ページ

2014年8月25日月曜日

腎梗塞 Renal infarction

腎梗塞について Am Emerg Med 2007;25:164-9

ER受診患者の0.007%程度と稀な疾患.
 尿路結石や他の腹痛疾患と同様のプレゼンテーションで来るため, しばしば鑑別が必要となる.
 発熱, 腰痛で発症する等, 急性腎盂腎炎と類似していることもある
 また, 他の疾患の精査中に偶然発見されるCaseも多い.
 尿路結石を疑わせる症状で, 水腎症(-), AAA(-)ならば腎梗塞を疑う.
 透析へ移行する例が0-5%, 死亡例が13%あり, 注意が必要
腎梗塞例の報告
Risk Factor
腎梗塞20*1
38名の中国人*2
10名のStudy*3
年齢, 男性
60.3yr[21-80]
60.8yr[21-91], 男性76.3%
67.4yr(30-87)
高血圧
65%
47.4%

腹部大動脈の動脈硬化
50%


Af
50%
44.7%
60%
血栓症の既往
25%


弁膜症
20%
21.1%(+ IE)

凝固異常症
10%


Etiology



心原性
75%


凝固異常症
10%


腎動脈解離
5%
Rare

特発性
10%


Symptom



腹痛
85%
57.9%

鼠径部通
85%
50%
100%
腹痛 or 鼠径部痛
95%
84.2%

Lab data



LDH上昇
95%, 812.1 ± 569.4U/L
92.1%, 707 ± 555.2U/L
100%, 1570 ± 703U/L
U-prot
80%で陽性
76.3%

U-RBC
45%で陽性
52.6%





*1;Am Emerg Med 2007;25:164-9
*2;Ann Acad Med Singapore 2008;37:416-20
*3; IMAJ 2002;4:781-4
Af + 腎梗塞 44例の解析 Medicine 2004;83:292–299
イスラエルでの調査; 男性例21例. 平均年齢69.5±12.5y. 血栓症の既往があったのは16%.
 来院時に診断できたのは40%のみ.
 症状頻度; 
症状
頻度


腹部全体の腹痛
68%
発熱
41%
鼠径部痛
32%
腹痛+発熱
7%
右上腹部痛
7%
鼠径部痛+発熱
14%
嘔吐
43%
乏尿
7%
 血液検査, 尿検査所見
血液検査
入院時
フォロー
BUN(mg/dL)
52.71(34.5)
70.8(61.72)
Cre(mg/dL)
1.79(1.66)
2.43(3.37)
LDH(U/dL)
1100.1(984.6)
908.1(537.3)
LDH>400U/dL
93%

AST(U/dL)
99.8(195.1)

ALT(U/dL)
91.1(139.6)

CPK
245.5(317.0)

尿検査

血尿
54%
蛋白尿
45%
1999-2009年に腎梗塞と診断した38例と, Case reportでの報告例127例の解析
American Journal of Emergency Medicine (2012) 30, 10551060
 平均年齢は51.7歳[24-80], 女性患者は51.7-55%と男女差はほぼ無し.
 症状, Lab, 梗塞の原因頻度は,
症状
頻度
Lab所見
頻度
原因
頻度
鼠径部痛
92.7%
LDH上昇
95%
Af
61%
腹痛
54%
Cre上昇
44%
過凝固
6%
悪心/嘔吐
60%
血尿
64%
心内膜炎
3%
発熱
47.3%
タンパク尿
48%
15%
昏迷
26.1%


不明
15%
下痢
1.8%




呼吸苦
1.8%




胸痛
1.8%




各報告の詳細

腎梗塞の症状
腎梗塞では発熱を約半数で認める. 腹痛や鼠径部痛は6-9割.
 尿管結石様の症状に発熱が加わる,
 また, 腎盂腎炎の症状の割には膿尿が無い, といったことで疑うことが可能だが, 感度は低い.

腎梗塞のLab test
腎梗塞ではLDHの単独上昇を認めることが多く, AST,ALTは上昇しない or 軽度上昇程度であることが主.
 LDHは1000前後であることが多い.

腎梗塞の診断には尿中LDH, ALPが有用である可能性がある.
 尿中LDH(正常値 0-15U/g Cre), 尿中ALP(正常値 0-13U/g Cre)
(CMAJ 1965;93:1101-5) しかしながら, 尿中LDH, ALPは他の疾患でも上昇を示すため, 特異性は高くない (CMAJ 1969;101:208-15)
疾患
尿中LDH異常
尿中ALP異常
腎癌
75%
62%
膀胱癌
63%
43%
前立腺癌
62%
35%
尿路外腫瘍
18%
68%
慢性糸球体腎炎
38%
69%
腎実質性高血圧症
70.6%

本態性高血圧
5.9%


腎梗塞の画像検査
腎梗塞の診断は造影CT検査, 血管造影がGold standardとなる.
腎実質の楔形の造影不良領域や多発性の造影不良域, 腎全体の造影不良パターンをとる.
American Journal of Kidney Diseases, Vol 52, No 4 (October), 2008: pp 788-791

しかしながら楔状の造影不良, 多発性の造影不良は腎盂腎炎でも同様の所見が生じるため, 特異的とは言い難い.
腎梗塞に特異的な所見として, Cortical rim signがある.

Cortical rim sign CMAJ 2010;182:E313
 腎動脈閉塞が生じても側副血行路により腎の辺縁は血流が保たれる
 造影CTを行うと造影されない腎実質とその周囲に造影される領域がありそれをCortical rim signと呼ぶ.
 急性腎梗塞の50%程度で認められる所見. 特に腎臓全体の虚血で多い所見.


腎不全で造影困難な場合はMRI-DWIが有用な可能性がある.
DWIでは梗塞部位がHighになる. ただし, 腎盂腎炎や腎膿瘍との鑑別は難しい.
American Journal of Kidney Diseases, Vol 52, No 4 (October), 2008: pp 788-791