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2013年6月13日木曜日

ARDSに対する腹臥位呼吸. 2つのRCT.

Prone-Supine II study(JAMA 2009;302:1977-84)とPROSEVA trial(N Engl J Med 2013;368:2159-68.)について.

Prone-Supine II study;
 ARDS (PEEP 5-10でP/F <200を満たす患者群) で挿管管理された342名のOpen-label RCT.
 腹臥位呼吸 vs 仰臥位のまま管理群に割り付け, 予後を比較.
 腹臥位呼吸は20時間/日行うプロトコール.

アウトカム;
Outcome
Prone
Supine
全患者RR
中等症患者RR
重症患者RR
28d mortality
31.0%
32.8%
0.97[0.84-1.13]
1.04[0.89-1.22]
0.87[0.66-1.14]
ICU mortality
38.1%
42.0%
0.94[0.79-1.12]
1.00[0.83-1.22]
0.83[0.60-1.15]
6-mo mortality
47.0%
52.3%
0.90[0.73-1.11]
0.98[0.76-1.25]
0.78[0.53-1.14]



 腹臥位呼吸, 仰臥位のまま管理群で死亡リスクに有意差無し.


Complication
Prone
Supine
P
鎮静, 筋弛緩増量
17.9
12.5
<0.001
気道閉塞
10.3
6.6
<0.001
一過性Sat低下
15.4
11.3
<0.001
嘔吐
4.4
1.7
<0.001
低血圧, 不整脈
18.0
12.4
<0.001
Loss of venous access
1.23
0.25
<0.001
気管チューブのズレ
0.87
0.40
0.02


 それどころか, 仰臥位では合併症が増加してしまうという結論(Event/100-日)

PROSEVA trial;
 発症36時間以内の重症ARDS(FiO2 ≥0.6, PEEP≥5, VT 6ml/kgの条件下でP/F<150) 466名のRCT.
 16時間以上の腹臥位呼吸群 vs 仰臥位で維持する群に割り付け28日死亡率を比較.

腹臥位呼吸は最低16時間行い, 以下を満たした場合に解除.
 ● 仰臥位で4h以上, P/F>150(PEEP ≤10, FiO2 ≤0.6)を維持. 仰臥位と比較してP/Fが20%以上低下した場合
 ● 腹臥位で何らかの合併症を生じ, 継続できない場合
 腹臥位→仰臥位に戻してから, 呼吸状態増悪した場合は, 再度腹臥位呼吸を開始する.

仰臥位群は以下を満たさない限り, 仰臥位を維持; 
 NO吸入, ECMOなどレスキューを用いても, P/F <55となってしまう(PEEP, FiO2はMax)

アウトカム;

 腹臥位呼吸の方が有意に28日死亡率, 抜管成功率, 呼吸器離脱率が良好.

この2つのStudyの結果の違いは何処から来るのか?
明らかに異なるのは母集団.
そもそもの母集団が, Prone-Supine IIではP/F <200である一方,
PROSEVAではP/F<150であり, 当然SAPS II, SOFA scoreはPROSEVAの方が重症が多い.

腹臥位呼吸のプロトコールも, PROSEVAの方がより細かく設定されている印象.

2014年5月に発表された腹臥位呼吸のMeta-analysis
(Crit Care Med 2014; 42:1252–1262)
2013年5月までに発表された11 RCTsのMeta (N=2246)
死亡リスクを評価したForest plot.

Studyの種別の死亡リスクを評価したForest plot.
重症のARDSにおいて, ≥10h/dの腹臥位呼吸で有意差あり.
Lung protective ventilationも大事.

合併症:
褥瘡や気管チューブ閉塞リスクが上昇

Meta-analysisでは死亡リスクの減少効果が示された.
特に重症のARDS(P/F≤150)において, Lung-protective ventilationをしていて, 1日あたり10時間以上の腹臥位呼吸をしている場合で死亡リスクの減少効果が顕著となる.

重症例では考慮しましょうという推奨で良いと思われます。