3ヶ月ほど前より亜急性経過で手の震えが出現してきたという高齢女性.
震えて字が書けなくなり, 気づいた.
最初は左側、その後右側も出現.
診察すると, 声帯振戦, 口唇/舌振戦, 上肢の姿勢時, 静止時振戦が認められている.
安静時振戦は認められず.
明らかな筋固縮や小脳失調症状, 脳幹症状は認められず.
四肢の運動, 感覚も問題なし.
一見すると本態性振戦か, と思うような所見であった.
さらに, 振戦が出現する2ヶ月前に脳腫瘍の手術歴があり, その後からバルプロ酸が開始されていた.
術後のフォローでは頭部MRI含めて問題はなく, 順調な経過.
さて, 振戦の原因はなにか?
-----------------
薬剤性振戦
様々な薬剤が振戦の原因となりえる.
・抗不整脈薬, 抗生剤, 抗精神病薬, 抗てんかん薬など.
・振戦では薬剤性も念頭において評価することは重要.
原因薬剤と薬剤性振戦のタイプ
(Lancet Neurol 2005; 4: 866–76 )
バルプロ酸は抗てんかん薬による振戦で最も多い原因薬剤
・背景に振戦がある患者ではバルプロ酸使用により増悪することもある.
バルプロ酸を使用している患者の~25%は振戦を認める報告もあり (Lancet Neurol 2005; 4: 866–76 )
・振戦は本態性振戦に類似した振戦をきたす. 両側性で姿勢時, 静止時に増悪する. 安静時にも認められる. (Neurology. 1979 Aug;29(8):1177-80.)(Neurology. 1982 Apr;32(4):428-32.)
・振戦は平均10Hzと細かい振戦となる(Electromyogr Clin Neurophysiol. 2005 Apr-May;45(3):177-82.)
・投与開始後1ヶ月以内に多く, 血中濃度との相関性はなく, 正常血中濃度でも生じる.
ただし750mg/日以上の投与例で多い傾向があり, 減量により症状も軽快する.
・基本的に左右対称性であるが, 左右差を認める症例や, 片側性の報告もあり.(Pediatric Neurology 48 (2013) 479e480 )
バルプロ酸はパーキンソン症候群の原因の1つにも挙げられている.
・この場合は振戦は安静時のみに認められる.
・出現時期も開始後数年が多い.
(Parkinsonism and Related Disorders 19 (2013) 758e760)
他の抗てんかん薬による振戦
・ラモトリギンでは4%で振戦を生じる(プラセボでは1%のみ)
・Gabapentinが6.8%(vs 3.2%プラセボ)
・Oxcarbazepineが4%(vs 0%プラセボ)
・TopiramateやLevetiracetam, Zonisamideは本態性振戦の治療として使用されることがある.
(Lancet Neurol 2005; 4: 866–76 )
-----------------
Clinical pearlとしては,
バルプロ酸使用中の患者での本態性振戦様の振戦には要注意!
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2016年8月4日木曜日
2016年8月3日水曜日
敗血症性ショックにおけるバソプレッシン vs ノルエピネフリン
VANISH trial (JAMA. 2016;316(5):509-518.)
敗血症性ショックで, 補液治療に反応せず昇圧剤を必要とした409例を対象とした2x2 Factrial designのDB-RCT
・敗血症性ショック発症後6時間以内に割り付け.
敗血症の定義はSIRSクライテリアを使用
・上記患者群を以下の4群に割り付け, 比較.
Vasopressin ~0.06U/min + Hydrocortisone群
Vasopressin ~0.06U/min + Placebo群
Norepinephrine ~12µg/min + Hydrocortisone群
Norepinephrine ~12µg/min + Placebo群
・血圧目標値はMAP 65-75mmHg
・昇圧剤を極量まで使用した場合, HydrocortisoneもしくはPlaceboを使用するプロトコール. Hydrocortisoneは50mgを6時間毎に5日間投与. その後12時間毎に3日間, 24時間毎に3日間使用するレジメ. ショックが離脱できれば早期に減量可
それでも目標血圧とならない場合はOpen-labelの昇圧剤を使用.
母集団;
敗血症性ショックで, 補液治療に反応せず昇圧剤を必要とした409例を対象とした2x2 Factrial designのDB-RCT
・敗血症性ショック発症後6時間以内に割り付け.
敗血症の定義はSIRSクライテリアを使用
・上記患者群を以下の4群に割り付け, 比較.
Vasopressin ~0.06U/min + Hydrocortisone群
Vasopressin ~0.06U/min + Placebo群
Norepinephrine ~12µg/min + Hydrocortisone群
Norepinephrine ~12µg/min + Placebo群
・血圧目標値はMAP 65-75mmHg
・昇圧剤を極量まで使用した場合, HydrocortisoneもしくはPlaceboを使用するプロトコール. Hydrocortisoneは50mgを6時間毎に5日間投与. その後12時間毎に3日間, 24時間毎に3日間使用するレジメ. ショックが離脱できれば早期に減量可
それでも目標血圧とならない場合はOpen-labelの昇圧剤を使用.
母集団;
アウトカム
・Vasopressin vs Norepinephrineの比較では,
腎不全回避効果は両者で同等.(腎不全はAKIN stage 3以上で定義)
透析療法施行リスクはVasopressin群で有意に減少.
28日死亡リスクも同等
指先の虚血は有意差がないものの, Vasopressin群で増加傾向
昇圧剤はどちらもあまり差はないという結果.
Hydrocortisone vs Placeboの比較はこの論文では検討されておらず, 今後発表されると思いますが, 見る限りはあまり利点も無さそうな感じでしょうか.
2016年8月2日火曜日
炎症性筋疾患のMRI所見
炎症性筋疾患 (Inflammatory myopahies)は急性, 亜急性, 慢性経過の筋炎, 筋力低下を呈する疾患群であり, 主に多発筋炎(Polymyositis: PM), 皮膚筋炎(Dermatomyositis: DM), 封入体筋炎(Inclusion-body myositis: IBM)が含まれる.
・DMは補体関連性の微小血管炎に伴う筋炎, 皮膚症状, PM, IBMはT cell関連の筋壊死で, CD8+ T cellが関連している.
・IBMではアミロイド沈着と空胞性病変を認めることが多く, T cell由来の細胞障害 + 変性疾患の2面をもつとされる.
(Autoimmunity, May 2006; 39(3): 161–170)
炎症性筋疾患の分類
(Rheum Dis Clin N Am 28 (2002) 723–741)
上記に加えて, 近年Immune-mediated necrotising myopathy(IMNM)という分類もあり,
抗HMGCR抗体や抗SRP抗体, スタチン関連, 膠原病関連, 悪性腫瘍関連がある
(JAMA Neurol. 2015;72(9):996-1003.)
DM, PMの分類には修正Bohan and Peter分類が使用される
・皮膚筋炎(DM)はDM rashと筋炎所見を認めるものをPure DMと呼び, 他の膠原病所見を認めるものをOverlap Myositis(OM)と定義.
DM rash: ゴットロン徴候とエリオとロープ疹
DM−type calcinosis: 骨格筋を覆う皮下組織, 皮膚の石灰化
DM phenotype: DM rash and/or DM-type calcinosisを有し筋生検にて筋維束周囲の萎縮が認められる.
・Classical DM: DM rashと近位筋脱力 + CK ≥500IU/Lを認める病態
・Clinically amyopathic DM(CADM): DM rashを認め, 筋所見がない or 極軽微
・Adermatopathic DM: DM rashを認めない筋炎で生検にて筋維束周囲の萎縮を認める. フォローにてDM rash, calsonosisを認める
・Cancer−associated myositis: 筋炎診断から3年以内に悪性腫瘍が診断.
腫瘍の治療に伴い筋炎も改善する.
・Pure DM: 筋炎+DM rashを認め, overlapの所見を認めない
・Overlap CTD futures: 多関節炎, レイノー現象, 指の腫大, 末端皮膚硬化, SSc様の石灰化, 消化管蠕動障害, 肺線維症, Discoid Lupus,
抗DNA抗体陽性+低補体, SLEの診断クライテリア項目 ≥4/11, 抗リン脂質抗体症候群
・Overlap Myositis (OM): Pure DM + 上記CTDの所見を認める
・DM−specific autoantibodies: Mi-2, MJ, p155, SAE抗体
・Overlap autoantibodies: Jo-1, SSc関連抗体, Nucleoporin抗体.
(Medicine 2014;93: 296–310)
本題: IBMやDM, PMでのMRI所見はどのようなものがあるか?
孤発性封入体筋炎(sIBM) 32例で上下肢MRIを施行.
(Rheumatology 2011;50:1153 1161)
・患者は68±9歳. 罹患期間は8±5年間
CPKは男性例で739[121-3360], 女性例で265[44-802]
MRI所見:
・MRI所見は, ほぼ全例で脂肪組織浸潤が認められた
・上肢よりも下肢で強い
筋の部位と脂肪組織浸潤の程度, 頻度
筋の部位と炎症所見の頻度
筋の部位と萎縮の程度と頻度
・IBMでは炎症所見よりも脂肪組織浸潤所見が主な所見となる.
・また, 全体で生じるのではなく, 筋別, 区域性に出現することが多い.
部位別の頻度
・DMは補体関連性の微小血管炎に伴う筋炎, 皮膚症状, PM, IBMはT cell関連の筋壊死で, CD8+ T cellが関連している.
・IBMではアミロイド沈着と空胞性病変を認めることが多く, T cell由来の細胞障害 + 変性疾患の2面をもつとされる.
(Autoimmunity, May 2006; 39(3): 161–170)
炎症性筋疾患の分類
(Rheum Dis Clin N Am 28 (2002) 723–741)
上記に加えて, 近年Immune-mediated necrotising myopathy(IMNM)という分類もあり,
抗HMGCR抗体や抗SRP抗体, スタチン関連, 膠原病関連, 悪性腫瘍関連がある
(JAMA Neurol. 2015;72(9):996-1003.)
DM, PMの分類には修正Bohan and Peter分類が使用される
・皮膚筋炎(DM)はDM rashと筋炎所見を認めるものをPure DMと呼び, 他の膠原病所見を認めるものをOverlap Myositis(OM)と定義.
DM rash: ゴットロン徴候とエリオとロープ疹
DM−type calcinosis: 骨格筋を覆う皮下組織, 皮膚の石灰化
DM phenotype: DM rash and/or DM-type calcinosisを有し筋生検にて筋維束周囲の萎縮が認められる.
・Classical DM: DM rashと近位筋脱力 + CK ≥500IU/Lを認める病態
・Clinically amyopathic DM(CADM): DM rashを認め, 筋所見がない or 極軽微
・Adermatopathic DM: DM rashを認めない筋炎で生検にて筋維束周囲の萎縮を認める. フォローにてDM rash, calsonosisを認める
・Cancer−associated myositis: 筋炎診断から3年以内に悪性腫瘍が診断.
腫瘍の治療に伴い筋炎も改善する.
・Pure DM: 筋炎+DM rashを認め, overlapの所見を認めない
・Overlap CTD futures: 多関節炎, レイノー現象, 指の腫大, 末端皮膚硬化, SSc様の石灰化, 消化管蠕動障害, 肺線維症, Discoid Lupus,
抗DNA抗体陽性+低補体, SLEの診断クライテリア項目 ≥4/11, 抗リン脂質抗体症候群
・Overlap Myositis (OM): Pure DM + 上記CTDの所見を認める
・DM−specific autoantibodies: Mi-2, MJ, p155, SAE抗体
・Overlap autoantibodies: Jo-1, SSc関連抗体, Nucleoporin抗体.
(Medicine 2014;93: 296–310)
本題: IBMやDM, PMでのMRI所見はどのようなものがあるか?
孤発性封入体筋炎(sIBM) 32例で上下肢MRIを施行.
(Rheumatology 2011;50:1153 1161)
・患者は68±9歳. 罹患期間は8±5年間
CPKは男性例で739[121-3360], 女性例で265[44-802]
MRI所見:
・MRI所見は, ほぼ全例で脂肪組織浸潤が認められた
・上肢よりも下肢で強い
筋の部位と脂肪組織浸潤の程度, 頻度
筋の部位と炎症所見の頻度
筋の部位と萎縮の程度と頻度
・IBMでは炎症所見よりも脂肪組織浸潤所見が主な所見となる.
・また, 全体で生じるのではなく, 筋別, 区域性に出現することが多い.
部位別の頻度
sIBMとPMのMRI所見の違い:
炎症性筋症疑いでMRIを評価した220例において, MRI所見が評価可能なsIBMとPMはそれぞれ25例を比較.
(J Rheumatol 2002;29:1897–906)
・IBMの方が診断まで時間がかかっている
MRI所見の比較
・IBMでは脂肪浸潤が目立つ. (Grade 3-4は50%以上の浸潤所見)
筋萎縮もIBMで優位な所見
・PMでは後方筋の炎症や, 炎症所見のみのパターンが多い.
所見の例
まとめますと
炎症性筋疾患のMRI所見では,
IBMでは脂肪組織浸潤が目立つ点が特徴的. これはより長期間の経過が関与している?
PM/DMでは炎症所見が目立ち, 脂肪組織浸潤は乏しい傾向.
双方ともびまん性に所見があるのではなく, 区域性, 各筋で所見があるため,
身体所見を評価する際は筋を意識して評価することがポイント.
また筋生検を行う場合も罹患している部位を評価して生検部位を決めることが重要.
2016年7月30日土曜日
グラム染色の幽霊
グラム染色で見える幽霊、というと
このブログの読者ならば 「ああ、結核ね〜」となると思われる。
まあその通りです。
綺麗な写真がとれましたので、載せます。それだけっす。
抗酸菌はグラム陽性桿菌だが, 通常グラム染色では染まらない.
菌量が多い場合, 白く抜ける桿菌として見えることがあり,フォーカスをずらすと一部染まっている桿菌が見えます。
この検体はガフキー5号でした。
このブログの読者ならば 「ああ、結核ね〜」となると思われる。
まあその通りです。
綺麗な写真がとれましたので、載せます。それだけっす。
抗酸菌はグラム陽性桿菌だが, 通常グラム染色では染まらない.
菌量が多い場合, 白く抜ける桿菌として見えることがあり,フォーカスをずらすと一部染まっている桿菌が見えます。
この検体はガフキー5号でした。
2016年7月28日木曜日
イナビル1回投与によるインフルエンザ発症予防
インフルエンザ患者暴露後に内服することで, 発症率を有意に減少させることが可能.
・ただし, ルーチンの使用はオススメしない.
医療関係者や発症すると重症する可能性がある患者(慢性呼吸器疾患や心疾患, 代謝疾患, 免疫不全患者など), 介護者に限るべきである.
・予防投与はタミフルを3-10日間使用する方法が一般的
Laninamivir(イナビル®) 1回投与も有用.
インフルエンザ発症48時間以内の患者と接触歴がある家族を以下の3群に割り付け, 発症リスクを比較したDB-RCT
(Clinical Infectious Diseases® 2016;63(3):330–7)
・Laninamivir 40mgを1回投与
・Laninamivir 20mg/dを2日間使用
・プラセボ群
・アウトカムは10日以内のインフルエンザ発症(検査陽性, >37.5度の発熱, 2つ以上の症状)
・ステロイドや免疫抑制剤使用患者は除外
4wk以内にNeuraminidase阻害薬使用している患者も除外
妊婦, 授乳婦, Study中に妊娠希望している女性も除外
対象者は最初とDay 3,11に鼻咽喉スワブを採取される
・経過中に発熱や感染症状を認めた場合は受診するように指導され,その際 鼻咽喉スワブを採取
・スワブはインフルエンザPCRで評価する.
・経過中にインフルエンザと診断された場合は治療をうけて, 予防投与は終了
・発熱と症状の重症度を2日毎に評価する.
重症度は0-3で評価(0: なし, 1:軽度, 2:中等度, 3:重度)
母集団と、感染患者のデータ
2016年7月25日月曜日
海外渡航前のチェックポイント, 指導ポイント
旅行医学は重要な領域と思います.
NEJMより非常に良いReviewがでました. 個人的にとても勉強になりましたので, 簡単にまとめました. 一部端折っています.
(N Engl J Med 2016;375:247-60.)より
海外旅行を計画している人から相談されたら
・旅行先にもよるが, 旅行者の22-64%が何らかの疾患に罹患する
その大半が下痢や上気道炎, 皮膚疾患などの軽症例やSelf-limitedな病態であるが, 中には致命的な疾患も含まれる.
・近年旅行前にかかりつけ医に対して, 旅行先の医療情報や, ワクチン接種など, 対応を求めてくる事もあり, 非専門医でもその対応を身につけておくことが重要.
・感染症専門医に対応してもらった方が良いのは, 以下の場合
感染症リスクが高いアドベンチャー目的の旅行,
免疫不全患者,
慢性疾患がある患者,
海外へ長期間の移住を考慮している患者,
妊婦, 近々に妊娠予定の女性,
若年の小児,
複雑な旅行日程を立てる場合
旅行前のアセスメントはまず患者のリスク因子と旅行先, 目的を明らかにすること
その後ワクチンや渡航先の感染予防対策を.
リスクの評価方法とその対策
指導で最も多く, 重要なものは節足動物媒介感染症の予防と旅行者下痢症の予防
・虫除けスプレーや, 現地での生ものの摂取, 生水の摂取を避けることなど重要となる.
・これら指導, 教育は平易な言葉で分かりやすく行う事が大事.
・簡単な日本語で文章を作成し, 説明, 配布すると良い.
渡航前のワクチン
・渡航先で流行している感染症とワクチンの推奨はCDCのホームページで検索する.(http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/list)
ルーチンで推奨されるワクチン
・A型肝炎ワクチン: 毎月旅行者5000人に1人の割合で感染する.
たとえ渡航当日でも, ワクチン接種により94%で抗体陽性となるためどの時期でもよいので接種する事が推奨される.
・B型肝炎ワクチン: 未投与者のみ推奨.
長期間の滞在や, 現地民との接触が多いとその分感染リスクも増加
タトゥーや性交渉, 医療行為, 怪我などあればさらにリスクは高い
・Typhoid, paratyphoid fever(南アジア): Salmonella enterica serovar Typhiは多剤耐性菌が増加しており, ワクチン接種が推奨される.
これらが流行している地域への渡航ではワクチンを.
ただし, 予防効果は60-80%程度のみ
旅行先に応じて推奨されるワクチン
・その地域の流行状況でワクチンを考慮する.
例えば黄熱病は南アメリカ, Sub-Saharan Africaなど.
CDCのHPでチェックして考慮する.
米国で使用可能なワクチン
マラリアの予防
マラリアの流行地域に渡航する場合はマラリアの予防対策が必要となる
マラリアの予防は虫除けスプレーや長袖服の使用など教育が第一.
予防投与は抗原虫薬を使用する
・予防投与がない状態での感染率は西アフリカ旅行で3.4%/月, Indian subcontinentで0.34%/月, 南アメリカで0.034%/月.
・同じ国でも地域により流行, 非流行があるため, 滞在する地域を調べて対応を考慮.
予防投与の第一選択はatovaquone-proguanil(マラロン配合錠®)
・他薬剤よりも比較的副作用が少なく, 流行地域から離れて7日後に中止可能.
・予防効果はatovaquone-proguanil, ドキシサイクリン, メフロキンで同等
マラリアワクチンはアフリカの小児に対して作られたもので, 旅行者の感染予防としての使用は不適切となる.
他の節足動物媒介感染症の予防
デング熱は流行地域を旅行し, 罹患した患者の2%を占める
・重症例となることは稀.
・近年ワクチンも開発されたが, これは流行地域における使用であり, 旅行者に対する予防目的での使用はまだない.
・また, デング熱に対する有効な抗ウイルス薬もない
他にChikungunya, Zika virus 感染症も重要.
・皮疹, 発熱で発症し, デングに類似している
・流行地域も重なっている部分が多い
旅行者下痢症の予防
旅行者下痢症の定義は, 渡航中, 渡航後7日以内に発症した≥3回/24時間の軟便〜下痢で, 他に1つ以上の症状を伴う場合で定義される.
・多い原因はウイルス性, 細菌性であり, Protozoaは<5%程度
・持続期間は4-5日程度である事が多い.
・旅行前の指導, 注意にもかかわらず, 10-40%は旅行者下痢症を発症
細菌の関与も多い為, 旅行者下痢症の対応は経口補液, 対症療法に加えて抗生剤も考慮される.
・キノロン(LVFX 500mg, CTFX)もしくはアジスロマイシン 1gを1回使用.
もしくはアジスロマイシン500mgを3日間使用する.
・東南アジアやインド, ネパールではキノロン耐性菌が多い為, アジスロマイシンを使用する.
主な渡航先とワクチン, 感染症予防の推奨
感染症以外の注意点:
高山病の予防
登山以外に, 車や飛行機で高所に行く場合に生じる.
・急速に高所(2500m)に移動する場合, 25%で高山病を発症
2800m以上まで急速に上がる場合はほぼ全例で発症する.
・発症を予測するのも難しい.
予防としては≥2800mの高所に行く旅行者に対してはアセタゾラミド 125mg bidを, 高所にゆく24時間前より開始し, 最大標高に到達するまで継続する
重症例では肺水腫や脳浮腫を生じるが,酸素投与で改善する事が多い
・これらは3500m以上の高所でリスクが上昇するため
3500m以上を考えている旅行者は専門医にコンサルトを.
血栓症の予防
4時間を超えるフライト後, 1ヶ月におけるVTEの発症率は1/4600.
・2時間増加するごとにリスクは18%上昇する.
・6時間未満のフライトでは重度の肺塞栓となることは稀.
・予防策としては, 脱水状態を回避すること, 下肢の運動をすること.
リスクがある患者では, 弾性ストッキングの着用(15-30mmHg)も推奨.
また, 血栓傾向がある患者やVTE既往がある患者の場合, フライト前と, その24時間後にLWMHを皮下注するのも有用である.
・アスピリンの服用は予防効果はなし.
NEJMより非常に良いReviewがでました. 個人的にとても勉強になりましたので, 簡単にまとめました. 一部端折っています.
(N Engl J Med 2016;375:247-60.)より
海外旅行を計画している人から相談されたら
・旅行先にもよるが, 旅行者の22-64%が何らかの疾患に罹患する
その大半が下痢や上気道炎, 皮膚疾患などの軽症例やSelf-limitedな病態であるが, 中には致命的な疾患も含まれる.
・近年旅行前にかかりつけ医に対して, 旅行先の医療情報や, ワクチン接種など, 対応を求めてくる事もあり, 非専門医でもその対応を身につけておくことが重要.
・感染症専門医に対応してもらった方が良いのは, 以下の場合
感染症リスクが高いアドベンチャー目的の旅行,
免疫不全患者,
慢性疾患がある患者,
海外へ長期間の移住を考慮している患者,
妊婦, 近々に妊娠予定の女性,
若年の小児,
複雑な旅行日程を立てる場合
旅行前のアセスメントはまず患者のリスク因子と旅行先, 目的を明らかにすること
その後ワクチンや渡航先の感染予防対策を.
リスクの評価方法とその対策
指導で最も多く, 重要なものは節足動物媒介感染症の予防と旅行者下痢症の予防
・虫除けスプレーや, 現地での生ものの摂取, 生水の摂取を避けることなど重要となる.
・これら指導, 教育は平易な言葉で分かりやすく行う事が大事.
・簡単な日本語で文章を作成し, 説明, 配布すると良い.
渡航前のワクチン
・渡航先で流行している感染症とワクチンの推奨はCDCのホームページで検索する.(http://wwwnc.cdc.gov/travel/destinations/list)
ルーチンで推奨されるワクチン
・A型肝炎ワクチン: 毎月旅行者5000人に1人の割合で感染する.
たとえ渡航当日でも, ワクチン接種により94%で抗体陽性となるためどの時期でもよいので接種する事が推奨される.
・B型肝炎ワクチン: 未投与者のみ推奨.
長期間の滞在や, 現地民との接触が多いとその分感染リスクも増加
タトゥーや性交渉, 医療行為, 怪我などあればさらにリスクは高い
・Typhoid, paratyphoid fever(南アジア): Salmonella enterica serovar Typhiは多剤耐性菌が増加しており, ワクチン接種が推奨される.
これらが流行している地域への渡航ではワクチンを.
ただし, 予防効果は60-80%程度のみ
旅行先に応じて推奨されるワクチン
・その地域の流行状況でワクチンを考慮する.
例えば黄熱病は南アメリカ, Sub-Saharan Africaなど.
CDCのHPでチェックして考慮する.
米国で使用可能なワクチン
マラリアの予防
マラリアの流行地域に渡航する場合はマラリアの予防対策が必要となる
マラリアの予防は虫除けスプレーや長袖服の使用など教育が第一.
予防投与は抗原虫薬を使用する
・予防投与がない状態での感染率は西アフリカ旅行で3.4%/月, Indian subcontinentで0.34%/月, 南アメリカで0.034%/月.
・同じ国でも地域により流行, 非流行があるため, 滞在する地域を調べて対応を考慮.
予防投与の第一選択はatovaquone-proguanil(マラロン配合錠®)
・他薬剤よりも比較的副作用が少なく, 流行地域から離れて7日後に中止可能.
・予防効果はatovaquone-proguanil, ドキシサイクリン, メフロキンで同等
マラリアワクチンはアフリカの小児に対して作られたもので, 旅行者の感染予防としての使用は不適切となる.
他の節足動物媒介感染症の予防
デング熱は流行地域を旅行し, 罹患した患者の2%を占める
・重症例となることは稀.
・近年ワクチンも開発されたが, これは流行地域における使用であり, 旅行者に対する予防目的での使用はまだない.
・また, デング熱に対する有効な抗ウイルス薬もない
他にChikungunya, Zika virus 感染症も重要.
・皮疹, 発熱で発症し, デングに類似している
・流行地域も重なっている部分が多い
旅行者下痢症の予防
旅行者下痢症の定義は, 渡航中, 渡航後7日以内に発症した≥3回/24時間の軟便〜下痢で, 他に1つ以上の症状を伴う場合で定義される.
・多い原因はウイルス性, 細菌性であり, Protozoaは<5%程度
・持続期間は4-5日程度である事が多い.
・旅行前の指導, 注意にもかかわらず, 10-40%は旅行者下痢症を発症
細菌の関与も多い為, 旅行者下痢症の対応は経口補液, 対症療法に加えて抗生剤も考慮される.
・キノロン(LVFX 500mg, CTFX)もしくはアジスロマイシン 1gを1回使用.
もしくはアジスロマイシン500mgを3日間使用する.
・東南アジアやインド, ネパールではキノロン耐性菌が多い為, アジスロマイシンを使用する.
主な渡航先とワクチン, 感染症予防の推奨
感染症以外の注意点:
高山病の予防
登山以外に, 車や飛行機で高所に行く場合に生じる.
・急速に高所(2500m)に移動する場合, 25%で高山病を発症
2800m以上まで急速に上がる場合はほぼ全例で発症する.
・発症を予測するのも難しい.
予防としては≥2800mの高所に行く旅行者に対してはアセタゾラミド 125mg bidを, 高所にゆく24時間前より開始し, 最大標高に到達するまで継続する
重症例では肺水腫や脳浮腫を生じるが,酸素投与で改善する事が多い
・これらは3500m以上の高所でリスクが上昇するため
3500m以上を考えている旅行者は専門医にコンサルトを.
血栓症の予防
4時間を超えるフライト後, 1ヶ月におけるVTEの発症率は1/4600.
・2時間増加するごとにリスクは18%上昇する.
・6時間未満のフライトでは重度の肺塞栓となることは稀.
・予防策としては, 脱水状態を回避すること, 下肢の運動をすること.
リスクがある患者では, 弾性ストッキングの着用(15-30mmHg)も推奨.
また, 血栓傾向がある患者やVTE既往がある患者の場合, フライト前と, その24時間後にLWMHを皮下注するのも有用である.
・アスピリンの服用は予防効果はなし.
2016年7月23日土曜日
5-FUによる高アンモニア血症
Snap diagnosis:大腸癌, 多発肝転移にて化学療法を施行中の患者.
化学療法施行の翌日, 意識障害, 痙攣重積を来し搬送.
血中アンモニア値が>900µg/dLと著明高値であった.
化学療法はFOLFILI. さて, 原因は?
----------------
化学療法による高アンモニア血症
化学療法では, Cytarabine, vincristine, amsacrine, etoposide, L-asparaginase, cyclophosphamide, 5-fluorouracilを含むレジメで高アンモニア血症の報告がある.
・血液腫瘍(急性白血病, 多発性骨髄腫, リンパ腫)や, 幹細胞移植で高アンモニア血症の報告があるほか, 消化管腫瘍や乳がんに対する5-FUを含む化学療法で重度の高アンモニア血症, 脳症の報告が多い
(Leukemia & Lymphoma, September 2007; 48(9): 1702 – 1711)
5-FUによる高アンモニア血症
5-FUは稀であるが, 重度の高アンモニア血症を引き起こす事が知られている.
・5-FUの代謝産物であるFluoroacetateがクエン酸回路を障害し, その結果尿素回路も遅延し, アンモニアが蓄積する機序が推測
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構のHPでは, 2013年までに5-FUによる高アンモニア血症は131例で報告され, そのうち4例で死亡.
(日消誌 2015;112:287―296)
高用量5-FU(2600mg/m2を24hで持続投与/wk)を行った280例中, 5-FUに由来する脳症を併発したのは5.7%.
・投与〜発症までは19.5時間[10-30], 5-FU中断から改善までは15時間[3-72]
・脳症(+)患者は血清アンモニア高値, 乳酸値高値に関連性あり.
(British Journal of Cancer 1997;75:464-65)
日本国内で報告された20例の解析では,
・平均年齢は69.4歳, 男性例が15例と多い.
・またeGFRは49.9ml/minと軽度低下しており, 腎不全が関連している可能性がある.
20例中10例が1コース目で生じていた.
・平均アンモニア値は371.5µg/dLで, 治療後2日後には改善する例が大半であった.
・化学療法〜症状発症までの期間は1-6日. 17/20が3日以内
(日消誌 2015;112:287―296)
悪性腫瘍で5-FUの持続投与を行った患者群で, 一過性の高アンモニア血症による脳症を発症した29例, 32件の解析.
(Anti-Cancer Drug 1999;10:275-81)
・投与後〜脳症発症までは0.5日〜5日. 平均2.6±1.3日.
・血清アンモニア値は248~2387µg/dL
・感染症の併発や, 脱水症, 尿毒症, 便秘が関連している可能性.
・高用量では発症までの期間も短く, アンモニア濃度も高い.
感染症併発例も同様.
5-FUによる意識障害は他にもある
・Dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)欠乏症: DPDは5-FUを代謝する主な酵素であり, これが欠損している場合5-FUが蓄積を起こす.
5-FUが蓄積するとCSFへ移行し, 脱髄を生じる.
・PRES: 化学療法全般で生じる可能性がある
(Ann Surg Treat Res 2016;90(3):179-182)(Auris Nasus Larynx 35 (2008) 295–299 )
--------------
というわけで5-FUを含むレジメに伴う高アンモニア血症でした.
化学療法中の患者での意識障害や痙攣ではアンモニアはチェックする習慣をつけましょう.
稀ながら, あります.
自然に改善することも多いので, 軽症例は気づかれていない事が多いのかもしれません.
化学療法施行の翌日, 意識障害, 痙攣重積を来し搬送.
血中アンモニア値が>900µg/dLと著明高値であった.
化学療法はFOLFILI. さて, 原因は?
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化学療法による高アンモニア血症
化学療法では, Cytarabine, vincristine, amsacrine, etoposide, L-asparaginase, cyclophosphamide, 5-fluorouracilを含むレジメで高アンモニア血症の報告がある.
・血液腫瘍(急性白血病, 多発性骨髄腫, リンパ腫)や, 幹細胞移植で高アンモニア血症の報告があるほか, 消化管腫瘍や乳がんに対する5-FUを含む化学療法で重度の高アンモニア血症, 脳症の報告が多い
(Leukemia & Lymphoma, September 2007; 48(9): 1702 – 1711)
5-FUによる高アンモニア血症
5-FUは稀であるが, 重度の高アンモニア血症を引き起こす事が知られている.
・5-FUの代謝産物であるFluoroacetateがクエン酸回路を障害し, その結果尿素回路も遅延し, アンモニアが蓄積する機序が推測
(Auris Nasus Larynx 35 (2008) 295–299)
(日消誌 2015;112:287―296)
高用量5-FU(2600mg/m2を24hで持続投与/wk)を行った280例中, 5-FUに由来する脳症を併発したのは5.7%.
・投与〜発症までは19.5時間[10-30], 5-FU中断から改善までは15時間[3-72]
・脳症(+)患者は血清アンモニア高値, 乳酸値高値に関連性あり.
(British Journal of Cancer 1997;75:464-65)
日本国内で報告された20例の解析では,
・平均年齢は69.4歳, 男性例が15例と多い.
・またeGFRは49.9ml/minと軽度低下しており, 腎不全が関連している可能性がある.
20例中10例が1コース目で生じていた.
・平均アンモニア値は371.5µg/dLで, 治療後2日後には改善する例が大半であった.
・化学療法〜症状発症までの期間は1-6日. 17/20が3日以内
(日消誌 2015;112:287―296)
悪性腫瘍で5-FUの持続投与を行った患者群で, 一過性の高アンモニア血症による脳症を発症した29例, 32件の解析.
(Anti-Cancer Drug 1999;10:275-81)
・投与後〜脳症発症までは0.5日〜5日. 平均2.6±1.3日.
・血清アンモニア値は248~2387µg/dL
・感染症の併発や, 脱水症, 尿毒症, 便秘が関連している可能性.
・高用量では発症までの期間も短く, アンモニア濃度も高い.
感染症併発例も同様.
5-FUによる意識障害は他にもある
・Dihydropyrimidine dehydrogenase(DPD)欠乏症: DPDは5-FUを代謝する主な酵素であり, これが欠損している場合5-FUが蓄積を起こす.
5-FUが蓄積するとCSFへ移行し, 脱髄を生じる.
・PRES: 化学療法全般で生じる可能性がある
(Ann Surg Treat Res 2016;90(3):179-182)(Auris Nasus Larynx 35 (2008) 295–299 )
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というわけで5-FUを含むレジメに伴う高アンモニア血症でした.
化学療法中の患者での意識障害や痙攣ではアンモニアはチェックする習慣をつけましょう.
稀ながら, あります.
自然に改善することも多いので, 軽症例は気づかれていない事が多いのかもしれません.
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