるような痛みと表現するなど)
・神経精神症状: 摂取後数日~数週後に顕在化
不安や抑うつ, 記憶障害, せん妄, 失調, 昏睡などの報告がある.
これら神経症状は数週~数カ月持続する.
心臓血管障害: 早期に出現
・消化管症状や末梢神経症状と同時期に出現する
・低血圧, 徐脈は最も致命的となる障害.
毒素摂取後早期に生じ, 集中治療を必要とする
他の食事や運動で症状が再出現することもあり
症状の報告のまとめ
シガテラ中毒の診断, 治療
診断は臨床診断となる
・消化管症状, 神経症状, 心血管症状を認める患者が流行地域で原因となり得る魚類を摂取した病歴があれば疑う
・特異的な検査やLab変化はない
鑑別疾患として, 他の魚介類による神経障害やGBSが挙げられる
治療は対症療法, 全身管理
・徐脈に対してはβ刺激薬や一時的体外ペーシング
・低血圧には補液や昇圧薬などを使用
・一時期神経症状に対してマンニトールが使用されていたが,DB-RCTにて効果は否定された(Neurology. 2002 Mar 26; 58(6):873–80.)
・ガバペンチンやアミトリプチリンは痺れや疼痛に対して使用されることがある.