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2021年11月14日日曜日

再発性口腔内アフタ Recurrent Aphthous Stomatitis

しばしばベーチェット病などを疑われて繰り返す口腔内潰瘍の紹介があります.

その時に常に考慮するこの疾患. 改めてReviewをいくつか読んでみました.

(Minerva Stomatologica 2018 June;67(3):125-8)(Dent Clin N Am 58 (2014) 281–297)(Arch. Immunol. Ther. Exp. (2014) 62:205–215)

Recurrent Aphthous Stomatitis

・頻度の高い口腔内潰瘍性疾患であり,
有痛性, 浅く, 辺縁明瞭な紅斑を伴う, 灰黄色の偽膜を伴う潰瘍

・アフタ出現前2-48時間に前駆症状として焼けるような疼痛を自覚する

・特に基礎疾患のない健常人に生じ, 主に頬粘膜や口唇粘膜, 舌に生じやすい

・一般人口の5-25%でRASが認められるとされる.

 
疾患定義や人種により頻度はばらつきがある.

・両親にRAS既往があると, 子供にも90%で認める報告がある
(既往がない場合は20%)

・後発年齢は10-19歳であり, 成人や高齢者で生じる場合は全身疾患に付随したものや免疫不全, 血液疾患, CTDを考慮する.

・同様に口腔内粘膜病変を生じる疾患として,
 ベーチェット病や周期性好中球減少症, 再発性のヘルペス,
 HIVによる口腔内潰瘍, IBDに伴う口腔内潰瘍が鑑別として重要


RASはMinor, Major, Herpetiform ulcerの3つに分類.

・Minorが80-85%を占める. 10mm未満の潰瘍で, 瘢痕を伴わず改善する. 別名Mikuliczアフタ

・Majorは1cmを超える潰瘍で, 数週〜数ヶ月持続し, 瘢痕を伴う


 全体の10%程度
別名Sutton病, Periadenitis mucosa necrotica recurrensとも呼ばれる

・Herpetiformは口腔粘膜全体に集塊状に多発する潰瘍. 潰瘍は2-3mmと小さい潰瘍だが, 大きいものも稀ではない. 
全体の1%程度と稀. ヘルペス感染との関連はない.


RASのEtiologyは未だ不明確である.

・免疫機序, 遺伝的機序, アレルギー, 栄養, 感染など複合的な要因が指摘されている. 

 また薬剤の関連もあり(カルシニューリン阻害薬など)

・HLAは,
HLA-A2, B5, B12, B44, 
B51, B52, DR2, DR7, DQの
関連が報告あり

・RASにおけるサイトカインの変化


RASの臨床経過, 特徴

・潰瘍出現の2-48h前に前駆症状として焼けるような痛みを自覚

・その後潰瘍が出現. 潰瘍は中心は浅く, 周囲の発赤は明瞭.
潰瘍部は黄灰色の偽膜を形成する.

・Minorは<10mmで, 10-14日の経過で瘢痕を伴わずに改善する
 

 アフタは最初の4-5日は非常に痛く, 食事摂取ができないこともある


・Majorは>10mmで, 数週〜数ヶ月持続. 瘢痕を伴う.

・BDやHIVに伴う口腔内潰瘍はMajorアフタに類似する

・病理所見は非特異的. 

 粘膜下の炎症性単核球の浸潤と肥満細胞浸潤
結合織の浮腫, 好中球の浸潤

・RAS病変の発症は細胞介在性免疫反応, T細胞の産生, TNF-αの産生と関連していると考えられる.

 RAS患者の末梢血単核細胞より多量のTNF-αが分泌されていることをも明らかになっており, TNF-αはRASの病因に重要な役割を果たしている可能性がある.


RASの対応, Management

Minorで頻度も少なければ外用薬で対応する


・NSAIDや鎮痛作用のある口腔内外用薬,
リドカインビスカスなど.

・症状が強く, 頻度も多い場合は外用ステロイドを考慮


 早期に使用することで潰瘍の持続期間の短縮や大きさの縮小効果が期待できる.

・抗菌薬の外用(テトラサイクリンなど)も鎮痛や治癒までの期間の短縮効果が報告されているが, アレルギーや口腔カンジダリスク上昇もあり, 注意が必要

 
(テトラサイクリンによる抗菌作用+抗炎症作用が期待できる)


外用治療はほぼ全てのRASで有効であるが, 
新規病変の予防効果はなく, 
Majorや頻回のMinorには不十分であることが多い

・上記患者群では内服治療考慮するが, リスク-ベネフィットを十分考える必要がある.

・短期的なPSLの使用はMajor RASで考慮される.


 長期的投与は副作用の観点から避けた方が良い.

・予防目的ならば, PSLではなく, 他の代替薬を考慮する.

 コルヒチンやダプソン, サリドマイドの報告がある