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2021年11月10日水曜日

水泳による肺水腫: Swimming Induced Pulmonary Edema

(CHEST 2021; 160(5):1789-1798)

 Swimming Induced Pulmonary Edema. 水泳による肺水腫

・開放水域(主に冷水内)での水泳や潜水をきっかけとして, 
肺水腫を生じることがある

・急性の呼吸苦, 咳嗽を認める. 
さらに稀ではあるが, 著明な喀痰の増量や血痰を伴う例もある

・水泳の中断で症状は改善するが, 
ダイビング中に生じて事故につながる例もある.

・SIPEは典型的には基礎疾患のない健常人で生じる

SIPEの機序や病態生理, リスク因子はまだ完全に解明されてはいない.

・主な機序としては: 
冷水内での運動により, 末梢血管が収縮し, 中枢の血液プールが増加する.
その結果肺動脈圧の上昇, 毛細血管のダメージが生じ, 肺水腫が生じる


SIPEの頻度

スウェーデンの大規模Open-water swimming eventである Vansbrosimningenにおいて, SIPEの頻度を前向きに調査した報告

・このイベントでは, 15-20度の川で, 1000m, 1500m, 3000mの水泳を行う.


 参加者は>10歳の男女. 毎年11000人が参加する.

・2016-2019年に開催されたこのイベントにおいて,
 移動式医療ユニット(MMU)に咳嗽や呼吸苦で受診した患者を評価し, SIPEの頻度を調査.

・2016年はPilot studyとして, 本格的な調査は2017-2019年に行われた.


 症状, 経過, 身体所見よりSIPEを評価. 

 2018-2019年では肺エコーも施行し肺水腫を評価した.


アウトカム

・18歳以上の参加者の合計は45913名. 男性47%と男女はほぼ同等

 
水温の平均は17.3±1.5度, 気温の平均は18.3±6.8度

・MMUに受診した成人は405名. 322(80%)が呼吸器症状

・SIPEと判断されたのは, 2016-2019年を通して211例.
 頻度は0.44%[0.39-0.51]


 2016年は0.34%, 2017年は0.47%, 2018年は0.41%, 2019年は0.57%と年間で大きな差はない

SIPEの90%が女性(190例). 参加者に男女差はなく, 女性はリスクが高い.

 
女性参加者では0.75%, 男性参加者では0.09%

・また, 高齢者ほどリスク.

 
18-30歳では0.08%, 31-40歳では0.26%, 
41-50歳では0.65%, 

 51-60歳では0.76%, ≥61歳では1.1%


男女別の評価

・男性はMMUに受診する閾値が高いかも


 咳だけで受診する例はなし.

・喀痰に増量や血痰は3割近くで認める