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2020年7月28日火曜日

膠原病に関連する脂肪織炎の鑑別

(Advances in Rheumatology (2019) 59:35)(G ital dermatol Venereol 2018;153:194- 207.)を参考に作成

皮下脂肪組織は脂肪細胞の集簇(primary microlobule), それが集まり構成されたSecondary lobuleがある.
・Secondary lobuleは結合組織で中隔が形成され中隔内に神経, リンパ管, 血管が含まれる
・この構造は脂肪織炎の鑑別を考えるのに重要.

病理からの鑑別は 3 stepで行う:
炎症の首座は中隔が主か葉内が主か.
血管炎を伴うかどうか.
炎症細胞のパターンと壊死の有無, その他の所見

炎症の首座が中隔にある場合の鑑別
血管炎+
小血管

白血球破砕性血管炎

大血管
静脈
表在性血栓性静脈炎


動脈
皮膚結節性動脈炎
血管炎(-)
リンパ球, 形質細胞が主
中隔に肉芽腫形成
リポイド類壊死症


中隔に肉芽腫(-)
Deep morphea

組織球, 主に肉芽腫
肉芽腫の中心にムチン
皮下環状肉芽腫


肉芽腫の中心にフィブリン
リウマチ性結節


放射状の肉芽腫
結節性紅斑

中隔が主な炎症首座で, 血管炎(-), リンパ組織球の浸潤を伴う脂肪織炎 = 代表例が結節性紅斑

・小血管由来の点状出血は伴うことがある
・対象的に, Erythema nodosum leprosum(ENL)Lepromatous leprosyに対する免疫由来の脂肪織炎だが, 葉内の炎症で, 血管周囲の好中球浸潤を認める

中隔が主, 血管炎を伴う脂肪織炎の代表例はC-PAN

炎症の首座が葉にある場合の鑑別
血管炎+
好中球浸潤が主
小静脈
RAに伴う好中球性脂肪織炎
薬剤性脂肪織炎
EN leprosum


動脈
Erythema Induratum
血管炎(-)
好中球浸潤が主
中隔浸潤は軽度
皮下Sweet病
Bowel bypass dermatitis*


脂肪壊死を伴う
Weber-Christian病
鹸化に伴う脂肪壊死
Pancreatic panniculitis


真皮網状層の好中球浸潤
α1アンチトリプシン欠乏


細菌/真菌/原虫
感染性脂肪織炎


その他
MDSに伴う脂肪織炎

リンパ球浸潤が主
リンパ濾胞, 形質細胞を伴う
Lupus脂肪織炎
皮膚筋炎による脂肪織炎


真皮深層への波及
Deep morphea

組織球浸潤が主
組織球や脂肪細胞内に結晶
ENT投与に伴う脂肪織炎
ステロイド投与後脂肪織炎**


非複屈折性の結晶
痛風性脂肪織炎


その他
皮下サルコイドーシス
*Bowel bypass dermatitis: 十二指腸-回腸バイパス後の合併症で, 発熱, 悪寒, 多関節痛, 筋肉痛, 皮膚変化を呈する疾患別名 Bowel-associated dermatosis-arthritis syndrome(BADAS). 肥満に対する手術であるが, 現在はほぼ行われない胃内の細菌増殖が関連していると考えられている. 抗菌薬が有用.
**ステロイド投与後脂肪織炎: 小児~若年成人で報告されている希な病態高容量ステロイド投与後に急速に減量/中止することで, 飽和脂肪酸/非飽和脂肪酸の比が増加し, 脂肪組織内に結晶を形成し, 脂肪織炎を呈する. 病理では葉内の血管炎を伴わない脂肪織炎となり針様の結晶が認められる

中隔, 葉内双方に脂肪織炎の首座がある場合
・感染性脂肪織炎: 溶連菌や黄色ブドウ球菌, 緑膿菌, マイコバクテリア, アクチノミセス, ノカルジア, ボレリアなどの細菌感染症. 真菌感染症など.
・Behcet病によるEN-like病変: BD22.5-45.5%EN-likeな病変を生じる 
 病理ではENと同様に中隔が主となるのが1/3. 炎症細胞は好中球とリンパ球, 形質細胞が認められる. 
 中隔, 葉内双方に炎症を認めるパターンや, 血管炎を伴うこともあり.

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脂肪織炎の鑑別は病理がポイントとなる