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2014年9月27日土曜日

Chronic Venous Insufficiency 静脈不全, 静脈瘤(2014/9/27 Up Date)

Chronic Venous Insufficiency 慢性静脈不全, 静脈瘤について
(NEJM 2009;360:2319-27)

Chronic Venous Insufficiency 静脈不全
 Primary(nonthrombotic), Secondary(post-thrombotic)があり, 両方とも静脈の閉鎖 and/or 逆流を伴う.
 美容的問題(色素沈着など)~潰瘍形成まで幅広い症状を来す. 最も多い症状は下腿の浮腫.
 女性, 高齢者に多く, 妊娠により増悪
 静脈不全による組織傷害 
  ⇒ サイトカイン誘発し, 静脈周囲の炎症
  ⇒ Lymphatic dysfunctionを1/3で認める

静脈瘤
 静脈壁の脆弱化により生じる
 壁全体が脆弱化するため, 再発は多い
 大伏在, 小伏在静脈, その分枝で生じることもあり.
 静脈内径の拡大により, 弁不全を合併する.

下肢静脈の構造は3つに分類
 表在静脈, 深部静脈, 穿通静脈
 どの静脈が侵襲されるかで症状も異なってくる.
 一部のみの障害では無症状であるが, 多数の病変で症状出現.
 大腿膝窩静脈弁の障害は最もSevereとなる.

腸骨静脈の閉塞
 DVT後の症状残存の主な原因(Post-thrombotic)
 Nonthromboticでは, 腸骨動脈, 下腹動脈との交差部に多い
 動脈拍動による外傷, 刺激が原因と考えられている.
 無症候の一般人口の60%が同部位に病変(+), 症候性ならば90%に病変を認める.
 閉塞を解除しても, 再発率は高く, それ自体が症状誘発となり得る

慢性静脈不全の臨床症状
 下肢の疼痛, 腫脹, 皮膚変化, 潰瘍, Restless leg, 夜間の下肢Crampは一般的な症状.
 下肢疼痛のみ有する例が10%. 他症状はあるが下肢疼痛(-)が20%
 下肢挙上, 弾性ストッキング, 歩行により症状は軽快するのが特徴.

 静脈瘤部位(通常下腿)よりも上部の疼痛がある場合, 伏在静脈, 深部静脈の逆流, 病変が疑われる.
 表在静脈の病変では, 浮腫は軽度で間欠的な足首の浮腫を認める程度.
 足首周囲よりも広範囲な浮腫を認めた場合, 深部静脈病変を示唆する.

 潰瘍は通常内果上部に潰瘍形成をし, 通常無痛性.
 皮膚炎, 色素沈着も下腿下1/3で認めるのが普通.

静脈不全の鑑別診断
特徴 鑑別診断 備考
下肢 間欠性歩行 動脈性間欠性歩行 PADの検査, 運動時のABIを評価

夜間の疼痛 安静時の虚血性疼痛 PADの検査, ABIを評価

起立時の疼痛 坐骨神経痛, 神経根症状,
脊柱管狭窄
身体所見, MRIにて評価可能

腫脹 CHF, 腎疾患, 甲状腺機能低下,
Lymphedema
最初の3疾患を先ず除外.
Lymphedemaとの鑑別は困難
皮膚 色素沈着 黒色表皮症, ヘモジデローシス 静脈性の場合は下肢に限局している

うっ滞性皮膚炎 乾癬, PN, アレルギー性皮膚炎,
その他
皮膚生検にて確定可能

潰瘍 虚血性潰瘍, リウマチ性疾患による潰瘍 虚血性潰瘍は静脈性よりも深部に達する.
壊死性組織も多い.
足底動脈拍動は減弱し, ABIも低下.
基礎疾患としてDM, 動脈硬化を持つ.
リウマチ性では血清学的評価,
他の所見をCheckすべき 


Marjolin’s ulcer, 潰瘍性皮膚癌,
Kaposi’s sarcoma,
壊疽性膿皮症
皮膚生検, 静脈造影にて判別を.
Marjolin’s ulcer;  骨髄炎病巣部周辺の瘢痕組織に通じる膿瘻部上皮から生じる扁平上皮癌.

慢性静脈不全の評価方法
CEAP分類:
 Clinical, Etiology, Anatomy, Pathologyで分類, 表記する方法
Clinical Etiology Pathology
C0 Nothing Ec Congenital Pr Reflux
C1 Spider angioma Ep Primary Po Obstruction
C2 Varicose vein Es Secondary Pr,o Both
C3 Edema of venous etiology Anatomy

C4 Hyperpigmentation, Dermatitis, Lipodermatosclerosis As Superficial

C5 Healed ulceration Ad Deep V

C6 Active ulceration Ap Perforator

表記方法; C5EpAdPr,o といったように表記する.

Venous Clinical Severity Score
Variable 0pt 1pt 2pt 3pt
疼痛 なし たまに,
鎮痛薬使用(-)
日常,
鎮痛薬使用(+)
頻繁,
オピオイド使用
Varicose veins なし 少数, 微かに 多発 大量
Edema なし 夕方に, 足首のみ 午後に, 足首より上部 朝から, 足首より上部
Hyperpigmentation なし 限局 下腿下部1/3を超える 広範囲
炎症, 蜂窩織炎 なし 軽度 中等度 重度
硬化 なし 局所的 下腿下部1/3を超えない 広範囲
Active ulcer 0 1 2 >2
Active ulcer 期間 なし <3mo 3-12mo >12mo治癒しない
Active ulcer なし <2cm 2-6cm >6cm
ストッキングの使用 なし たまに 一日の殆ど 常に
0-30ptで評価.
治療の効果判定としても有用.

画像評価
Duplex US
 上手い技師さんが行えば静脈瘤, 逆流, DVTを評価可能
 直径4mmを下回る穿通静脈の逆流は臨床上有意とはとらない

Venography
 Post-thrombotic Diseaseでは推奨される
 特にInterventionを行う予定の患者では行う.
 腸骨静脈造影の場合はFemoralより造影する必要あり.
 Post-thromboticでは必要だが, 2度手間となる.

慢性静脈不全の治療
初期治療は弾性ストッキングの着用
 約50%(30-65%)の患者において, 皮膚の脆弱, 関節炎, 肥満, 接触性皮膚炎, 疼痛, 動脈性疾患の合併があり, ストッキングを着用できない.
 Cochraneでは, ストッキング着用の方が潰瘍治癒が高いとの報告あり. 圧も高いほど効果的.
 潰瘍治癒後の再発率も, ストッキングありで有意に低くなる(19-34% vs 32-64%)

薬剤治療; Pentoxifylline(ベントキサール®)
 RCTにより結果は様々.
 Metaでは一応潰瘍治癒率は改善 RR 1.3[1.1-1.5]

Ablation
 Angioma, 分枝の静脈瘤は美容目的のAblationが効果的
 伏在静脈のAblationはStrippingに代わる治療法であり, 外来治療が可能との利点がある.
 Meta-analysisによる32moフォローにおける治癒率では, Stripping 78%, Foam sclerotherapy 77%, Radiofrequency 84%, Laser treatment 94%.
 Ablationの副作用は, 3%にDVT, 血腫, 疼痛, 鈍麻が7-15%.

手術療法
 Perforator Vein Interrruption
 Iliac-vein obstructionの治療
 Deep-Valve Reconstruction etc.

Primary varicose vainの798例を対象としたRCT. N Engl J Med 2014;371:1218-27.
 18歳以上の症候性静脈瘤, grade C2以上を対象

 Foam硬化療法, レーザー治療, 外科治療の3群で比較.
 6ヶ月後の疾患特異的QOLを評価.

アウトカム:
アウトカム: 若干外科治療が硬化療法よりもQOL改善が良好. レーザーと外科治療は同等.
治療成功率はレーザーと外科手術が良好.
 硬化療法では6MでのComplete successは40%台. 他の治療では80%台.
 合併症も硬化療法で軽度高い傾向があり, 治療としてはレーザー凝固か外科的治療が推奨される.