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2020年8月15日土曜日

DPP-4阻害薬による関節痛、関節炎

リウマチ性多発筋痛症でステロイド減量中の患者さん.

炎症反応や上肢帯の疼痛は改善傾向にある一方, どうも手の浮腫感や強張り, 疼痛が持続しており, ステロイドも減らしきれないのです, という相談.

診察では肩関節の滑液包や周囲の疼痛, 圧痛はなく, 手指のこわばりが主. 圧痛も軽度だが腫脹はない. 変形もなし.

EORAも考慮したが, XP所見や抗体も陰性であり.


と, そこで背景に糖尿病があることに気づき, 他院での処方内容を確認すると, DPP-4阻害薬を長期間使用していた. もしかするとこれが原因かも, ということで中止し, その後症状も消失した, という症例.


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DPP-4iの使用により多関節痛を呈する症例報告がある.

(diabetes research and clinical practice 102 (2013) e8–e12)

・2DM患者でDPP-4i使用者 385, 非使用者 356例を評価した報告ではDPP-4i使用例の3.3%(13)で多関節症を呈した(非使用例では0)

DPP-4i使用による多関節症と考えられた13例の評価では,

 > 関節は主に小関節の疼痛がメインとなり, 一部で腫脹もあり.

 > 薬剤開始~発症まで3~31ヶ月, 中止~改善まで1~6ヶ月

 > 炎症反応はほぼ上昇を認めない


2DMDPP-4i使用例 93例と, 非使用例 107例を評価

(Acta Endocrinol (Buchar). Oct-Dec 2018;14(4):473-476.)

・DPP-4i使用期間は1.95(範囲16)

関節痛/関節炎を認めたのはDPP-4i使用例で41(44.1%)

 さらに, 27/41は炎症性リウマチ性疾患が否定的と判断された

・非使用例では19(17.8%), 13/19が炎症性リウマチ性疾患を否定

DPP-4iの使用は有意に関節痛/関節炎リスクを上昇させる


DPP-4iによる関節痛/関節炎は関節リウマチを惹起するものではなく, CohortやCase-control Studyではこれら薬剤の使用によるRA発症リスク上昇は認められない

DM患者において, RA診断症例と時期, 年齢, 性別を合わせたControl群を比較したCase-control study (Diabetes Ther (2018) 9:141–151)


英国における2DM患者144603例のCohort.(Epidemiology 2018;29: 904–912)

・567169pt-yのフォローアップにおいて, RA464例で診断(82/10/y)

・DPP-4iRAのリスクではない

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膠原病ではPSLを使用する頻度も高く, ステロイド性糖尿病からのDPP-4iの使用, という流れもある

関節症状が燻っている場合はこれら薬剤の関連も疑ってかかるとよいかもしれない.