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2020年9月13日日曜日

SGLT-2阻害薬は糖尿病に関係なく, 心不全増悪を予防する(2020/9/13 UpDate)

(N Engl J Med. 2019 Nov 21;381(21):1995-2008.)
DAPA-HF: NYHA II-IV, LVEF≤40%を満たす心不全患者を対象とし, Dapagliflozin 10mg vs Placeboに割付け比較したDB-RCT.
・患者は≥18, NYHA II-IV, LVEF≤40%を満たしさらにNT-proBNP≥600pg/mL(12M以内のHF入院歴がある場合は≥400pg/mL, Af/AFが認められる場合は≥900pg/mL)を満たす.
患者は通常のHF治療(デバイス, 薬剤)が行われ背景に2DMがある場合は血糖降下薬は基本継続, 血糖に応じて調節.
 SU剤やインスリン使用患者は基本減量を推奨(HbA1c<7%の場合)

除外項目: SGLT2阻害薬による重大な副作用がある, 1DM, 低血糖症状, sBP<95mmHg, eGFR<30mL/min/1.73m2

上記患者群を, Dapagliflozin 10mg/d vs Placeboに割付け, 心不全増悪, 死亡リスクを比較した.
・DKA発症した場合や妊娠した場合は5mg/dに減量して継続.
脱水や低血圧, 腎機能の低下時は一時的な中断も可とした.

母集団
対象は4744. DM患者は42%. 新規にDMを診断されたのが3%
両群のBMI28 ± 6程度と肥満患者が多い.
死亡以外で薬剤を中止されたのが其々249, 258

アウトカム


・24ヶ月のフォローにおいて,
 心不全の増悪, 入院リスクは有意にDapagliflozin群で低下.
 さらに心血管死亡リスクも有意に低下する.
 全死亡リスクも低下.
・NT-proBNP値も有意に低下.
 体重もDapagliflozinで低下する

サブ解析
DMの有無や人種, 年齢別の評価でもアウトカムに影響はない
・NYHA IIの群の方がよりSGLT-2阻害薬の恩恵は大きいかもしれない

(2020/9/13 UpDate)
EMPEROR-Reduced: NYHA II-IV, EF≤40%の心不全症例 3730例を対象としたDB-RCT.
(N Engl J Med. 2020 Aug 29. doi: 10.1056/NEJMoa2022190.)
・通常の心不全治療に加えて, Empagliflozin 10mg/d vs Placebo群に割り付け, 心血管アウトカムを比較した

より心血管イベント高リスク群を導入するため, EF >30%の患者群は過去12カ月以内の心不全による入院歴がある患者, またはNT-proBNP高値の患者に限定(EF 31-35%では≥1000pg/mL, 36-40%では≥2500pg/mL, ≤30%の群では≥600pg/mL, さらにAfがある場合はNT-proBNPカットオフは2倍とした)

母集団
・NYHA IIが2/3を占める.
・BMIは28前後.
・EF≤30%が7割を占める

アウトカム



・心不全による入院リスクは有意に低下: HR 0.69[0.59-0.81]
心血管死亡リスクは有意差なし.
・eGFRの低下はEmpagliflozin群で緩徐となる

Sub解析
NYHA IIの群やLVEF30%の群でより恩恵は大きいかも

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DMの有無にかかわらず, SGLT-2阻害薬は心不全の予後を改善させる
利尿作用以外に, 心筋の代謝, イオントランスポーター, 線維化, Adipokine, 血管への作用が指摘されている.

DAPA-HFに続いて, EMPEROR-Reducedが発表.
後者の論文では心血管死亡リスクは改善させなかった. 
心不全増悪や入院リスクを改善させる結果は同じ.

Sub解析ではどの群もNYHA IIで恩恵が大きい様子. 後者ではさらにEF≤30%で恩恵が大きい可能性が示唆.

双方のStudyともやはり海外らしく肥満患者が多い.

ルーチンの使用ではなく, 適応を吟味して使用すべき薬剤と言えるかもしれない.