DMは4タイプに分類される
Type 1 DM: 自己免疫機序によるβ細胞の破壊
Type 2 DM: 多因子によるインスリン感受性の低下
Gestational DM: 妊娠に関連して発症したDM
その他 → Atypical DMであり, あまり詳しく定義されていない分野.
Type 2 DM: 多因子によるインスリン感受性の低下
Gestational DM: 妊娠に関連して発症したDM
その他 → Atypical DMであり, あまり詳しく定義されていない分野.
Atypical DMは肥満やHT, HLが無いのに耐糖能障害があるパターンや, latent autoimmune DMと呼ばれる成人発症のインスリン依存性DM, 2型DMの要素があるが, ケトーシスを容易に合併する症例, Monogenic DM(maturity-onset DM of the young or MODY)等が含まれる.
各タイプのDMの特徴
Monogenic DM
Monogenic DM, MODYは全DMの1-2%を占める.
HNF1A(MODY 3), Glucokinase(MODY 2)の遺伝子異常により, 解糖系酵素やβ細胞の糖感受性, 代謝を障害する.
インスリンの分泌能の低下を認めるが, 枯渇までは無い.
また抗インスリン抗体やβ細胞に対する自己抗体は認めない.
また抗インスリン抗体やβ細胞に対する自己抗体は認めない.
HNF1A: hepatocyte nuclear factor 1 homeobox A
臨床特徴
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Labの特徴
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常染色体優性遺伝.
3世代以上のDMを認める. 浸透率も高い. ヨーロッパで多い. BMIは25未満. 若年発症(<25y) ケトアシドーシスは稀 インスリン感受性は亢進 SU剤に反応良好 食後高血糖が主. 大血管, 小血管障害は1型DMと同等 β細胞の機能低下が進行すると, 空腹時血糖も高くなる |
C-ペプチドは検出される
TGも正常 HDL-Cholも正常〜上昇 高感度CRPは低値 腎の尿糖閾値は低下し, 血糖>142mg/dLで尿糖(+) 75gOGTTでGlu>54mg/dL上昇 早期では空腹時血糖<100mg/dL |
Monogenic DMの診断
TGが正常であり, OGTTで著明にGluが上昇する反応, 尿糖閾値の低下はMonogenic DMを示唆するが, 決定的ではない.
1型 likeなDMの割には自己抗体が陰性もMonogenic DMを示唆する.
他には家族歴, 発症年齢が大事.
他には家族歴, 発症年齢が大事.
治療の第一選択はSU剤となる.
遺伝子カウンセリングも大事.
Ketosis-prone DM
典型的なType 1 DMではないのにDKAを生じるタイプ
通常DKAはインスリンの枯渇により生じるため, DKAを来す患者では大抵がType 1 DMでインスリン導入となるが, 中には入院中にインスリン分泌能が改善し, 導入の必要が無い患者もいる.
このような患者群では長期間のフォローで, インスリン枯渇(増悪)と分泌正常(寛解)を行き来する症例がある.
寛解期には軽度の高血糖のみか, 薬剤を必要としなくなるレベルまで改善.
寛解期には軽度の高血糖のみか, 薬剤を必要としなくなるレベルまで改善.
Ketosis-prone DMには以下で分類: AB分類
islet cellに対する自己抗体をもつかどうか(A+ or A-)
インスリン枯渇, 寛解を繰り返すかどうか(B+ or B-)
インスリン枯渇, 寛解を繰り返すかどうか(B+ or B-)
A+B-, A-B-は継続的にインスリン枯渇するため, type 1に類似した病態
A+B+, A-B+は増悪寛解を繰り返すため, type 2 DMとして扱われることが多い
A+B+, A-B+は増悪寛解を繰り返すため, type 2 DMとして扱われることが多い
A-B+がketosis-prone DMの50%を占める.
肥満患者が多く, type 2 DMの経過で, DKAを来す.
誘因のないDKAで, Islet cell抗体が陰性, 頻回にインスリン依存性となるのが特徴.
誘因のないDKAで, Islet cell抗体が陰性, 頻回にインスリン依存性となるのが特徴.
早期では半数がインスリン非依存性のまま経過するが, 10年間で60%がインスリン依存性へ進行.
臨床特徴
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Labの特徴
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誘因の無いDKAを来す.
DKA時にDMが診断されることもある Afro-Caribbean, Hispanicで多い. インスリン非依存性と依存性±DKAの期間がある Type 2 DM-likeな要素が多い (肥満, 耐糖能障害, Metabolic syndrome) β細胞機能の変動でHbA1cもバラツく DKAを来たす患者群では男性が多い(2.6:1) 初期治療としてインスリンが推奨される |
β細胞抗体は28%で陽性
C-ペプチドはDKA時には低値. その後は>60%で改善する. 空腹時C-ペプチド(nmol/L)/glu(mmol/L) >11はインスリン中断可能を示唆. Type 1 DMのHLAパターンならば1-2年で インスリン依存性となる |
Latent Autoimmune DM in Adults(LADA) J Clin Endocrinol Metab 2009;94:4635-44
Slowly Progressive Insulin Dependent DM (SPIDDM)やLatent Autoimmune Diabetes (LADA)と呼ばれる.
Type2 DMとして発症し, 進行性のβ-cell不全を認める病態
数年でIDDMへ進行する. 発症年齢は40-60yr頃.
数年でIDDMへ進行する. 発症年齢は40-60yr頃.
Glutamic acid decarboxylase(GAD)抗体, Islet-cell(ICA)抗体, Tyrosine phosphatase-like protein IA-2(IA-2A)抗体が陽性.
Type 2 DMの11%にICA抗体(+)を認め, (-)群と比較してSU剤への反応性低下が早期に認められる.
発症初期のSU剤の使用により, β-cell不全が進むことが分かっている
早期のInsulin導入にてβ-cell機能は有意に保たれる (HR 0.153[0.055-0.342]) (J Clin Endocrinol Metab2008;93:2115-21)
早期のInsulin導入にてβ-cell機能は有意に保たれる (HR 0.153[0.055-0.342]) (J Clin Endocrinol Metab2008;93:2115-21)
LADAは全DM中2-12%を占める.
典型的なLADA患者はAge>35yrで非肥満体形
初期のDMは食事療法でコントロールできている.
初期のDMは食事療法でコントロールできている.
発症後数か月~数年と短期間で増悪し, 内服, インスリン治療が必要となる
体重減少, ケトン陽性, C-peptideの低下を認めやすい.
LADA Criteria (Diabetes Society)
発症年齢>=30yr
Type 1 DMで認める4つの自己抗体中, 1つ以上陽性 (ICA, GAD65, IA-2A, Insulin)
診断後6か月はインスリン導入されていない
小児例で年齢以外は上記LADA Criteriaを満たす症例も報告されており, 定義は今後変わる可能性が高い.
臨床特徴
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Labの特徴
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年齢>30歳で発症
肥満はあるが, Type 2 DM程の肥満ではない 軽度〜中等度のインスリン抵抗性がある 様々な人種で認められる インスリン依存性までの期間は, type 1程短期間ではなく, type 2ほど長くもない β細胞刺激作用のある薬剤は避ける(SU剤等) 経口血糖降下薬から開始してもよいが, コントロール不良ならば早期にインスリンを導入 |
GAD, ICA抗体は陽性
インスリン抗体も陽性が多い 成人発症Type 1 DMと抗体は似ている. |
CMAJ 2014;186:678-684
GAD抗体はインスリン依存の予測因子となる
UKPDS 25; Type 2 DM 3672名にICA, GAD抗体測定し, 評価
(Lancet 1997;350:1288-93)
(Lancet 1997;350:1288-93)
診断時年齢別の抗体陽性率
Antibody |
25-34yr |
35-44yr |
45-54yr |
55-65yr |
両方 Neg |
65% |
84% |
89% |
91% |
ICA (+) |
21% |
9% |
6% |
4% |
GAD抗体(+) |
34% |
14% |
9% |
7% |
両方 Pog |
20% |
7% |
3% |
2% |
GAD抗体(+), ICA(+)はInsulin導入のRisk因子となる
=<44yr群で GAD抗体(+); OR 13.4[5.28-34.0]
>=45yr群で GAD抗体(+); OR 5.62[3.23-9.80]
ICA(+); OR 5.12[3.23-10.40]
GAD抗体陽性では他の自己抗体陽性の頻度も高い
Ehime study; >20yrのDM患者 4980名にGAD抗体を測定し, 評価.
(Diabetes Care 2002;25:995-1001)
(Diabetes Care 2002;25:995-1001)
3.8%でGAD抗体(+), その内 38.3%がInsulin導入, 51.6%が非導入
発症年齢は其々, 41.2yr(13.8), 51.3yr(12.3)
他の自己抗体出現頻度
Antibodies |
GAD抗体(+) |
Control |
TPO antibodies |
35.0% |
11.6% |
TG antibodies |
39.5% |
16.3% |
Parietal cell antibodies |
8.3% |
2.1% |
Pituitary antibodies |
1.3% |
2.6% |
Any antibodies |
49.0% |
23.2% |
LADAとtype 1 DMの自己抗体
最近の知見では, LADAとType 1 DMの自己抗体は異なる.
Type 1 DMでは, ICA, GAD, IA-2A, IAAに対する自己抗体の他, Zinc transporter(ZnT8)に対する抗体を認めることが多く, Type 1 DM患者では複数の抗体を認めることが多い.
LADAにおける自己抗体はGAD, ICAに対する抗体が多く, IA-2A, IAA, ZnT8に対する抗体は少ない.
GAD抗体のIgG4 subclassはLADA > Type 1 DM.
複数の自己抗体陽性となる割合