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2022年1月26日水曜日

悪性リンパ腫における末梢血単球増多(Monocytosis)の意義

 DLBCLが強く疑われる患者さんにおいて, 単球数>1000が目についた.

しばしば単球増多を認める例はあるが, これはどのような意義があるのか, 調べてみた.


LymphomaとMonocytosis

・悪性リンパ腫患者では, しばしば診断時に単球増多が認められる. しかしその臨床意義は不明確であった. 

・M-MDSC(Monocytic myeloid-derived suppressor cells)と呼ばれる免疫抑制細胞の亜集団が報告されている.  

 未熟な骨髄系細胞の不均一な集団よりなり, 顆粒球型, または単球型のいずれかに特徴づけられる. 

 免疫抑制機能を持ち, Hostの抗腫瘍免疫を抑制し, 悪性腫瘍寛容に関連していることがわかっている.
 また, 腫瘍の血管新生や転移にも関連している.

 従って, Monocytosisは腫瘍の予後増悪に関連する可能性がある.

(Hematol Oncol. 2013 Jun;31(2):65-71.)


DLBCLとMonocytosis


単一施設において, 1996-2010年に診療したDLBCL 109例を解析

(Hematol Oncol. 2013 Jun;31(2):65-71.)

・HIV陽性やTransformed lymphoma, 免疫不全疾患に関連したリンパ腫は除外.

・単球>1000を超えるMonocytosisは17.6%であった.

・OSを減少させる因子は
高IPI, Monocytosis, 骨髄浸潤(+)が挙げられる.

・また, M-MDSCsの割合も健常人と比較して有意に多い結果であった.

 
(9.6%[5.6-19] vs 5.4%[4.8-7.7])


イスラエルとイタリアのDLBCLコホートより, 
1993-2010年に登録された未治療症例1017例を解析.

(Haematologica. 2014 Jan;99(1):125-30.)

・Monocyteと予後の関係, またそのカットオフ値を評価

・Monocyte>610となる症例は35%,
 >1000は10%で認められた.


 中央値は499[102-1413]/µL

・予後(5Y-OS)への関連

 Monotytosisは有意に5Y-OSの増悪に関連する.
 

 >630で死亡リスクの増大に関連するが,
 >1000ではさらにリスクは上昇する傾向.

 Rituximab治療の有無に関わらず, リスク因子となる


Montevideo-Uruguayの2箇所の大学病院において, 2002-0217に
Rituximabを含むレジメンで治療された171例のDLBCLを解析

(Rev Med Chile 2019; 147: 1553-1560)

・Primary CNS lymphomaは除外.

・Monocyto数と治療後のOS, Relapse free survivalの関連を評価した.
(Cutoffは病院で異なり, >700, >1000をMonocytosisと定義している)

・母集団の単球数は620[40-3720]/µL
, Monocytosisは33.3%で認められた.


R-IPIとMonocytosisで分けたOS

・R-IPI Good, PoorやMonocytosisは予後不良因子

・4Y-OSは 

 R-IPI very good群で100%
 R-IPI good群で73%
 R-IPI poor群で47%

・Median OSは
 

 Monocytosis(+)群で44.9M[12.8-76.9]
 Monocytosis(-)群で131.6M[88.8-174.4]


R-IPIで分けた時のMonocytosisとRFS, OSの関連

・R-IPI 0-2(very good, good)群において,
 

 Monocytosis(+)は有意にRFS, OSの短縮に関連
する

 Monocytosis(-)は到達せず.
 Monocytosis(+)はRFS 12.8[3-22], OS 40.8[0-83]

・R-IPI >2(poor)群では,
 

 Monocytosisの有無はRFSやOSの短縮に関連せず.
(双方とも予後が悪い)


T cell lymphomaではどうなのか?


PTCL症例でMonocyteを評価していた94例の解析

(Blood (2012) 120 (21): 2647.)

・このうちMonocytosis(>800/µL)を認めたのが23%であり,
 有意にOS増悪との関連が認められた.


Aggressive, non-primary cutaneous PTCL 251例の解析

(Blood (2012) 120 (21): 1608.)

・内訳はATLLが41%, PTCLが41%, PTCLU 11%, ALK(-)ALCL 4%, 他NKTCL, AILなど

・中央生存期間は10カ月間であり, 予後に関連する因子は
 

 IPI score, PIT score, リンパ球数<1000, 単球数>800の4項目が認められた


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B細胞, T細胞に関わらず, 悪性リンパ腫においてMonocytosis(>800-1000)が認められることは予後不良因子となる.

IPIとは独立した因子であり, IPIにてVery good, goodの低リスク群においても, Monocytosisは予後不良因子となるため, 気にしておく価値はありそうである.