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2016年6月4日土曜日

インドメタシン坐薬によるERCP後膵炎の予防

NSAIDs投与によるERCP後膵炎の予防効果は以前から言われており,
2012年にNEJMより発表されたUSCORE trialにおいて, 膵炎の高リスク群におけるNSAIDs坐薬によるERCP後膵炎予防効果が明らかとなった.

USCORE trial; ERCPによる膵炎発症リスクが高いと判断された602名のDB-RCT.
(N Engl J Med 2012;366:1414-22.)
・ERCP直後にインドメタシン50mgの経直腸投与 vs Placeboに割り付け, 手技後24hr以内の膵炎発症率を比較(腹痛, AMY,LIP>3ULN)
・膵炎発症リスク高は以下のMajor 1項目以上か, Minor 2項目以上を満たす場合で定義.
Major 1項目以上
Oddi括約筋の異常§が臨床上推測される
Post-ERCP膵炎の既往あり
膵管括約筋切開術施行
Precut sphincterotomy
>8回のCannulationを行った場合
胆管のPneumatic dilatation
Ampullectomy
Minor 2項目以上
<50yrの女性
2回以上の膵炎の既往あり
3回以上造影剤が膵管に入る.
その内1回は膵尾部まで造影されている
膵腺房まで造影されるほど造影剤を使用
ブラシを用いて膵管から細胞を採取した場合

§Oddi括約筋の異常
Biliary type I 胆道系による腹痛, LFT異常,
総胆管>9mm
Biliary type II 胆道系による腹痛とLFT異常+総胆管拡張あり
Biliary type III 胆道系による腹痛のみ
Pancreatic type I 膵臓系の腹痛, 膵酵素上昇,
膵管拡張 もしくは再発性膵炎
Pancreatic type II 膵臓系の腹痛, 膵酵素上昇,
膵管拡張
Pancreatic type III 膵臓系の腹痛のみ
母集団データ:

Outcome; ERCP後膵炎の発症率

・ERCP後膵炎発症率は有意にNSAID経直腸投与群で低くなる.
 16.9% vs 9.2% (p=0.005), NNT 13. 
 8.8% vs 4.4% (p=0.03)
・NSAID使用による出血リスクは有意差無し.

このStudyに加えて, 2016年にいくつかの新しいRCTが出てきた

ERCPを予定している449例を対象としたDB-RCT
(Gastroenterology 2016;150:911–917)
・ERCPの術中にインドメタシン100mgを経直腸投与する群 vs. プラセボ群に割り付け, ERCP後膵炎のリスクを比較.
・ERCP後膵炎の定義は, 新規上腹痛の出現, リパーゼ ≥3ULN, ERCP後2日間入院が必要で定義
・患者は18歳以上でERCPを予定されている群.
 急性膵炎やNSAIDを使用できない患者, 妊婦, 授乳婦は除外

母集団データ:
・患者の70%がERCP後膵炎の中等度リスク群
 ERCP後膵炎既往は4%,
 カニュレーションが困難であったのは2割程度.
 Oddi括約筋の以上が疑われた患者は2.8%のみ.

アウトカム: 
・ERCP後膵炎の発症リスクは両者で有意差なし.

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前者2つのRCTでは母集団が異なる.
・USCOREではERCP後膵炎の既往や, Odds括約筋異常の割合が多い.
・患者層もUSCOREの方が若年で, 女性が多い
・カニュレーション試行を>8回必要とした症例は2割程度で同等.
・Pancreatic acinarizationもUSCOREで多く, 全体的にUSCOREの方がERCP膵炎リスクが高い.
 プラセボ群のERCP膵炎は16.9%
 後者のStudyでは4.9%
・またインドメタシンの投与タイミングもERCP後か, 術中かで異なる.
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そこで, リスクに応じてERCP後に投与する群と, 全例でルーチンにERCP前に投与する群を比較したRCT.

中国における多施設, Single-blind RCT.
・ERCPを予定されている18歳以上の 2600例を対象とし, 全例でERCPの30分前にインドメタシン 100mgを経直腸投与する群 vs. 高リスク群のみERCP後に経直腸投与する群に割り付け, 比較.
(Lancet 2016; 387: 2293–301 )
ERCP後膵炎の定義は, 新規上腹痛の出現, リパーゼ ≥3ULN, ERCP後2日間入院が必要で定義
・ERCP後膵炎の高リスク群はUSCORE trialの定義と同様.

母集団のデータ

・ERCP施行歴がある患者は少なくERCP後膵炎の既往も少ない.
・Oddi括約筋不全も3%のみと少ない

ERCP所見
・高リスク群, といってもOddi括約筋不全はUSCOREと比較して少ない.

アウトカム

・ERCP後膵炎は, ERCP施行前にルーチンでインドメタシンを投与する群で有意に少ない結果.
両群の高リスク群のみで評価した結果では, 手技前に投与した方が良い結果.
・中等度リスク群でも同様

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ERCP後膵炎の予防としてのインドメタシンの投与方法は以下の3パターンがある.

・ERCP所見を踏まえて, 高リスク群のみ, ERCP直後に投与する (USCORE)
・ERCP所見を踏まえて, 高リスク群のみ, 術中に投与する.
・ERCPの所見に関わらず, 全例で術中に使用する
・ERCP施行前に全例で使用する

これらのStudyから, 現時点は, 膵炎のリスク別に考慮するのではなく,
全例でERCP術前に投与する方が予防効果が良好と言えるか.