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2021年9月13日月曜日

ウマをはじめとした家畜から感染する連鎖球菌: Streptococcus equi spp. zooepidemicus.

以前, 養豚場や屠殺場で勤務していた若い男性が心内膜炎になり,

その結果Streptcoccus suis(ブタ担毒)による感染症が判明した症例があった.

参考: http://hospitalist-gim.blogspot.com/2014/07/streptococcus-suis.html


今回, ウマとの接触が多い職業の患者で, Entry不明な敗血症を呈した症例があり,

ウマにもそのような感染症リスクがある細菌がいるのか? と思い調べてみると...

Streptococcus equi spp. zooepidemicusという連鎖球菌の報告が目についた.

S. equi ssp. zooepidemicusはC群溶連菌の1つであり,
 動物, 特に馬の感染症として多く報告されている.

・ウマ以外にも牛, 羊, ヤギ, ブタ, 犬, ネコでも報告あり

・S. pyogenesと80%の配列相同性があり, 多くの病原因子が共通.

・人畜共通感染症として, ヒトに感染する例もあり,


 主にウマと接触が多い職業や,


 非殺菌の動物加工品の摂取が感染リスクとなる. 
(チーズや乳腺炎の牛から搾乳されたミルクを非殺菌で飲むなど)
 

・そのような食事を介したアウトブレイクも報告あり

・ウマにおける感染症は多く, 軽症であるが,
 ヒトに感染した場合はしばしば重篤化する

・感染症の報告例では皮膚軟部組織感染症, 呼吸器感染症, 
髄膜炎やTSS, 心内膜炎, 動脈感染症, 壊死性筋炎, 化膿性関節炎の報告もある

 2018年のLiterature Reviewでは, 心内膜炎17例, 化膿性関節炎16例をReviewしている.(Case Reports in Infectious Diseases Volume 2018, Article ID 3265701,)

・溶連菌感染後糸球体腎炎やリウマチ熱の原因にもなり得る
(A群溶連菌に似ているため)

(Eur J Clin Microbiol Infect Dis (2010) 29:1459–1463)(Emerg Infect Dis. 2013 Jul;19(7):1041-8.)


S. equi spp. zooepidemicusによる敗血症症例のReivew

(Journal of Infection 1990;21:241-250)

・香港における11例と, Letrature reviewによる34例

・心内膜炎や動脈瘤, 髄膜炎, 蜂窩織炎などがあり, 
死亡率は18-24%


S. equi ssp. zooepidemicusによる髄膜炎の報告

(Eur J Clin Microbiol Infect Dis (2010) 29:1459–1463)

・20例の解析では, 年齢中央値は67歳[13-83]

・背景疾患がある患者は38%のみ

・動物との接触歴, 加工品の摂取歴がある患者が19例.


 最も多い動物がウマであった(9/20)

 
他に犬や牛も報告されている.
 

 加工品は非加熱の乳製品が多い.

・死亡率は24%. 後遺症として難聴が多い


アウトブレイクの報告

ブラジルMonte Santoにおいて, 2012年12月〜2013年2月に報告された175例のS. equi ssp zooepidemicusによる溶連菌感染後糸球体腎炎症例を評価した報告.

・このアウトブレイクでは, 一部のミルクと, そのミルクを使用したアイスクリームの摂取がリスク因子となった.


 ミルク: OR 4.16[1.55-11.18]
アイスクリーム: OR 3.09[1.39-6.86]

(Epidemiol Serv Saude. Apr-Jun 2017;26(2):405-412.)

・このアウトブレイクにて検出された菌体では,
SzPタンパク質の可変領域の同じ配列(SzPHV5)が増幅された. (J Clin Microbiol 56:e00845-18.)


2003年にフィンランドにおいて,
ヤギのチーズからアウトブレイクを呈した報告もある

・7例感染し, 6例が敗血症, 1例が化膿性関節炎

(BMC Infectious Diseases2006, 6:36 doi:10.1186/1471-2334-6-36)