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2022年10月25日火曜日

COVID-19による心外膜炎

原因不明の大量心嚢水貯留があり, 穿刺を行い排液.

その後の経過は良好で, 退院となった高齢男性の患者さん.

心外膜炎の精査で自己免疫性疾患の可能性はないですか?との相談.


元々元気で特に既往もなく, 今回の検査ではANA 160(Homo)のみ. 特異抗体は全て評価されて陰性を確認.

穿刺も一度おこなってから再貯留もなく経過している.

身体所見や病歴でも膠原病や自己免疫性疾患を疑う所見は無い.



色々相談し, 可能性低いこと, 多いのはウイルス性ですということなど説明していると, 

「そういえば, コロナ陽性になったんですよ、その時!」との話(紹介状には一言もそんなこと書いてない...)




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COVID-19関連の心外膜炎

英国における16歳以上のSARS-CoV-2感染例,
 ワクチン接種者と心筋炎/心外膜炎リスクを評価

(Nat Med. 2022 Feb;28(2):410-422.)

・ワクチンはChAdOx1, BNT162b2, mRNA-1273の3種類で評価.
 

 接種前後の日数別に上記疾患発症リスクを評価.

・SARS-CoV-2検査陽性例は検査陽性日を診断日とし, 
それからの発症リスクを評価した.


ワクチンや感染とリスク

・心筋炎のリスクはワクチンの初回投与, 2回目投与で有意に上昇
することは有名だが, 

 SARS-CoV-2感染でも上昇し, そのリスク上昇の程度は感染の方が高い(IRR 30以上)

心外膜炎や不整脈は感染例でリスクが上昇する

 ワクチン接種ではこれらのリスク上昇はほぼない(一部で不整脈が上昇している)

100万人あたりの増加症例数

・心筋炎はワクチンでは100万あたり~10例ほど増加する. COVID-19感染例では40例も増加.

 ワクチンでの上昇例は<40歳で特に多い傾向がある.

・心外膜炎はワクチンではほぼ上昇を認めない. 感染例でのみ上昇する. 100万人あたり6例. 

 不整脈も感染例で増加. 


COVID-19感染による心外膜炎症例のSystematic review

(Cureus. 2022 Aug 12;14(8):e27948.)

・COVID-19感染と心外膜炎(心筋炎合併含む)の症例報告33例を抽出.

・症状は胸痛が60.6%, 発熱は51.5%, 呼吸苦 51.5%, 咳嗽 39.4%の頻度

・治療の多くはコルヒチンとNSAIDで行われ,
 心嚢穿刺など処置が必要となった例が13/33


ちなみに, ワクチンによる心筋炎はCOVID-19に限ったことではなく, 基本的に色々なワクチンで報告がある.

ワクチンによる心筋炎リスクを評価したMeta

(Lancet Respir Med 2022; 10: 679–88)

・ワクチン全体による心筋炎発症率は100万回あたり33.3[15.3-72.6]例.

・COVID-19ワクチンと他のワクチンで差はない.


 COVID-19ワクチン: 18.2[10.9-30.3]


 非COVID-19ワクチン: 56.0[10.7-293.7], p=0.20

・COVID-19ワクチンでは, 男性例, 30歳未満, mRNAワクチン,
 2回目接種後が有意にリスクが高い.

・発症率と重症度は別物なので、そこは勘違いしないこと

 (感染による心筋炎のほうが基本的に重篤となる)

2022年10月20日木曜日

本の感想: レジデントのための内科診断の道標

献本御礼

レジデントのための内科診断の道標


小嶌祐介先生は, 京都の洛和会丸太町病院 総合診療科の上田剛士先生の元で総合診療を学び, 現在は市立奈良病院の総合診療科で週に2回の外来をしておられます.

自分も洛和会音羽病院, 丸太町病院で上田先生に教えを受けていたので, 同門といっても差し支えないでしょう. 

その影響もあって, この本はすごく馴染みがある, 親和性が高いように感じました.


上田先生の臨床は, データをしっかりと把握し, それを目の前の患者に生かして臨床を行い, 自らの経験を蓄積する, という流れがあります. 丸太町病院に集う医師はそのような姿勢に陶酔, 憧れてその門を叩きますが, 実際そのスタイルを習得し, その後も長く, 丸太町病院を離れても突き詰め続けられる医師はそこまで多くありません.

小嶌先生の本を読んで, これがそれを突き詰めた先生の行き着く先なのだということを実感しまた. 素直にすごいです.


本の内容

EBMを理解するための感度/特異度の説明や批判的吟味などの基本的な内容から始まり, 咳嗽や呼吸困難, 腹痛, 意識障害といった主訴別の各論に入ります.

文章は非常にシンプルでわかりやすく, 読みやすい割には重要な点はしっかり抑えられています. 


EBMを理解するための序章なんかはまず研修医は10回は読み込むべき内容です.

方針を変えない検査は意味がない, 検査のStudyは対象集団が何かを意識しないと実臨床で使えない, 新しい検査はどのタイミングで行うべきかを意識して採用するといった記載はシビレます. 

各論では症例をベースとし, その疫学, 身体所見の感度/特異度, 検査に続きます. 緊急的な対応が必要となる意識障害や吐血下血などは実臨床に則して緊急対応, 重要な疾患からの鑑別が意識して記載されています.


記載内容は主に診断とその疾患の概要の解説までであり, 治療内容まではカバーされていません. それでも情報量は凄まじく, この内容を全部知っているぜ なんて人は恐らくはいないでしょう. 


特に読むのを勧めたいのは初期〜後期研修医です.

まずしっかり読み込んで, この内容を頭と体に叩き込み, 生かしつつ臨床をしてみてください. 

その状態で患者を診る, 診療するという経験を積み重ねることが優れた臨床医への成長につながります. 知識がないまま闇雲に臨床をしていても, 変なBiasがはいって自惚れた医師になるだけです.

是非、良い経験を積むために, この本を有意義に使ってください.

心から超おすすめします.



最後に, 

小嶌先生は夫婦共に医師で, 子供は三人.

私も夫婦共に医師で子供は二人.

この本を書くのに3年費やしたと聞きました. この分量を1人で. 3年間.

瞼を閉じるとそのキツさが目に浮かびます. 僕もあの地獄の思い出が蘇ります. 

PCに向かいすぎて, 坐骨神経痛を発症し, 歩けなくなったあの思い出. 毎日毎日仕事が終わった後に日付が変わるまで書き続けたあの思い出...


お疲れ様でした. しばし休んでください. 

どうせ2年後あたりに改訂の話きますから. 間違いなく.

2022年10月19日水曜日

ビタミンB12の補充方法の比較: 経口と筋注

VB12はDNA合成に重要な栄養素であり,
 成人の1日必要量は1-2µg/d, 最近は3-4µgが推奨

食事中には7-30µg/日が含有され, この内1-5µgが吸収される.


貯蔵量は2-5mg/bodyであり, 従って摂取や吸収の低下〜欠乏までは3-5年かかる


欠乏の背景疾患には消化管障害や外科切除後, メトホルミンやPPIなどの薬剤による吸収効率の低下が主となる.


従って補充方法も経口よりもIMが好まれてきたが,
 いくつかのRCTでは経口補充でも十分との報告がある.

2018年にコクランが経口とIMを比較した3つのRCTをMeta-analysisしたが,
 Study間に方法の差が大きく, またNも少ないため,
 より良質な研究が望まれるとの結論.

(Cochrane Database Syst Rev. 2018 Mar 15;3(3):CD004655.)


経口Vit B12と筋注を比較したRCT(OB12)

(BMJ Open. 2020 Aug 20;10(8):e033687.)

・スペインのPrimary care settingの多施設研究

 .
≥65歳のVB12欠乏症例283例を対象とし,
 経口補充群とIM投与群に割り付け比較.

・患者はプライマリケアを何かしらの理由で通院中の高齢者で,
 血液検査にてVB<179pg/mLを認めた群
 

・除外項目: VB12欠乏の治療中, 重度の神経/精神症状, 視神経萎縮, 葉酸欠乏合併, Stage 4 CKD, 吸収不良性疾患/手術の施行歴(十二指腸-回腸に影響が及ぶ疾患や手術, 炎症性腸疾患, Celiac disease), 慢性膵炎, 骨髄異形性/血液悪性腫瘍, 血友病/他の凝固障害で注射が困難, 重度の全身性疾患, HIV, HBV, HCV, 使用薬剤への過敏など

・IM群では1mgを隔日投与 1-2週間. 1mg/wkを3-8週目,
 以後1mg/月を9-52wk継続.

・経口投与群では1mg/dを1-8wk投与し, 以後1wk/週を9-52wk


母集団


・内因子抗体は10.8%

・PPI, メトホルミン使用例は
半数近い.

・胃切後症例はほぼ無し


アウトカム: VB12 ≥211pg/mL達成

・治療期間中のVB12上昇は両群で有意差は認めない.


 経口は連日投与の8wkで上昇は良好だが, 週1回投与となると下がる傾向がある

二次アウトカム

・QOLやVB12欠乏関連症状の頻度も両者で変わらず.
 

 しかしながらIM群ではBaselineの半数に減っている一方で
経口群ではN自体変化がない.

・そもそも症状/所見を認める患者が少ない


この経口維持量としての1mg/wkというのは妥当なのか?

・≥70歳の120例のビタミンB12欠乏患者に対して, 
2.5, 100, 250, 500, 1000µg/日を16日間投与し,
メチルマロン酸濃度を評価したRCT.(Arch Intern Med. 2005;165:1167-1172)

・投与量に依存してVB12やVB12欠乏のマーカーとなるMMA, ホモシステインの変化は良好に認められる. 

・補充時の投与量は少なくとも≥1000µg/日とすべきだし, 維持量としてある程度必要な可能性がある. 少なくとも1g/wkはやや少ない可能性がある.

 でも維持量としては連日の継続は不要なのであろう(よく見るやつ).


胃切除症例は?

26例の胃全摘を行った患者群を対象に,
 全例でBV12 1mg/日を経口投与を行い, 3ヶ月毎に長期間フォロー (GE Port J Gastroenterol. 2018 Apr;25(3):117-122. )

・患者は64歳[29-79]で, 胃全摘後65ヶ月[3-309]経過していた.

・Study導入時にVB12のIM投与をしていた例が17/26. 
 

 残り9例はVB12投与はされていなかった.

・VB12正常例は25/26

・経口補充に切替/開始後からも
VB12値は上昇し, 維持が可能


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高齢者におけるビタミンB12欠乏の補充では, 吸収する小腸が使用できれば基本的に経口内服で補充は十分に可能である. 

内因子抗体や胃切後でもそれは変わらない

補充量は1mg/日程度の使用量でよく, まず2-3ヶ月継続し, その後は減量が可能. 

ただし週1回程度の使用では再度欠乏するリスクがあるので, その点は注意. 個々に合わせて減量がBetterか.

 例えば、胃切除や内因子抗体例では連日で継続とか。そうでなければ週3回〜週1回とか。

 1日1錠で見るとか(500µg)

2022年10月13日木曜日

症例: M蛋白血症, 血小板減少, 軽度Monocytosisを認める患者の関節症状

60歳台の男性. 

7年前より血小板減少(10万前後), 3年前にM蛋白血症を指摘(IgGλ, 2g/dL程度. MGUSと判断) を認め, 定期フォローされていた.

半年前からの1日中持続する手指の強張り, 手指関節痛を自覚. 主治医に相談し精査したところ,  RF陽性を認め, コンサルトとなった.


所見は両側手関節の軽度腫脹と圧痛を認めた. MP, PIP, DIP関節は腫脹や圧痛は認められず.

手関節と指の運動に強張りを自覚しており, エコーでは手関節伸側の腱鞘の腫脹とPD亢進, 手関節の軽度Fluid貯留が認められた.

皮膚や粘膜所見に有意なものは認めず.

血液検査ではCRP 0.8mg/dL程度の上昇を認めた. 甲状腺は正常. 抗CCP抗体や抗核抗体陰性.

気になる所見としてWBC 6000台, Mo 20%(絶対数600-700/µL, 3年前から増加傾向), PLT 11万.

また, 病歴より2年前より冬季になると手指先端のチアノーゼ, また潰瘍形成を伴うことがあるとの病歴が得られた.





さて, 診断は・・・? 問題点をまとめると,

#慢性の両側手関節炎, 手指の強張り

#3年前〜MGUS, 6年前〜PLT減少, 2年前〜Mo分画の上昇

#冬季の手指のチアノーゼ, 潰瘍

#RF陽性





なぜかこの時点でピンと神の啓示が降りて, 頭にHCV?と思い浮かんだ(最近ミミッカーのことばかり考えているから?)

精査するとビンゴであり, HCV抗体が陽性.

肝障害や肝硬変所見は認められず. 上記検査異常や関節症状はHCV関連の肝外症状と考えられた.

ちょっと勉強ついでにまとめてみる.


HCV感染症の肝外症状

(N Engl J Med 2021;384:1038-52.)


HCV感染症は肝臓以外にも多くの肝外症状を呈する.

単一施設におけるHCV慢性感染症 1614例の解析では,
1202例(74%)で肝外症状が認められた

(Arthritis Rheum. 1999 Oct;42(10):2204-12.)

・>10%を超えるものとしては, 関節痛(23%), 感覚異常(17%),
 筋肉痛(15%), 掻痒感(15%), Sicca症候群(11%)

・>5%を超える検査所見としては, クリオグロブリン(40%),
 抗核抗体(10%), チロキシン低下(10%), Sm抗体(7%)


・クリオグロブリン陽性/陰性例別の症状頻度

 陽性例では関節痛, 高血圧, 掻痒感, 血管炎などの頻度が高い.

 しかしながら陰性例でも23%で関節痛は認められる.


102 studiesのMetaにて, HCVの肝外症状の頻度を評価

(Gastroenterology 2016;150:1599–1608)

・クリオグロブリン血症の頻度は最も高い.


 次いで糖尿病やSjogren症候群.
 RAのリスクも上昇する. 

 PCT: Porphyria cutanea tarda


HCV関連関節炎

(J Musculoskel Med. 2010;27:351-354)

・HCV慢性感染症の肝外症状として関節痛, 関節炎は多くを占める.

 
関節症状は軽度の関節痛から, QOLを障害する関節炎まで様々.

・多くの患者はRA-like関節炎またはクリオグロブリン血症に関連する関節炎を呈する.

・RA-likeな関節炎は小関節の左右対象性の関節炎となり, 変形をきたすことは少ない. ACRのRA基準を満たすことも多い
またRFも陽性となる.

 RAとは対照的に, HCV関連関節炎では朝の強張りが少なく, リウマチ結節やXPにてびらんを呈することが少ない. ACPAもほぼ陰性.

 両者で初期症状は類似しているため, RAを疑う患者ではACPAとHCV抗体の評価はルーチンで行う

・クリオグロブリン関連関節炎は, 中, 大関節を侵す単関節炎, または少数関節炎で, 間欠的な経過となる.


HCV関連関節炎のCohort (BioDrugs 2001; 15 (9): 573-584 )


HCV関連関節炎とRAの比較 (Autoimmunity Reviews 8 (2008) 48–51)


HCV関連関節炎の治療

(Expert Opin. Pharmacother. (2014) 15(14):2039-2045)(J Musculoskelet Med. 2010 September ; 27(9): 351–354. )

・軽度の場合はNSAIDを用いた保存的治療となる


 肝硬変が進行した患者の場合, 腎障害や食道静脈瘤からの出血リスクとなるため, NSAIDは避ける必要がある.

・NSAIDで反応しない患者では, 短期間の少量PSL(2-8mg)が使用される.

・DMARDはHCV慢性感染症の患者では,


 MTXはChild-Pugh A,B,C全ての患者で禁忌


 SSZはB, Cで禁忌


 HCQはCで禁忌とされている.

・経験的にはHCQ+少量PSLが好まれて使用されている.

シクロスポリンは抗ウイルス作用があり, 代替薬となる.

 CsAのようなシクロフィリン阻害薬はHCV感染を阻害する. HCV関連関節炎に対して, 有効な治療となる可能性があるが,
十分な検討はされていない.

 CsAを使用中のHCV患者で, CsAを中断する場合は, 緩徐に中断することが推奨される(急な中止は肝炎の増悪につながる可能性がある)

・TNF阻害薬は有効と考えられるが, HCV関連関節炎は軽度のことが多く, 過剰治療となる可能性が常にある

・RTXも効果が期待できるが, 関節炎のみでは使用しにくい.

 後述の重症クリオグロブリン血症がある場合は選択肢となる


抗ウイルス治療はHCVに関連した全ての肝臓・肝外症状に対して有用と考えられる.

 DAA治療, IFNフリー治療が可能であり, HCV治療は考慮される.

 IFNによる治療では, 治療後に関節症状が増悪する報告がある.
(IFNによる免疫賦活に起因する)


HCVによる関節炎, 血管炎を認め, Sofosbuvirベースの治療が行われた24例を解析(関節15, 血管炎9).

(Z Rheumatol 2018 · 77:621–628)

・倦怠感(FAS), TJC, SJC, VAS全て治療群で有意に低下.
治療後から速やかに低下し, 24wk後にはかなり改善を認めている.

Gr Aが治療群.
Gr Bは過去にIFNで治療された患者の対象群


HCVクリオグロブリン血症の治療

(J Musculoskelet Med. 2010 September ; 27(9): 351–354.)

・軽症〜中等症の場合, 抗ウイルス薬による治療が推奨される.

・重症の場合(消耗性疾患や糸球体腎炎, 神経障害)では免疫抑制と抗ウイルス薬の併用が望ましい

・免疫抑制療法ではRTXの併用が望ましい.
 

 HCVがポリクローナルB細胞を直接活性化し, クローナルな増生を促す知見に基づいている.

 B細胞を抑制することでクリオグロブリンの合成を阻害する.
 

 RTX 375mg/m2を毎週4週間投与し, その後抗ウイルス薬を使用.


HCVに関連する重度のCV患者(皮膚潰瘍, 糸球体腎炎, 難治性末梢神経障害) 59例を対象.

(Arthritis Rheum. 2012 Mar;64(3):843-53.)

・HCVは抗ウイルス治療を失敗しているか, 適応とされなかった症例.


・RTXによる治療群(1g/2wk, 2回. 再燃時再投与)と, 非RTX治療群(GC, アザチオプリン, シクロホスファミド, 血漿交換など)に割り付け, 比較.

・非RTX群で治療反応を認めなかった群は後にRTXを使用した

治療前〜治療後2ヶ月での反応性は, RTX群で皮膚潰瘍, 蛋白尿, 尿沈渣, 疼痛や痺れ症状は有意に改善.


HCVによるクリオグロブリン血症で, 抗ウイルス治療が失敗した24例を対象としたopen-label RCT.

(Arthritis Rheum. 2012 Mar;64(3):835-42.)

・RTX 375mg/m2/wkを4回投与群 vs 通常の治療(免疫抑制)群に割り付け,
6ヶ月後のCV寛解率を比較した.


アウトカム: 6ヶ月後の寛解率はRTX群で83%, 対象群で8%のみ.


HCVの肝外症状では関節炎を伴う頻度は高く, 関節炎にはRA-likeな関節炎と, クリオグロブリン血症に伴う関節炎がある.

前者は手指の小関節炎で, NSAIDやDMARDが効果的. IFNフリーHCV治療も有用である.

後者は重症例ではRTXが有効. またHCV治療も効果的であり, 双方で治療を検討する.


補足: HCV患者における末梢血の特徴

312例の献血検体(HCV陽性例が144例含む)におけるViral loadと血球の関係を評価した報告.

(Biomed Res Int. 2015;2015:429290. )

・血液中のHCVウイルス量と関連するパラメータ;
 


・PLT低値は有意にHCVウイルス量との相関性が認められる.
 

・他にRBC, MONO, TPO(トロンボポエチン)高値はウイルス量と相関

・この因子をスコア化すると,

 全体のスコア(0-7点)では, 4点で感度75.6%, 特異度 78.5%


 TPOを除くスコア(0-5点)では, 3点で感度76.8%, 特異度 75.7%で
HCV感染を示唆する.


5281件の症例データ(コントロール群122例でHCV感染)の評価

(BMC Public Health (2021) 21:1388)

・慢性HCV感染症における単球/PLT比を評価.

・Mo/PLTx103/µL で計算する.
これが高いほど, HCV患者の可能性が上昇する結果.


HCV感染では, 肝障害に関係なく血液中PLTは低下し, Moは上昇する傾向が認められる.

この傾向は血液中Viral loadに相関が認められる.

2022年10月10日月曜日

痛風既往のない虚血性心疾患患者に対するアロプリノールは予後を改善させない

尿酸降下薬の適応についてはいろいろあるものの,

基本的には痛風を繰り返す症例や尿酸結石, 慢性の痛風関節炎で適応となる.

CKDや無症候性の尿酸降下薬は国内のガイドラインでは言及はされているが, それも年々推奨は低下している, のかそのままなのか...

参考 : CKDと尿酸降下薬


この度, 痛風発作の既往がない, 虚血性心疾患患者に対するアロプリノールのRCTが発表

(Lancet 2022; 400: 1195–205)

ALL-HEART: 60歳以上の虚血性心疾患既往がある患者で, 痛風の既往がない患者群を対象とし, アロプリノール群と通常治療群に割り付け比較した, 5000人規模のOpen-label RCT.

・中等度〜重度の腎障害(eGFR<60mL/min/1.73m2), 中等度以上のHF, 著明な肝疾患, 薬剤による重度薬疹の既往, 5年以内の悪性腫瘍症例は除外

・途中で, 中等度の腎障害(eGFR 30-59)症例も組み込まれるように変更

・アロプリノールは600mg/d(腎障害例では最大300mg/d)

・アウトカムは心血管イベントリスクを比較した.


母集団

・母集団のUA値は 5.9±1.4mg/dL (mmol/L → 1/0.059 mg/dL)


アウトカム



・4.8±1.5年間のフォロー

・虚血性心疾患, 心血管イベント全体で
両者で有意差は認めず.

基礎UA値で階層分けしたSub解析でも
アウトカムに有意差は認めず



2022年10月9日日曜日

皮膚筋炎に対するIVIGのRCT

皮膚筋炎に対してしばしばIVIGが使用されるが, しっかりとしたRCTはなかった.

・IVIGを初期治療として2g/kg投与し, 
その後3wk毎に1g/kgを追加投与する方法で
DM 9例, IMNM 6例, 非特異的Myositis/overlap myositis 4例, ARS抗体症候群1例を治療した報告では,

 8/19が中等度以上の改善が認められた


 このうち6例は3wk以内に改善 (Rheumatology 2021;60:1784–1792)


今回NEJMからRCTが発表 (N Engl J Med. 2022 Oct 6;387(14):1264-1278.)


ProDREAM: 活動性のDM患者95例を対象とし,
 IVIG(2g/kg, 4wk毎に16wk)群とPlaceboに割り付け比較

・Bohan, Peter基準による活動性DM患者で,
 GCや他の免疫抑制薬に不応/不耐であった患者を対象

・GCは1日最大量をPSL 20mgとし, 試験期間中はその量を維持


 他に使用可能とした薬剤は2種類までの免疫抑制療法
(MTX, AZA, MMF, SASP, LEF, TAC, CsA, HCQ)とした.

・Bio, CY, JAK阻害薬は使用不可. また使用した患者は含まれていなかった.

・IVIGは2g/kg量を2, または5日間で投与した.
 

 中央値2.4日間で投与しており, 大半が2日間での投与ということになる.

・16wk投与後は両群ともOpen-labelで継続. 28wk以後は安定した患者では1g/kgに減量して継続された.

・アウトカムはTIS(Total Improvement Score): 0-100点で評価され, 臨床的有意な改善は20点以上の改善で定義される. 

 以下のURLで計算される. VASとMMT, HAQ, 筋逸脱経酵素で評価.

https://www.niehs.nih.gov/research/resources/imacs/response_criteria/adult.html


母集団


アウトカム

・IVIG群では有意にTISの改善が良好.


 open-labelでIVIGを開始した群もその後改善を認める.
(4wk毎の投与. 1-2g/kg)





副作用としては, 中断が必要な副作用が6-18%

・血栓症の合併がOpen-labelでは多い. IVIG投与において, 6名の患者より8件の血栓症を発症した.

これを受けて, 投与速度を0.12mL/kg/分から0.04mL/kg/分に引き下げる修正が行われ, 血栓症の発生率は1.54/100人月から0.54に減少を認めた.


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皮膚筋炎の治療としてIVIGは早期に病状を改善させる効果が期待できる.

イメージとしてはゆっくり改善してゆく経過が多く, 多少ヤキモキするのがDMであるが, IVIGの使用によりPSLの減量が捗るかもしれないとおもうと, 良いかもしれない.

ただ、血栓症リスクとなる点に注意. 投与速度に関連している可能性があり, IVIGは2日ではなく5日かけて投与するのが吉であろう