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2014年12月2日火曜日

Non-Thyroidal Illness (NTI)

Non-Thyroidal Illness (NTI)

重症患者ではrT3が上昇し, T4, T3が低値となる. TSHは反応せず, 正常範囲であることが多い
 これをNon-thyroidal illness(NTI)と呼ぶ.
 別名, “Sick euthyroid syndrome” “Low T3 syndrome”
 全身疾患や低栄養状態では, deiodinate type-1(D1)が低下し, deiodinate type−3(D3)が増加する.
 D1はT4 → T3の変換に関与し, D3はT4 → rT3への変換に関与.
 従ってNTIではrT3が上昇し, T3が低下する反応が生じる.

 また飢餓状態ではTSH分泌も低下.(Leptinの低下が影響)
Thyroid 2014;24:1456-1465
Lab Medicine 2010;41:338-348

NTIにおける甲状腺ホルモンへの影響 Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes 2013, 20:478 – 484 

NTIにおける甲状腺ホルモンの動態
外科手術後ICU入室となった患者での初期の甲状腺ホルモン値とDay 3での変化
(PNの開始時期を比較したRCTより) (J Clin Endocrinol Metab 98: 1006–1013, 2013) 
入室時のホルモン値

正常値
ICU入室時
TSH(mIU/L)
0.17-4.05
0.95
T4(nmol/L)
60-160
46.1
T3(nmol/L)
1.2-2.8
0.44
rT3
0.11-0.44
0.50
入室時すでにrT3が高く, T3が低値. その後さらにその差が顕著となる.
早期栄養にてTSH, T4も上昇を認める

NTIの急性期と慢性期の違い Thyroid 2014;24:1456-1465
 NTIの慢性期にはT4も低下する.
 TSH分泌も抑制.
まとめると
甲状腺ホルモン
急性期 初期
急性期 栄養あり
急性期 栄養無し
慢性期
TSH
→ or ↑
T4
→ or ↑
T3
↓↓
→ or ↓
↓↓
↓↓
rT3
↑↑
↑↑
→ or ↑

このような動態をとる.
測定のタイミングによっては中枢性甲状腺機能低下症様になったり, 甲状腺機能亢進症様になったり, 甲状腺機能低下症様になったりする.

また, ドパミン投与中ではTSH分泌は抑制され, ドパミン終了後に反発性に上昇することがあるのでそこも注意. Thyroid 2014;24:1456-1465

薬剤や急性期疾患の状態、栄養の状態を考えながら甲状腺ホルモンの値を考察する必要がある.
難しいならば判断は置いておいて、時間を空けて再評価すれば良いだけ。