12 trialsのMeta-analysisより South Med J. 2000 Feb;93(2):160-7
原因
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頻度
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Peripheral vestibular
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BPPV
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16%[4-44]
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迷路炎
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9%[3-23]
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メニエール病
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5%[0-10]
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その他(薬剤など)
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14%[0-30]
|
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Central vestibular
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脳血管疾患
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6%[0-20]
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脳腫瘍
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<1%[0-6]
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|
その他(MS, 片頭痛)
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3%[0-12]
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Psychiatric
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精神疾患
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11%[2-26]
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過換気症候群
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5%[0-24]
|
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非前庭N, 非精神
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Presyncope
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6%[0-16]
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平衡障害
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5%[0-15]
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|
その他
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13%[0-53]
|
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不明
|
不明
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13%[0-37]
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診療状況
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末梢性
前庭神経症状 |
中枢性
前庭神経症状 |
精神疾患
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非前庭神経
非精神疾患 |
不明
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プライマリケア
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43%
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9%
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21%
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34%
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4%
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救急(ER)
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34%
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6%
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9%
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37%
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19%
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めまいクリニック
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46%
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7%
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20%
|
20%
|
18%
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神経内科
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49%
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19%
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10%
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17%
|
10%
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中枢病変が原因の急性前庭神経症状(Acute estibular syndrome)
Posterior fossaの脳血管イベントが83%を占める.
その内脳梗塞が79%, 脳出血が4%.
多発性硬化症 11%を占める.
それ以外に多発性硬化症(MS)で中小脳脚に病変を認めることがあり, MSも重要な原因.
Posterior fossaの脳血管イベントが83%を占める.
その内脳梗塞が79%, 脳出血が4%.
多発性硬化症 11%を占める.
それ以外に多発性硬化症(MS)で中小脳脚に病変を認めることがあり, MSも重要な原因.
(CMAJ 2011;183:E571-E592)
他の中枢性が6%占める.(腫瘍, Chiari奇形, 術後など)
病歴より中枢性を疑う
前庭神経炎を示唆
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Strokeを示唆
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徐々に発症するめまい
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急性発症のめまい
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めまいの前駆症状複数回認める
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頸部痛, 頭痛を伴わない
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頸部痛, 頭痛を伴う
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複視など神経症状を認める
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年齢<50yr
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年齢>50yr
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他の脳血管障害リスクを認める
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外傷の既往あり
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神経所見異常無し
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HITが正常
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CMAJ 2011;183:E571-E592
2009-2010年に3箇所のERをめまいを主訴に受診した473例の解析. Mayo Clin Proc. 2014;89(2):173-180
平均年齢 56.7±19.3歳, 女性例が60%.
その内 30例(6.3%)が重大な疾患が原因であった;
脳梗塞(14), SAH(2), 腫瘍性病変(7), 脱髄病変(2), 重度の椎骨動脈狭窄(2), ACS(2), 髄膜炎+水頭症(1).
脳梗塞 vs 非脳梗塞の比較
脳梗塞を示唆する所見は
高齢者, CADの既往, 高脂血症, 高血圧症, 継ぎ足歩行困難, 医師の印象 であった.
やはりリスク因子の評価は重要といえる.
中枢性を疑う所見
中枢性の眼振; Downbeat nystagmus; 小脳中心, 尾側, 扁桃の傷害を示唆
Downbeat nystagmusの原因
原因
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頻度
|
原因
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頻度
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梗塞
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25%
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腫瘍
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3%
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小脳変性
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24%
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アルコール性小脳失調
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2%
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多発性硬化症
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13%
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動静脈奇形
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2%
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発達障害/奇形
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12%
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AIDS, 家族性周期性失調
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各1%
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薬剤性
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4%
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Viral encephalitis, 放射線
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各1%
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外傷
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3%
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原因無し
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5%
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その他, 方向交代制眼振, Purely vertical nystagmus, 持続性, 非減衰性眼振 起立不可, 異常肢位局所症状(+), Horners syndrome, Dysarthria, Dysphagia, Diplopia, Dysmetria, 感覚障害, 難治性しゃっくりは, 中枢障害を示唆 (Otolaryngologic Clinics of N Am 2000;33:issue3)
Head Impulse Test(HIT)
前庭機能を評価するTestでVORを評価(Vestibulo-ocular reflex)
患者姿勢; 座位
向かい合い, 検者の鼻を見るよう指示
両手で患者の頭部を保持し, Midlineより20度程度, 素早く頭部を回旋させる.
患者姿勢; 座位
向かい合い, 検者の鼻を見るよう指示
両手で患者の頭部を保持し, Midlineより20度程度, 素早く頭部を回旋させる.
A; 正常: 患者の目線は検者の鼻から動かない
⇒ 前庭機能良好, VOR(+)
⇒ Strokeを示唆. >> HIT中枢パターンと呼称
B; 異常: 患者の目線が一旦検者の鼻から外れる
⇒ 前庭機能異常, VOR(-) >> HIT末梢パターンと呼称
正中から左右に振ると頚を痛めることがあるため, 20度左右に回旋させた状態から正中に戻す, Reversed HITという方法もある. 個人的にはこちらをお勧めする.
Head Impulse Test; 末梢 vs 中枢の鑑別
回転性めまいを主訴にER受診した33名 + 既にStrokeの診断がついている10名でHITを施行 (Reference Standard; MRI, 術者Blind, Strokeは35/43)(Neurology 2008;70:2378-85)
HIT(中枢パターン)/Stroke(+) ⇒ 31/34,
HIT(末梢パターン)/Stroke(-) ⇒ 8/8Neg
HITのStrokeに対するSn 100%, Sp 72%
⇒ HIT(末梢パターン)ならば中枢性のVertigoはほぼ否定可能
回転性めまいを主訴にER受診した33名 + 既にStrokeの診断がついている10名でHITを施行 (Reference Standard; MRI, 術者Blind, Strokeは35/43)(Neurology 2008;70:2378-85)
HIT(中枢パターン)/Stroke(+) ⇒ 31/34,
HIT(末梢パターン)/Stroke(-) ⇒ 8/8Neg
HITのStrokeに対するSn 100%, Sp 72%
⇒ HIT(末梢パターン)ならば中枢性のVertigoはほぼ否定可能
HIT, 方向交代制眼振, Skew deviationの感度, 特異度(Meta-analysis) CMAJ 2011;183:E571-E592
感度
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特異度
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LR(+)
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LR(-)
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HIT末梢パターン
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85%[79-91]
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95%[90-100]
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18.39[6.08-55.64]
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0.16[0.11-0.23]
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PICA, SCA梗塞
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99%[96-100]
|
-
|
-
|
0.01[0.00-0.10]
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AICA梗塞
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62%[35-88]
|
-
|
-
|
0.40[0.20-0.80]
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方向交代制眼振
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38%[32-44]
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92%[86-98]
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4.51[2.18-9.34]
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0.68[0.60-0.76]
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Skew deviation
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30%[22-39]
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98%[95-100]
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19.66[2.76-140.15]
|
0.71[0.63-0.80]
|
AICA梗塞に関しては, HIT異常でも中枢除外が困難...
HITの詳しい解説
眼振の仕組みから
眼振の仕組みから
この時の中枢経路は以下の通り
黄色枠に囲まれた部位で障害が起きると, 前庭眼反射は障害され, 頭位眼球反射に異常が生じる. つまりHITで異常が出る場合は末梢性の障害の可能性が高いことを示唆する.
また, HITを行う際, 左回旋時に異常が生じた場合は左前庭神経, 前庭の障害,
右回旋時に異常が生じた場合は右前庭神経, 前庭の障害を示唆する.
BPPVでは前庭機能障害ではないため, HITは異常とはならず, 正常 = つまり中枢パターンとなってしまう為, HITを行う際はBPPVを除外することが必要となるので注意.
上記部位の異常ということは, 「PICA梗塞で延髄外側の神経線維が障害されれば, HITが末梢パターンの脳幹梗塞となるか?」という問いが生じる.
理論上はなるが, 報告例はかなり乏しい.
2010年のStrokeに1例報告あり, Stroke 2010, 41:1558-1560
53yr女性, HTとDMあり. めまいとふらつきを主訴に受診.
左向きの回旋性眼振を認め, HIT陽性(末梢パターン)であった.
脳幹症状, 麻痺, 感覚障害のいずれも認めず.
左向きの回旋性眼振を認め, HIT陽性(末梢パターン)であった.
脳幹症状, 麻痺, 感覚障害のいずれも認めず.
AICA梗塞ではなぜHITの感度が低いか? (末梢パターンとなるか?)
AICAからは前庭動脈が分岐し, AICA梗塞は末梢性, 中枢性双方の前庭機能障害を生じる.
AICA梗塞でめまいを生じた82例の症状 J Clin Neurol 2009;5:65-73
回転性めまいが主症状 | 80/82(98%) |
Central ocular motor or vestibular signs* | 79/82(96%) |
前庭迷路梗塞 | 53/82(65%) |
蝸牛梗塞 | 52/82(65%) |
前庭, 蝸牛梗塞 | 49/82(60%) |
前庭梗塞, 聴覚障害無し | 26/82(32%) |
前庭梗塞のみで蝸牛障害無し | 4/82(5%) |
蝸牛梗塞のみで前庭障害無し | 3/82(3%) |
回転性めまいを認めない | 2/82(2%) |
聴前庭障害のみで中枢性の症状を認めない | 1/82(1%) |
*片側性の追視障害, 視線運動性の眼振. 注視による方向交代制眼振,
視覚による前庭反応調節の障害.
視覚による前庭反応調節の障害.
これらのデータより, AICA梗塞でめまい+例は6パターンに分類される.
Group | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
N=82 | 35 | 13 | 3 | 4 | 24 | 1 | 2 |
回転性めまいで発症 | + | + | + | + | + | + | - |
聴前庭障害合併 | + | + | - | - | - | + | - |
聴覚障害のみ | - | - | + | - | - | - | - |
前庭障害のみ | - | - | - | + | - | - | - |
聴前庭機能正常 | - | - | - | - | + | - | + |
眼球運動障害合併 | + | + | + | + | + | - | - |
他の神経障害を合併 | + | + | + | + | + | - | + |
前駆症状として聴前庭症状あり | - | + | - | - | - | - | - |
Group 6はAICA梗塞による前庭神経のみの障害.
内耳動脈を絡む場合, 中小脳脚を含む場合に認められ, AICA syndromeと呼ぶ.
内耳動脈を絡む場合, 中小脳脚を含む場合に認められ, AICA syndromeと呼ぶ.
他のGroupでは眼球運動障害, 他の神経障害を合併するため, おそらくは脳梗塞の診断に迷うことは無いと考えられる.
Group 6のAICA syndromeのみ脳梗塞か, 末梢性か診断に迷うことがあるであろう.
AICA syndromeの場合は難聴も伴うため, 回転性めまい+難聴 はAICA syndromeの可能性があるということも覚えておく必要がある.
HITを含んだ複合所見: HINTS
水平HIT, 方向交代性眼振, Skew deviation(斜変位)
HIT; 前記載参照
方向交代性眼振; 末梢性ならば眼振は一方向性. 垂直方向性の眼振も同様だが, 頻度が少ない.
Skew deviation; 左右のVestibular toneのバランスが障害され, 垂直方向の眼球変位が起こる. 眼球位置を合わせようと, 頭位を傾けることもあり
HIT; 前記載参照
方向交代性眼振; 末梢性ならば眼振は一方向性. 垂直方向性の眼振も同様だが, 頻度が少ない.
Skew deviation; 左右のVestibular toneのバランスが障害され, 垂直方向の眼球変位が起こる. 眼球位置を合わせようと, 頭位を傾けることもあり
この3つの所見すべて陰性(HITは末梢パターン)ならば, より高度に中枢性病変が否定できる.
AVS*でER受診し, 1つ以上のStroke Riskを持つ患者101名を対象
(Stroke 2009;40:3504-10)(Prospective)(Stroke 76名, 末梢性25名)
(Stroke 2009;40:3504-10)(Prospective)(Stroke 76名, 末梢性25名)
*Acute vestibular Syndrome(AVS) (回転性めまい, 眼振, 嘔気, Head-motion intolerance, 歩行障害)
Reference standardをMRI, CTで診断された脳梗塞とし,中枢性めまいに対する身体所見の有用性を評価.
Skew deviationは17%に認められたが, 複視を自覚したのは3名のみ
Skew deviationの約60%は延髄, 橋側面の病変による
Reference standardをMRI, CTで診断された脳梗塞とし,中枢性めまいに対する身体所見の有用性を評価.
Skew deviationは17%に認められたが, 複視を自覚したのは3名のみ
Skew deviationの約60%は延髄, 橋側面の病変による
PAVS(25)
|
CAVS(76)
|
NLR central
|
|
頭痛, 頚部痛
|
12%
|
38%
|
0.70[0.56-0.88]
|
重度の体幹失調
|
0%
|
34%
|
0.66[0.56-0.77]
|
垂直, 回旋性眼振
|
0%
|
12%
|
0.88[0.81-0.96]
|
眼球運動障害
|
0%
|
21%
|
0.79[0.70-0.89]
|
3-Step Exam
|
4%
|
100%
|
0.00[0.00-0.11]
|
方向交代性眼振
|
0%
|
20%
|
0.80[0.72-0.90]
|
Skew deviation(+)
|
4%
|
25%
|
0.78[0.67-0.91]
|
h-HIT 正常
|
0%
|
93%
|
0.07[0.03-0.15]
|
Sn
|
Sp
|
NLR Stroke
|
|
General neurological signs
|
19%
|
100%
|
0.81[0.72-0.91]
|
Obvious oculomotor signs
|
28%
|
100%
|
0.72[0.63-0.84]
|
Severe truncal ataxia
|
33%
|
100%
|
0.67[0.56-0.79]
|
Any obvious signs
|
64%
|
100%
|
0.36[0.27-0.50]
|
Initial MRI with DWI
|
88%
|
100%
|
0.12[0.06-0.22]
|
Dangerous bedside HINTS
|
100%
|
96%
|
0.00[0.00-0.12]
|
Skew deviation, h-HIT, Direction-changing nystagmusを3-step bedside examination batteryとして行うと(HINTS)
Sn 100%, Sp 96%, LR(+) 25[3.66-170.59], LR(-) 0.00[0.00-0.11]で中枢性の病変を示唆する.
通常の診察での感度は51%,
発症早期のMRIの感度も72%(後日のフォローでStrokeと判明)であり, それら検査よりも優れているという結果.
Sn 100%, Sp 96%, LR(+) 25[3.66-170.59], LR(-) 0.00[0.00-0.11]で中枢性の病変を示唆する.
通常の診察での感度は51%,
発症早期のMRIの感度も72%(後日のフォローでStrokeと判明)であり, それら検査よりも優れているという結果.
1つ以上の脳梗塞リスクをもつAVS患者190例で頭部MRIとHINTS plusを評価.
Neurology® 2014;83:169–173
HINTS plusとは, HINTSに加えて, ベッドサイドでの聴覚評価. 指を擦り合わせて聴覚を評価する項目を含むもの. (AICA syndromeを意識.)
190例のAVS患者の内, 105例が脳梗塞と診断された.
14%が梗塞範囲≤10mmの小梗塞.
年齢65.4歳, 41-85歳. 女性が33%.
発症~MRI撮影までは平均12h[6-48](小梗塞群) 12h[5-24](それ以外)
脳梗塞の部位:
最も多い前庭構造の障害部位は下小脳脚で73%.
また, 最も多い障害部位は延髄外側で60%であった.
そのうち2/3はAVSのみで発症し, Wallenberg症候群を認めなかった.
小脳の単独梗塞は1例のみ.
Oculomotorの障害以外の神経所見を認めたのは27%のみであった.
AVSを生じる小梗塞の部位
190例のAVS患者の内, 105例が脳梗塞と診断された.
14%が梗塞範囲≤10mmの小梗塞.
年齢65.4歳, 41-85歳. 女性が33%.
発症~MRI撮影までは平均12h[6-48](小梗塞群) 12h[5-24](それ以外)
脳梗塞の部位:
最も多い前庭構造の障害部位は下小脳脚で73%.
また, 最も多い障害部位は延髄外側で60%であった.
そのうち2/3はAVSのみで発症し, Wallenberg症候群を認めなかった.
小脳の単独梗塞は1例のみ.
Oculomotorの障害以外の神経所見を認めたのは27%のみであった.
AVSを生じる小梗塞の部位
頭部MRIとHINT plusの感度
小梗塞
|
大梗塞(>10mm)
|
p値
|
|
初期MRIで偽陰性
|
53.3%
|
7.8%
|
<0.001
|
初期HINTSで偽陰性
|
6.7%
|
3.3%
|
0.46
|
初期HINTS plusで偽陰性
|
0%
|
1.1%
|
1
|
来院時のMRIでは小梗塞例の場合半分以上が偽陰性となる.
HINTSは1例のみ偽陰性だが, HINTS plusでは偽陰性は無い.
大梗塞ではMRIの偽陰性率は低下するが, それでも7.8%ある.
HINTSは1例のみ偽陰性だが, HINTS plusでは偽陰性は無い.
大梗塞ではMRIの偽陰性率は低下するが, それでも7.8%ある.
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めまい診断にはMRIよりも身体所見のほうが有用.
そしてリスク因子の評価も超重要.
それらを抜きにして画像に頼るのは ×