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2019年6月22日土曜日

痙攣と高アンモニア血症

高アンモニア血症は主に肝硬変や門脈-静脈シャントで生じることが多く,
他に多い原因はバルプロ酸や化学療法(5-FU)
さらに稀なものとしては尿素サイクル異常が原因として挙げられる.

ICU患者で肝不全(-) 且つ高アンモニア血症を呈した患者の解析
・Mayo clinicにおいて, 2004-2015年に診療した, ICU患者のうち高アンモニア血症を認めたのは3908このうち肝不全(-)例は167(4.5%)であった.
・肝硬変(-)群におけるアンモニア値は68µg/dL[58-87]
関連因子は代謝性疾患, 栄養/消化管薬剤, 腎不全, 痙攣, 臓器移植後活動性の血液腫瘍が挙げられる.
(Crit Care Med 2018; 46:e897–e903)

痙攣発作でもアンモニアは上昇する
これは筋における代謝が影響していると考えられている
(American Journal of Emergency Medicine 31 (2013) 1486–1489)

肝硬変(-)の痙攣患者121例を前向きに評価した報告@台湾
(Epilepsia, 52(11):2043–2049, 2011)
・痙攣患者でER受診時に高アンモニア血症を認めたのは67.77%
特に全般性強直間代性発作やてんかん重積でアンモニア上昇する頻度が高くアンモニアも高値となる.

上昇例と非常症例の比較
・全般性強直間代性発作では有意に上昇する.
アルコール関連でも上昇しやすい

痙攣による高アンモニア血症は数時間で正常化する一過性の経過となることがポイント
・500分後のフォローではほぼ全例で正常化

例えば, 原因不明な意識障害患者において, 一過性の高アンモニア血症を認めた場合, それは痙攣後かもしれない.

ERにおける一過性の高アンモニア血症は痙攣による意識障害を示唆する
(Eur Neurol 2010;64:46–50)
・成人でERに搬送された痙攣患者と他の意識障害患者において, 一過性高アンモニア血症を評価.
比較対象の意識障害症例の原因肝性脳症が11例含まれる

両群の比較
・高アンモニア血症の頻度は61.3% vs 19.6%であるが一過性なのは54.8% vs 0%と強く痙攣発作を示唆する情報となる
・痙攣群で高アンモニア血症を認めた19例全例で, 1-2h後の評価にてアンモニアは低下を認めた.

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まとめると,
・痙攣発作, 特に全般性強直間代性発作やてんかん重積では高率で高アンモニア血症を合併する
・この場合, アンモニアは数時間で低下, 正常化する.
・この一過性の高アンモニア血症を評価することで, 意識障害患者における痙攣の可能性を検討可能かもしれない.

2019年6月21日金曜日

DMARDの周術期感染症リスク

(Ann Intern Med. 2019;170:825-836. doi:10.7326/M18-2217)

RA患者で関節形成術を行われた患者を対象とした後ろ向きCohort.
・患者はRA, 膝関節もしくは股関節の関節形成術(初回, Revision含む)を行われた患者で, 且つ最近Abatacept, Adalimumab, Etanercept, Influximab, Rituximab, Tocilizumabを術前に使用された患者を対象とした.(8週以内, RTXに限り16週以内, 各薬剤は1年以内に3回以上, RTX2回以上使用している)
アウトカムは術後感染症のリスク(術後30日以内の院内感染症, 術後1年以内の人工関節関節症)をステロイド投与量, 使用DMARD間で比較.
 比較はPropensity socreを用いた, IPTW法で行なった.

母集団

アウトカム: 各群における感染症頻度

薬剤間の比較

・RTXは人工関節感染症のリスクは他のDMARDよりも低い可能性
・院内感染症リスクはDMARD間で特に差はない.
・ステロイドはPSL>10mgでは有意な院内感染症, 人工関節感染症リスクとなる.



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RA患者の周術期感染, 人工関節感染症はDMARDの種類よりもPSL投与量の方が影響する

2019年6月15日土曜日

慢性の「低」体温

不明熱よりもある意味稀な病態、慢性の低体温症

70歳代女性. 脳梗塞既往, 糖尿病(HbA1c 6台)の既往あり.
今回ふらつきで受診し, 左側頭葉に脳腫瘍を疑わせる像が認められた.

精査目的にて入院となったが, 入院後体温が30-32と低値が持続
入院前は体温は不明.

ということでコンサルト.

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本人に自覚症状はなく, 寒いという感覚もない.
むしろ布団をかけると暑がり, 発汗もある. とはいえ体温が低いので汗も冷たい.

血液検査では特に異常は認めない. 炎症もなし. 電解質異常もなし.
血球減少もなし.
甲状腺正常. 副腎機能正常.

深部体温を測定すると, 32度(体表温30.7度) と低い.
心電図変化なし.

また数年前に脳梗塞で入院していた際の熱型表を取り寄せると, 体温は正常(36-37度)であった
最近の近医受診時でも体温の記録があり、その時は36度


・・・なんだこれ?




続発性低体温症, Episodic hypothermia
低体温は35度未満で定義され偶発性低体温症が問題となることが多いが疾患に続発するものもある
・主に内分泌疾患, 代謝疾患, 薬物, 中枢神経疾患, 皮膚機能障害が原因としてあげられる.
・中枢神経疾患としては,
 脳血管障害, 脳腫瘍, Wernicke脳症, MS, 結核性髄膜炎, 頭部外傷など
 脳梁や前脳基底核の形成不全・奇形を伴う多汗と周期性低体温症(Shapiro症候群)というのもある
 脳腫瘍は視床下部付近の腫瘍が原因となる報告がある
(日本老年医学階雑誌 1990;27(1):69-73)(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1981 Mar;44(3):255-7.)

(Eur J Paediatr Neurol. 2014 Jul;18(4):453-7.)

脳腫瘍患者において, 低体温が初発症状となった報告.
・国内より, 84歳女性, 直腸温にて持続的に35度以下を示し精査の結果第三脳室近傍に30x30x35mmの嚢胞性腫瘍を認めた報告
 他に内分泌機能を含めて明らかな異常を認めず視床下部圧排による体温調節機能の異常と判断された.
・また感染症合併時は正常に体温は上昇を認めた.
(日本老年医学階雑誌 1990;27(1):69-73)

35歳男性, 第三脳室に浸潤する毛様細胞性星状細胞種の術後に繰り返す周期性低体温を呈した報告
・術後尿崩症や低Na血症を呈し, 対応.
・術後27日目に深部体温31, 徐脈, 意識障害を呈し, ICU管理
 その後も周期性に発汗を伴う低体温, 徐脈, 意識障害エピソードあり
 Clonidine, Levodopa, Citalopramを試したが不応 
(Acta Neurol Belg. 2015 Dec;115(4):753-5.)

他に悪性腫瘍によるEpisodic hypothermiaの報告では腎細胞癌からの視床下部転移の症例視床下部原発の脳腫瘍症例左前頭葉の異所性灰白質での症例報告がある.
・間脳のてんかん発作による低体温の機序やバルプロ酸やカルバマゼピンにより改善した報告から, てんかんの関連が示唆されている.
視床下部におけるてんかん波は通常の脳波検査では評価しにくく抗てんかん薬による治療的診断も考慮する
(Neurol Clin Pract. 2014 Feb; 4(1): 26–33.)

脳腫瘍以外の中枢疾患では, MSでの報告が比較的見つかる
他は上で書いたようにウェルニッケや結核性髄膜炎, 脳外科術後
(Acta Neurol Scand. 1992 Dec;86(6):632-4.)

MSでは視床下部病変によりEpisodic hypothermiaを生じる報告がいくつか報告されている.
・Mayo clinicにおいて1996-2015年に受診した患者のうちMSと低体温で検索した結果, 34例でMSと低体温の併発が認められた.
このうち22(94%)Episodic hypothermiaと進行性のMS症例
・その多く(56%)で感染症の関連が疑われたが, 照明されたのは28%のみ
MRIにて視床下部病変を認めたのは4(14%)のみ.
 脳幹病変は82%と多い. 活動性の炎症性病変は11%のみ
(Mult Scler. 2019 Apr;25(5):709-714.)

低体温による臓器障害では, 肝障害, 膵炎, 胃潰瘍, 血球減少, 意識障害,  徐脈, 奇異性発汗などが報告がある
(Postgrad Med J 2008 84: 282-286 )


Shapiro syndrome
Episodicな発汗, 低体温を呈する先天性疾患
脳梁の低形成を伴うが, 認められないケースもある.
(Eur J Paediatr Neurol. 2014 Jul;18(4):453-7.)
・先天性であるものの, 成人発症例もあり. 発症年齢は幅広い
 また, 外傷などで脳梁損傷があり, その数年後にEpisodic hypothermiaを生じる報告もあり, これも広義のShapiro syndromeとしている報告もある(European Journal of Neurology 2007, 14: 224–227 )

Shapiro syndromeの症状

・脳梁形成不全は40%
・発作は30分以上のことが多く1回以上が65.8%

周期性低体温で行われる治療
(Neurol Clin Pract. 2014 Feb; 4(1): 26–33.)
・クロニジンが使用される例が多い
 また上記の通りてんかんが疑われる場合は抗てんかん薬を試すのも手であろう

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持続性の低体温症の報告は非常に少なく, まとまったものはない.
中枢系では視床の障害を呈するもので報告がある.
今症例では側頭葉内側の脳腫瘍はあるが, 視床への浸潤は画像上明らかではない.
しかしながら, 他に内分泌障害もない, 薬剤も原因となるものは乏しい.

そして何よりも少しでも温めると「暑がり, 発汗する」ということからは代謝の低下ではなくセットポイントが異常であると考えている.

特に低体温による臓器傷害(報告では汎血球減少を生じる例もある)もないため,
現時点では経過観察となる.
脳腫瘍の治療とともにどうなるかが興味深い.

2019年6月12日水曜日

人工呼吸器WeaningはPSV30分で

(JAMA. 2019;321(22):2175-2182. doi:10.1001/jama.2019.7234 )

ICU24h以上挿管・人工呼吸器管理をされている成人症例で, Weaning criteriaを満たした患者群を対象としたRCT.
・Weaning criteriaは以下;
 挿管管理となった原因疾患が改善している
 血行動態安定(昇圧薬無しでsBP 90-160, HR<140)
 GCS 13以上
 呼吸安定(FiO2≤0.4, RR<35, 自発VT>5mL/kgSpO2>90%, RR/VT <100/min/L, 最大吸気圧>15cmH2Oを満たす)
 持続的な気管分泌物を認めない(8時間で3回未満の吸引回数)

除外項目: 気管切開, 再挿管拒否, 主治医の判断で他のWeaningが望ましいと判断される症例, IC不十分

・上記患者群を,
 T-pieceに変更し, 2時間維持するSBT群(患者にとって労力が大きい)と
 PS(8cmH2O, PEEP 0)30分維持するSBT群(労力が小さい)に割り付け抜管成功率, 予後を比較.

・SBTの失敗基準は以下
 興奮, 不安, 意識障害(GCS<13)
 呼吸回数>35/ and/or 呼吸補助筋の使用
 FiO2 >0.5SpO2 <90%
 HR>140/分または基礎値より20%以上の上昇
 収縮期BP<90mmHg
 不整脈の誘発

・抜管後72hの呼吸不全, 再挿管を失敗と定義.
 呼吸不全は以下の1項目以上で定義:
 呼吸性アシドーシス(pH<7.32), PaCO2>45mmHg, SpO2<90%(FiO2 >0.5), RR >35, 意識障害(GCS<13), 重度の興奮, 臨床的に呼吸不全と判断される場合

母集団

アウトカム
・PSV 30分の方がSBT成功率は良好(82.3% vs 74.0%)抜管後の再挿管率は変わらない結果.
・1回目のSBTで成功する例もPSV30分で多い

再挿管の理由は両者で有意差なし

サブ解析
・全体的にPSV30分によるWeaningの方が良い印象
 COPD患者でも同様

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安定した挿管患者ではPSV 30分間のSBTの方が, Tピース2時間よりも患者の労力は少なくすみ, 抜管も早くなる. さらに再挿管リスクは変わらない結果.