Clinical Infectious Diseases 2011;52(6):788–792
好塩性のGNRで, 海水に生息する細菌. 魚介類摂取にて感染し, 重症感染症を来す.
蜂窩織炎, 血性の水疱形成, 敗血症を呈し, 死亡率は50%に及び, 米国では毎年100例の報告, 50例が死亡.
Vibrio vulnificusは軟体生物に常在.
カキや二枚貝, ムール貝, 甲殻類等.
Vibrio属はChitinaseを産生. ⇒ キチンを破壊し, 甲殻類の外骨格に生息可能.
感染症の大半が生ガキ摂取に伴うもの.
カキ自体はSalmonella enterica serotype Typhiや, HAVなどの媒介となるが, V. vulnificusは最も重症な病原体.
カキ自体はSalmonella enterica serotype Typhiや, HAVなどの媒介となるが, V. vulnificusは最も重症な病原体.
V. vulnificus感染は夏場に多い.
菌体自体は年中海水に存在するが, 夏場に増殖する.
感染には一定以上の菌量が必要である可能性.
感染には一定以上の菌量が必要である可能性.
最も増殖する海水温は>22度.
肝硬変はV. vulnificus感染の高リスク.
免疫機能の低下のみならず, 門脈圧亢進があると腸管から血流への菌移行が生じ易い.
また, 増殖に鉄を使用するため, 肝硬変患者でフェリチン値が高い場合はさらにHigh-riskとなる.
リスク因子 Am Fam Physician 2007;76:539-44
V. vulnificus感染症では外毒素が血管壁を破壊する.
播種性感染における局所の腫脹, 皮下出血の原因となる.
敗血症で軟部組織所見が顕著の場合はV. vulnificusを疑う必要あり.
V. vulnificus感染症の臨床経過
臨床経過は3タイプ.
創傷感染症 45%
菌血症 43%
腸管に限局した感染症 5%
非典型的なものとして, 髄膜炎, 腹膜炎, 角膜潰瘍, 骨髄炎, Otitis, 尿路感染症, 筋炎, 横紋筋融解の報告例がある.
菌血症の96%に7日以内の生ガキ摂取歴あり.
平均年齢は54歳. 89%が男性例.
慢性肝障害ある患者群では, 通常の感染症のリスクは80倍に上昇するが, V. vulnificus感染症のリスクは200倍にもなる.
創傷感染症ではしばしば壊死性病変となる
開放創がある状態で暖かい海水に暴露することで感染.
壊死性筋膜炎を発症する.
溶連菌, S aureusなどと並んで重要な起因菌.
溶連菌, S aureusなどと並んで重要な起因菌.
創傷感染症での死亡率は15%程度.
腸炎はSelf-limited. 予後も良好.
V. vulnificus感染症62例の解析 Ann Intern Med 1988;109:318-323
Floridaにおける1981-1987年に診断した62例.
敗血症が38例(61%), 創部感染が17例(27%), 腸管感染が7例.
症状, 所見頻度は,
症状, 所見 |
敗血症 |
創部感染 |
腸管感染 |
全身症状 |
100%[91-100] |
71%[46-96] |
71%[30-100] |
発熱 |
92%[77-96] |
65%[39-91] |
57%[13-100] |
悪寒 |
53%[36-69] |
29%[4-54] |
43%[0-87] |
意識障害 |
50%[34-60] |
18%[5-45] |
0[0-44] |
低血圧 |
32%[18-49] |
12%[0.05-38] |
0[0-44] |
消化管症状 |
71%[55-86] |
12%[0-38] |
100%[65-100] |
下痢 |
42%[25-59] |
6%[0-31] |
100%[65-100] |
腹痛 |
34%[18-50] |
0[0-23] |
100%[65-100] |
嘔吐 |
42%[25-59] |
6[0-31] |
29%[5-70] |
皮膚症状 |
61%[44-78] |
88%[62-98] |
0[0-44] |
蜂窩織炎 |
50%[33-67] |
88%[62-98] |
0[0-44] |
水疱形成 |
37%[21-53] |
41%[15-67] |
0[0-44] |
斑状出血 |
32%[16-48] |
18%[5-45] |
0[0-44] |
基礎疾患 |
敗血症 |
創部感染 |
肝疾患 |
66%[50-82] |
12%[0-38] |
慢性疾患(肝臓以外) |
63%[47-79] |
35%[9-61] |
肝疾患+慢性疾患 |
95%[81-99] |
35%[9-61] |
7日以内の創傷の海水への暴露 |
0[0-11] |
88%[62-98] |
7日以内の生ガキの摂取歴 |
92%[77-96] |
0%[0-23] |
暴露歴は陽性の場合が多い.
敗血症症例における抗生剤投与までの時間と死亡率
Abxまでの時間 |
死亡率 |
<24h |
33%[2-64] |
24-48h |
53%[26-80] |
48-72h |
63%[24-99] |
>72h |
100%[39-100] |
抗生剤投与無し |
100%[74-100] |
全体 |
57%[41-73] |
季節性; 夏場, 海水温が高い時期に多い.
冬場の発症は稀.
暴露の機会と, 菌量がある程度感染には必要のためと言われている.
暴露の機会と, 菌量がある程度感染には必要のためと言われている.
V. vulnificus感染症171例の解析; American Journal of Emergency Medicine 31 (2013) 1037–1041
死亡例が43例.
死亡に関連した因子を評価すると,REMS, 肝疾患, 血疱が死亡リスクに関連する.
死亡に関連した因子を評価すると,REMS, 肝疾患, 血疱が死亡リスクに関連する.
早期の手術は死亡リスクを軽減させる
*REMS; Rapid Emergency Medicine Score
MEDS; Mortality in Emergency Department Sepsis
ScoreとV. vulnificus感染症の死亡に対する 感度, 特異度
V. vulnificusの治療
発症24hr以内の抗生剤投与が重要.
24hr以内の投与群では死亡率33%であるが, 24-48hでは53%, >72hでは100%に及ぶ.
抗生剤はDOXY + Deftazidime
DOXYは100mgを1日2回, IVもしくは経口
Deftazidime 1-2g q8hr, もしくは他の3rdセフェムが選択される.
抗生剤の早期投与と創傷の治療, ICU管理が重要.
他の選択肢として, CPFX 750mg bid or 400mg IV q12hが選択される
肝硬変患者は感染予防として海水暴露, 生ガキの摂取には注意すべきといえる.
Am Fam Physician 2007;76:539-44