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2021年11月27日土曜日

関節リウマチにおける頚椎不安定症のリスク因子は?

RAにおける頚椎病変

(Current Rheumatology Reports (2020) 22: 19)

・RAは手指, 足指 末梢関節病変が主体となるが, 頚椎も多く傷害される部位である.

・RAの頚椎病変で最も炎症が多い部位がC1-C2(環軸椎)


 この部位ではAAS(Atlanto-axial subluxation: 環軸椎亜脱臼)を生じる

・C3-C7領域の亜脱臼をSAS(Subaxial subluxation)と呼ぶ

・他にRAで認められる頚椎所見は, 椎間間隙の狭小化, 椎体や椎間関節の骨融解, 骨硬化像

・RAにおける頚椎病変は無症候〜神経圧迫による神経症状, 脳幹圧迫による突然死とかなり幅広い.
 


頚椎病変の画像評価

(Current Rheumatology Reports (2020) 22: 19)

AASの画像

・C1-C2の骨びらんや腱組織の障害により, 不安定化が生じる.

・不安定化で動く方向は,
前後, 左右, 上下, 回旋と
さまざまな方向がある


前後方向の移動: XPでは, 正常位の側面像のみでは正常に見えることがあるため, 前屈させて評価することが必要.

・画像では正常位では間隔は2mmと正常であるが,
 前屈させると6mmに拡大する.

・後屈も評価し, 動揺性を評価する.

・AASは脊髄圧迫による神経障害のリスクとなる


上下方向の移動: 

・硬口蓋-後頭蓋下端を結んだ線をMcGregor lineと呼ぶ

・この線よりも4.5mm以上, 歯突起先端が上方にある場合,
上方向に亜脱臼をしていると判断する

・脳幹圧迫やStroke, 水頭症, 突然死のリスクとなる


左右方向の移動

・開口位で評価し, 左右対象性や骨びらん, 偏位を評価する.

・2mm以上偏位がある場合は亜脱臼と判断.


Subaxial subluxationの画像例


・前方偏位が多い. 3.5mmを超える偏位を有意とする


 神経障害のリスクとなる


RAにおける頚椎病変の頻度


・報告により頻度は差があるが
最近の報告でも頻度は4割以上であるものも多い

・致命的なこともある一方, 無症状も多いため, しばしば評価自体忘れやすい

 どのタイミングで評価すべきかも定まっていない. 

・頚椎病変を認める患者のRA罹患期間は2.5-30.1年, 平均12.3年間.


RAにおける頚椎不安定症のリスクは?

生物学的製剤が治療の基本となった現代の頻度を評価した
国内のSingle-center cohort

(Mod Rheumatol, 2014; 24(6): 904–909)

・220例でMRI, 頚椎XPを評価したところ, 42%で頚椎不安定所見(+).

・頚部痛がなくても頚椎不安定性リスクは変わらない.

・リスク因子としては, 

 罹患期間が10年以上, 


 Steinbrocker stage III以上,


 頚椎椎間板狭小化 3部位以上 
が挙げられる

・治療薬: MTX, 生物学的製剤の使用有無は
頚椎不安定性のリスク因子とはならない


他の報告によるリスク因子のまとめ

地域, N

有病率

リスク因子

文献

イラク, 
RA患者 203

7.4%
AAS単独が73%と最多

発症期間
疾患活動性
BMI(肥満)
末梢関節所見

Journal of Clinical Orthopaedics and Trauma 11 (2020) 876-882 

韓国, 
RA+頸部痛 1120例

28.6%
AASが90%

手指XPの骨病変 OR 2.2[1.5-3.4]
45歳以下のRA診断 OR 2.3[1.5-3.5]

Rheumatol Int (2011) 31:1363–1368 

韓国,
AASで手術治療を受けた62例とControl RA患者12667例を比較

-

AASのリスク
血清CRP値
手指XPの骨病変
AAS進行リスク
RA診断~骨病変までが短期間
RA診断時年齢が若い

J Korean Neurosurg Soc 59 (6590-596, 2016 

多施設
RA患者を10年間前向きにフォロー
(503例中, フォローは143例のみ)

基礎 41.3%
→ 10年後 76.9%(重度の不安定 0→24.5%)

基礎のムチランス変形 HR 19.2[4.0-92.6],
GC投与 HR 4.0[1.8-9.1]
過去の関節手術歴 HR 2.0[1.0-3.9]

Spine (Phila Pa 1976). 2017 Apr 15;42(8):556-564.

日本
RA患者で頚椎XPと骨密度検査を評価した185例

106例(57%)

AAS 79, VS 21, SAS 41

GCの使用 2.8[1.3-6.0]

bDMARDの使用 OR 2.5[1.1-5.7]
RA活動性(III-IV) OR 5.0[2.0-12.3]

BMC Musculoskelet Disord. 2021 May 3;22(1):408.

スペイン多施設
無作為に抽出されたRA 736例

AASは12%[9.7-14.2]

Larsen 50 OR 4.0[2.0-8.2]
50歳前の発症 OR 2.4[1.2-4.6]
DMARDの使用 OR 1.3[1.1-1.6]

Clinical and Experimental Rheumatology 2004; 22: 427-432. 

RA罹患期間とAAS有病率

(スペインの多施設研究[上記表の最後]より Clinical and Experimental Rheumatology 2004; 22: 427-432.)


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RAの頚椎病変の有病率は高い可能性があるが, 無症候性も多くしばしば評価もされていないことも多い.

どのタイミングで評価すべきか, フォローすべきかは明確に決まっているわけではないが,

症状がある患者やリスクがある患者での評価は忘れないようにしたい.

・頸部痛や症状がある患者

・罹患後10年以上経過したRA

・疾患活動性が高く, 末梢関節の骨病変が顕著である患者群

は少なくとも必ずチェック, フォローしておいた方が良い.