ブログ内検索

2021年10月6日水曜日

SSCG2021の概要

Surviving Sepsis Campaign 2021を読みましたので、概要をまとめます.

(Intensive Care Med https://doi.org/10.1007/s00134-021-06506-y)


まとめの図と推奨レベル. 2016年との違い


敗血症のスクリーニング


・病院や施設において, 敗血症スクリーニングを向上させる
プログラムを使用することを推奨.

・スクリーニングにqSOFA単独を用いることは推奨しない

・敗血症を疑えば
乳酸値の評価を推奨


初期蘇生


・敗血症や敗血症性ショックは緊急病態であり, 迅速に蘇生を開始する

・細胞外液 30mL/kg以上を最初の3時間で投与する.

・補液負荷の評価には身体所見や静的指標のみではなく動的指標も用いる.

・乳酸値が上昇している患者では, 変動も指標として用いる

・Capillary refill time
も指標として用いる


目標MAP

・昇圧薬を使用している患者では, 目標血圧はより高く設定するよりも,
MAP 65mmHgを目標血圧とする


ICU入室

・ICU管理が必要な症例では, 6時間以内にICUに入室する 


感染症の管理


・敗血症を疑うが, 感染巣が不明の場合
継続的に他疾患の可能性を検討し, 他疾患場合は抗菌薬を中断する

・敗血症性ショックの可能性がある場合,
 敗血症を強く疑う場合は,
 1時間以内に抗菌薬を開始する

・ショック(-)の敗血症の可能性がある症例では, 早期に感染症, 非感染症の可能性を検討する

・上記症例で, 感染症の可能性が除外できない場合, 3時間以内に抗菌薬を開始する

・上記症例で感染症の可能性が低いと判断した場合は, 抗菌薬投与を延期し, モニタリングを継続する

・敗血症や敗血症性ショックを疑う症例では, PCTを指標とした判断は行わない.

・MRSAによる敗血症, 敗血症性ショックのリスクが高い場合はMRSAカバーを行うべき

・MRSAの可能性が低い場合はカバーすべきではない

・多剤耐性菌(MDR)のリスクが高い場合, グラム陰性菌カバーが可能な2種類の抗菌薬で治療する

・MDRの可能性が低い場合は2種類の抗菌薬を使用する必要はない

・MDR疑いの場合, 原因菌と感受性が判明すれば, 効果のある単剤の抗菌薬に変更する.

・真菌感染症のリスクが高い場合, 抗真菌薬の併用を推奨する

・真菌感染症のリスクが低い場合, 抗真菌薬の併用は推奨しない

・抗ウイルス薬の併用については推奨しない

・敗血症, 敗血症性ショック患者では, βラクタムの維持投与において, prolonged infusionをBolus投与よりも推奨する

・抗菌薬は各薬剤のPK/PDに基づいた最適化された投与量を選択する

・敗血症や敗血症性ショックでは, 緊急にソースコントロールが必要な解剖学的診断を迅速に特定, または除外し, 必要な介入をできる限り早く行う.

・血管内デバイスが感染源の可能性がある場合, 他の血管アクセスを確保した後に迅速に除去する

・敗血症や敗血症性ショックの管理では, 毎日抗菌薬のDe-escalationについて検討する

・感染源のソースコントロールが適切にできている患者では, 長期間の抗菌薬等よりも短期間の投与を推奨

・感染源のソースコントロールが適切にできている患者で, 抗菌薬の投与期間が不明確な場合, PCTや臨床所見を参考に抗菌薬の中止を考慮する


血行動態の管理

・初期輸液としては晶質液の使用を推奨する

・生理食塩水よりもBalanced crystalloidsを推奨する

・蘇生に大量の晶質液を使用した患者では, アルブミンの投与を推奨する

・スターチの使用は推奨しない

・ゲラチンの使用は推奨しない

・昇圧薬では, 第一選択にノルアドレナリンを推奨


 ドパミン, バソプレシン, アドレナリン,
セレプレシン, アンギオテンシン2よりも優先

・NAを使用しても目標MAPを達成できない場合, NAを増量するよりバソプレシンを併用する

・NA, バソプレシンでも目標MAPを達成できない場合, アドレナリンを併用する

・テリプレシンの使用は推奨しない

・敗血症性ショックで心機能低下があり, 適切な補液とMAPを維持しているが低循環状態の患者では, NAにドブタミンを併用するか, アドレナリン単独で使用する

・上記患者においてLevosimendanの使用は推奨しない.

・敗血症性ショックでは, 非侵襲的よりも, 侵襲的な血圧モニタリング(A-line)を推奨する

・敗血症性ショックでは, CVルート確保を待つよりも, まず昇圧薬は抹消ラインから投与する.

・初期治療も低循環が持続している患者に対する輸液負荷方法(restrictive, liberal)についてはエビデンスが不十分である


呼吸器管理


・敗血症による低酸素血症に対するConservativeなO2目標値設定についてはエビデンスが不十分

・敗血症による低酸素血症では, NIVよりもHFNOを推奨する

・NIVと侵襲的呼吸器管理の優先順位についてはエビデンスが不十分

・敗血症によるARDSでは, Low tidal volume ventilation(6mL/kg)をHigh tidal(>10mL/kg)よりも推奨する

・敗血症によるARDSでは, プラトー圧は30cmH2O以下で維持する

・中等度〜重度の敗血症によるARDSでは, Lower PEEPよりもHigher PEEPを推奨する

・敗血症による呼吸不全(非ARDS)ではHigh tidalよりもLow tidal vol ventilationを推奨

・中等度〜重度の敗血症によるARDSでは, Recruitment maneuverを推奨する

・Recruitment maneuverを行う場合, PEEPを増量してゆく方法は推奨しない(incremental PEEP titration/strategy)

・中等度〜重度の敗血症によるARDSでは, 1日に12h以上の腹臥位呼吸を推奨する

・中等度〜重度の敗血症によるARDSでは, 間欠的なNMBAのbolus投与を持続投与りも推奨する
 (NMBA: 神経筋ブロック)

・重度の敗血症によるARDSで, 呼吸器管理でも酸素状態が不良の場合は, 経験のある施設においてVV-ECMOによる管理を推奨する.


追加治療



・敗血症性ショックで昇圧薬を必要とする患者では, ステロイドの経静脈投与を推奨する

・敗血症や敗血症性ショックに対して, ポリミキシンB血液浄化は推奨しない

・他の血液浄化についてはエビデンス不十分

・敗血症や敗血症性ショックに対する輸血はRestrictive strategyを推奨

・敗血症や敗血症性ショックに対するIVIGは推奨しない

・敗血症や敗血症性ショックで消化管出血リスクがある場合は, ストレス潰瘍予防を推奨する

・敗血症や敗血症性ショック症例では, 禁忌がなければVTE予防を行う

・VTE予防ではUFHよりもLMWHを優先する

・VTEの薬物的予防が可能な症例では, 機械的予防の使用は推奨しない

・敗血症, 敗血症性ショックでAKIを合併している症例では, 持続的, 間欠的腎代替療法を推奨する

・上記患者で腎代替療法の絶対的適応がない場合は推奨しない

・敗血症や敗血症性ショックで, 血糖≥180mg/dLの場合, インスリンを推奨

・敗血症や敗血症性ショックではビタミンCの投与は推奨しない

・低循環による乳酸アシドーシスにおいて, Bicarbonateの投与は推奨しない

・AKI(AKIN 2-3)で重度の代謝性アシドーシス(pH≤7.2)がある場合, Bicarbonateを推奨する

・腸管栄養が可能な患者では早期(72h以内)に開始する


長期的な管理


・敗血症, 敗血症性ショック症例では, 本人や家族と予後や治療の目標を話しあうべき

・治療の目標は晩期(72h以降)よりも, 早期(72h以内)に設定することを推奨する

・目標を議論するきっかけとなる標準化された基準についてはエビデンスが不十分である

・敗血症, 敗血症性ショックに対しては, 患者や家族の苦痛や症状に対象するために, 緩和ケアの原則(主治医の判断による緩和ケアコンサルテーションも含む)を治療計画に統合することを推奨.

・ルーチンの緩和ケアコンサルテーションは必要ない

・敗血症や敗血症性ショックの生存者やその家族に対してはPeer support groupの紹介を推奨

・ケアの移行時には重要な情報をプロセスを用いて共有することを推奨する.

・どの共有プロセスツールを用いるべきかはエビデンスが不十分である 

・敗血症, 敗血症性ショックでは, 本人や家族に対して経済的, 社会的支援についてスクリーニングを行い, 必要に応じて利用可能な補助を提案する

・敗血症, 敗血症性ショックでは, 本人や家族に対して敗血症についての教育を, 口頭, 資料を用いて行う.

・敗血症, 敗血症性ショックでは, ICU退室後, 退院までの計画策定時に, 本人や家族が参加できるように配慮する

・ICU退室に際してはTransition programmeを行うことを推奨
(移行期にミスや問題が起こりやすくなるため, ICUスタッフが数日間一般病棟に移動した患者を回診したり, 併診する仕組み)

・ICU退室時や退院時に薬剤の見直し, 調節を行うことを推奨する

・退院時には, ICU滞在時の状態や合併症, 敗血症や関連する疾患, 診断, 治療, 後遺症について, 書面や口頭での説明を行うことを推奨する

・敗血症や敗血症性ショックにおいて, 新たな障害を発症した患者に対しては, 退院計画に後遺症や長期的な後遺症サポート, 管理が可能な医療機関, 医師によるフォローを含める

・退院後の定期的なフォローと比較して, 早期のフォローについて推奨するエビデンスは不十分

・敗血症生存患者に対する早期の認知療法に対するエビデンスは不十分

・敗血症生存患者に対しては, 退院後に身体的, 認知的, 感情的な問題の評価とフォローを行うことを推奨

・敗血症生存患者に対しては, Post-critical illness follow-up programmeがあれば, 紹介することを推奨する

48時間以上の人工呼吸器管理, 
72時間以上のICU管理を受けていた
患者では, リハビリテーション
プログラムへの紹介を提案する

COPD急性増悪において, 肺血栓塞栓症を積極的に探す必要は?

 COPDの急性増悪症例の一部に, 肺血栓塞栓症が紛れている可能性がある.

参考: COPD急性増悪の背景に肺血栓塞栓症

 原因がよくわからないCOPDの急性増悪は肺血栓塞栓症かも

これらの報告からは,

・明らかな誘因のないCOPD急性増悪症例の16%程度.

・診療医の印象として, PEの可能性があると判断された群では10%程度

・可能性がないと判断された群でも3%程度でPEが合併している.


では, COPD急性増悪症例において, PEを積極的に評価する必要があるのだろうか?


スペインにおける多施設(18施設)RCT. 

・COPD急性増悪で入院した患者を対象.

・臨床的にPEが疑われる症例(Studyと関係なく, 主治医がPEの検査が必要と判断した症例)や妊婦, CTPAが禁忌, 肺炎や気胸, 下気道感染症, 入院時に侵襲的人工呼吸器管理が必要となる症例は除外


上記患者群を,
 

 積極的PE評価群(D-dimerを評価し, 陽性ならば造影CT)
  

  vs 通常の治療群に割り付け, 比較.

・Primary outcomeは非致死的VTE, 90日間COPD再入院, 死亡


全患者で通常のCOPD急性増悪に対する治療を施行.

O2投与, SABA, SAMAの使用, ステロイド, 抗菌薬, VTE予防


・積極的評価群では, D-dimerを入院12h以内に評価.


 陰性ならばPEを除外

 陽性ならば(Cutoffは施設の基準)CTPAを行う.


 孤発性のSubsegmental PEの症例では下肢静脈圧迫エコーが推奨.

・PEが認められた場合, VTE治療量の抗凝固療法が開始される.


母集団


アウトカム

・PEの頻度は積極的評価群で0.5%, Control群で2.5%と, いままでの報告に比べると低頻度. 

・複合アウトカム(非致死的VTE, 90日再入院, 死亡)は両者で有意差なし

・VTEは積極的評価群で2例, Control群で9例認められた(有意差なし)


-------------------------------

この報告では, COPD急性増悪において, 臨床的に疑わない場合, PEを積極的に評価する必要は乏しい結果.

これまでの報告と比べて, PEの合併例は少なく, そこも結果に関連している可能性はある.

今後はリスク因子を評価して, どの群においてPEを狙いにいくか, という点がもう少し詰められるとよいのかもしれない.


終末期におけるDeath rattleを予防するためのブチルスポコラミン

(JAMA. 2021;326(13):1268-1276. doi:10.1001/jama.2021.14785)

Death rattleは終末期に認められるいびき様の呼吸で, 
気道分泌物が上気道に貯留することで生じる現象.

・終末期状態の患者において, 12-92%で認められ, 頻度は高い.

・患者本人は意識がないため, この現象が本人に及ぼす影響は不明だが,
 

 周囲の家族にとっては, 窒息の心配や, 苦痛を伴っているのではないか, という心配が強く, ストレス因子になるという報告がある.

・体位変換などで対応するが, それでも治らない場合はいくつかのガイドラインでは抗コリン薬の使用を推奨している;
(NICE guideline, オーストリアのガイドラインなど)


SILENCE: オーストリアにおけるDB-RCT.

・成人のホスピス入所者で, 以下を満たす群を対象:
 

 余命が3日以上.
  

 患者本人が, ホスピスで亡くなることを認識している


 研究についての情報が理解できる

・気管切開, 気管チューブ, 抗コリン薬やオクテオチドを使用, 
活動性の呼吸器感染症がある患者は除外

・また, 死に瀕した際, 再度呼吸器感染症や抗コリン薬の使用, Death rattleがないことを確認した.


上記患者群を, 死に瀕した状況*となった際に
 ブチルスポコラミン 20mgを1日4回皮下注射群 
 vs Placebo群に割り付け, Death rattleや副作用を比較した.

*状況は多職種チームの臨床的判断により, いくつかの状態を考慮し行われた; 

 寝たきり, 水分を1口しかとれない, 嚥下ができない, 半昏睡状態


アウトカム

・Death rattleは
4時間毎に評価し,
 2回連続で認められた場合に出現と定義(2 time points)

・ブチルスポコラミンは有意にDeath rattle頻度を低下させる効果がある

 出現までの時間も延長

・副作用は有意差なし

・死亡までの時間もブチルスポコラミンでは
半日程度長い.


--------------------------------

病院で亡くなる場合, 家族がつきっきりというわけではないため, あまり出番はないかもしれない

家族が付き添っている状況, 施設, 在宅看取りではよいかもしれないが, 4時間毎の皮下注射はなかなか難しいことも多い. 

持続皮下注射でも同様の結果ならば, 在宅でつかいやすいかもしれない.

2021年10月5日火曜日

単一臓器の血管炎. 消化管限局血管炎

難治性, 重症の虚血性腸炎の症例で粘膜生検を行うと, フィブリノイド壊死を伴う白血球破砕性血管炎の所見が得られた.

他に全身性の血管炎を示唆する多臓器障害は認められず, ANCAも陰性.

虚血性腸炎は改善傾向も得られず, 経過していたためGCを開始すると症状, 所見は改善傾向が得られた.


という経過の症例.

あくまでも暫定診断になるものの, 単一臓器の血管炎(Single organ vasculitis)による大腸炎(虚血性腸炎)の可能性を考慮.


・虚血性腸炎は ”高齢女性”, ”便秘”, ”血便” というキーワードで連想することが多い.

・動脈硬化や心拍出量低下がある状態で, さらに腸管局所の血流の低下や酸素需要の亢進が生じると虚血性腸炎となり, 粘膜が脱落し血便や浮腫を呈する.

他の原因としては, 以下のような要素がリスクとなる

・全身性血管炎(PANやIgA血管炎, SLE, RAなど)

・
アミロイドーシス, 

・感染症: 特に免疫抑制状態の患者. CMV, 腸管出血性大腸菌, 真菌など


・医原性: 術後, 血管内デバイス, 


・薬剤: NSAIDなど


また, 参考までに腸管の栄養血管は以下. 栄養血管に一致した形で生じることも多い

(Acad Pathol. 2019 Nov 21;6:2374289519888709.)


消化管を障害する血管炎とその特徴は以下の通り

・PAN, IgA血管炎は比較的連想が容易.

・他にAAV, SLE, RAといったものが原因として挙げられる. 載っていないがベーチェット病も

(Acad Pathol. 2019 Nov 21;6:2374289519888709.)


全身性血管炎の場合, その部位のみならず, 多臓器に症状を認めること重要であるが,

中には単一臓器のみに血管炎を生じるものがある.

これをSingle organ vasculitis (solitary organ vasculitis): SOVと呼ぶ


Single-organ vasculitis: 単一臓器に限局する血管炎で
 “Isolated PAN-like“ vasculitisであり,
 単一臓器の動脈, 静脈, サイズに関わらず血管炎を認め,
 他の臓器には認められない病態.

・再発を繰り返す場合もあれば, 一相性で改善する例もある. (J Clin Pathol 2017;70:470–475.)

・主にPAN-likeな血管炎として考えることが多いが,
 中には皮疹のないIgA血管炎のような報告もある(BMJ Case Rep 2020;13:e235042.)


SOVは単一臓器のみに血管炎を認め
少なくとも6ヶ月間は他の部位に血管炎を伴わないことで定義される

・中枢神経や皮膚のように,
領域が広がっている場合と,

・婦人科系, 精巣, 消化器, 乳房のように
単一の部位に限局している場合がある(限局型SOV)

 大動脈や大動脈周囲炎の中にもSOVがある.

・限局型のSOVでは, 他の理由により手術や生検が行われた際に偶発的に発見されることが多く, 切除のみで改善することも多い.

・6ヶ月以上の経過観察で, 全身性に拡大することもあり, 注意.

(Curr Opin Rheumatol 2012, 24:38 – 45)


SOVのうち, GI tractに認められる症例をLVGIと呼ぶ (Localized vasculitis of the GI tract)

・外科治療症例におけるSOVの頻度は

 虫垂炎の1%にSOVが認められる報告があり, 比較的頻度が高い(Curr Opin Rheumatol 2012, 24:38 – 45)

 胆嚢切除術では12000例の切除症例のうち, 5例のみと少ない.(J Clin Gastroenterol. 1989 Oct;11(5):537-40. doi: 10.1097/00004836-198910000-00009.)


Mayo clinicにおいて, 1996-2007年に診断した
GI tractを含む血管炎症例608例をReview.

・組織所見や血管造影にて血管炎と判断された症例を抽出した.

・このうち, LVGIは18例.

・多い病変は胃十二指腸潰瘍や粘膜出血
 

 胆嚢炎, 結腸直腸潰瘍や粘膜出血
 

 脾臓, 肝臓, 腸管の梗塞もある

・他に虫垂炎や膵炎, 腹膜炎, 穿孔, 腸閉塞など

血管造影検査


18例のまとめ

・病理像は虚血性腸炎, 壊死性血管炎を伴う症例が多い.

・治療は免疫抑制から経過観察など. 


2021年10月2日土曜日

ERCP後膵炎の予防方法と, その効果を評価したNetwork Meta-analysis

 ERCPにおける主要な合併症の一つに膵炎がある.

その膵炎を予防する方法として, NSAIDの坐薬が有用であるRCTは多く発表されている

参考; インドメタシン坐薬によるERCP後膵炎の予防

ERCP後膵炎の予防効果を評価したNetwork Meta-analysisが発表
(Lancet Gastroenterol Hepatol 2021; 6: 733–42)

・2020年11月までに発表されたNSAID, 膵管ステント, 補液, またこれらの併用によるERCP後膵炎リスクを評価したRCTsをReview.
・55 RCTsより, 20のIntervention, 17062名の患者を評価.

Interventionと
ERCP後膵炎発症率
・Placebo群のERCP後膵炎発症率は12.2%[11.4-13.0]

ERCP後膵炎の予防効果

・最も予防効果が良好と考えられるものはNSAIDの経直腸投与(インドメタシン100mg, ジクロフェナク75-100mg)と外液の補液の併用.
・NSAIDはジクロフェナク100mgの経直腸投与が最も有用.
・膵管ステントも有用.

各予防方法間の比較(Network Meta)


2021年9月26日日曜日

塩分代替食品と心血管アウトカム

塩分代替食品とは, NaClにKClを一部置き換えて, Na摂取量を減らすために使用する塩.

国内では味の素の やさしお®がある. やさしお®は50%がKClに置き換えられている.


塩分代替食品が, 心血管アウトカムにどうつながるかを評価したCluster-RCT.

(N Engl J Med 2021;385:1067-77.)


中国におけるCluster RCT.
地方の600箇所の村を対象.

・対象患者は60歳以上またはStrokeの既往がある高血圧患者


 (降圧薬使用中の患者ではsBP≥140, 未治療では ≥160mmHg)

・K負荷を制限する必要がある病態やK保持性利尿薬使用, K製剤使用, 重大な腎疾患がある患者は除外


・食塩代替食品(NaCl 75%, KCl 25%含有)を使用する村と
 

 通常の食塩を使用する村に割り付け, 5年間のStrokeリスクを比較


 (参考: やさしお®は50%がKCl)

・フォロー中のルーチンの腎機能評価は行っていない


両群における血圧とNa排泄量の比較

・sBPやNa排泄は低下し, K排泄は増加

臨床アウトカム

・脳出血リスクは有意に低下. それによる死亡リスクも低下


・非致死的ACSリスクも低下する

・重大な高K血症リスクは両者有意差認めず: OR 1.04[0.80-1.37]

-------------------------------

高K血症のリスクがなければ, 塩分制限の方法として塩分代替食品の使用は有用といえる


2021年9月23日木曜日

降圧薬の低用量多剤併用療法

高血圧の初期治療は, 単剤から開始してその後増量する方法が基本ではあるが,

初期から多剤を, 少量ずつ併用する方法の方がより目標血圧達成が早いとの報告が増えてきている

QUARTET: オーストラリアにおけるDB-RCT.
 未治療 or 1剤のみで治療されている高血圧症を対象とし,
 降圧薬4剤少量で治療する群 vs 単剤治療群に割り付け

(Lancet 2021; 398: 1043–52)

・4剤はIrbesartan 37.5mg, Amlodipine 1.25mg, Indapamide 0.625mg, Bisoprolol 2.5mg

  (ARB, CCB, サイアザイド類似, β阻害を通常使用量の1/4量ずつ持ちいる)

・単剤治療はIrbesartan 150mgを使用

・目標血圧に到達しない場合は追加治療可能.
まずはAmlodipine 5mgから併用する.

・対象は

 (1)外来血圧140-179/90-109mmHgを満たす群, または日中の平均血圧が≥135/85mmHgを満たす群


 (2)単剤治療されている患者で, 外来血圧135-179/85-105mmHg または日中の平均血圧が≥125/80を満たす群

・アウトカムは12wkにおける降圧効果, <140/90達成率

母集団


アウトカム

12wk, 52wkにおける
両群の治療内容

・4剤併用群では8割近くは
そのままの投与量で継続.

・Irbesartan単独群では,
6割弱がそのまま. 4割が追加治療.

血圧の変動


・血圧は有意に4剤併用群で低下

・副作用は一部K値やBUNに差はあるものの, ほぼ同等


同様に, 初期から多剤を使用する報告にTRIUMPHがある

TRIUMPH: 成人例の高血圧(sBP>140, dBP>90, またはCKDやDMがある患者ではsBP/dBP >130/80)で, 新規に降圧薬を開始する/単剤治療から増量する必要がある群を対象.

(JAMA. 2018;320(6):566-579. doi:10.1001/jama.2018.10359)

・固定量の3剤療法(telmisartan 20mg, amlodipine 2.5mg, chlorthalidone 12.5mg)使用群 vs 通常の治療群に割り付け, 降圧コントロールを比較した.

アウトカム

・6ヶ月における血圧目標達成は
有意に3剤開始群で良好.


--------------------------------

初期から複数の薬剤を低用量で組み合わせることで, 単剤治療開始よりも迅速な降圧作用が得られる.

これらが心血管イベントリスクにどう関わるかは今後研究が進みそう. 3-4剤の合剤もできてくるかもしれない。