ページ

2020年7月26日日曜日

Crowned dens syndromeとAcute calcific prevertebral tendinitis

Crowned dens syndromeとAcute calcific prevertebral tendinitis
双方とも上位頚椎の炎症を呈し、急性の頸部痛と発熱を主訴に来院する疾患。
前者のCrowned dens syndromeは高齢者、後者のAcute calcific prevertebral tendinitisは主に中年者や若年者で多い疾患。

Crowned dens syndrome
J Bone Joint Surg Am. 2007;89:2732-6, Arthritis and Rheumatism 2005;53:133-7, Rheumatology 2004;43:1508-12

軸椎の歯突起周囲の石灰沈着, 頚部の疼痛を特徴とする疾患
 歯突起に王冠(Crown)状に石灰化を認めるため, Crowned dens syn.
 解剖学的には環椎横靱帯, 翼状靭帯, 頭蓋脊椎関節の石灰化を認める.
 石灰化はピロリン酸Caとの報告もあるが, 3例でのみの報告であり, 具体的な物質は不明のまま.
 石灰化があっても, 無症候性のこともあり, 本当の原因は不明.
 症状がなくても高齢者では頚椎CTにおいて軸椎周囲の石灰沈着を認めることはある。関節偽痛風と同様、症状+画像所見で診断する。また、感染症の除外は重要。

Crowned dens syndromeの身体所見
軸椎、環椎は頚部の回旋に最も関与する関節
 頚部の回旋で特に疼痛が増強し, ROM障害があるが, 屈曲, 進展はそこまで障害されていない.
 他, 深頚部膿瘍, PMR, 脊椎炎, 骨折, 頸椎症などが除外できればCDSの可能性は高い

臨床Dataのまとめ(N=75)
男性:女性 26:49 炎症所見あり 65
平均年齢; 男性 69-73yr 炎症所見なし 2
平均年齢; 女性 62-75yr 炎症所見不明 8
発症形式; 急性 67 他の関節軟骨の石灰化 49
 亜急性, 慢性 8  石灰化無し 11


 不明 1
 男女比は0.6:1,
 疼痛の程度はVAS 83mm[75-94]
 神経学的所見は異常なし
 NSAID, ステロイドで治療を行い, 約4d[1-9]で改善を認める
 NSAID, ステロイド併用は, 単剤投与よりも効果は高い.
 初発から22moのフォローでは, 23%が再発を認めた(平均9mo[1.5-18])

椎体の偽痛風 Journal of Orthopaedic Surgery 2012;20(2):254-6
 偽痛風といえば膝関節であるが、椎体にも偽痛風を発症し得る。

 CPPDの沈着により脊柱管狭窄症となる例も報告あり. Journal of Orthopaedic Surgery 2007;15(1):94-101
 脊柱管狭窄症で手術治療をした102例中, 24.5%で黄色靭帯にCa沈着が認められた. Spine 1996;21:506-511

Acute calcific prevertebral tendinitis
Asian Spine Journal 2010;4:123-7
Retropharyngeal calcific tendinitisとも呼び, 頚長筋(longus colli muscle)の急性石灰沈着性炎症による頸部の疼痛, ROM障害, 嚥下痛を特徴とする疾患.
 C1-2の頚長筋が多く, 同部位のRetropharyngeal spaceに炎症, Fluidを認める.
 ハイドロキシアパタイトの沈着を認める.
 頸部側面XP, CT, MRIが診断に有用.
 深頸部感染症, 化膿性脊椎炎, 外傷, 髄膜刺激症状との鑑別が必要となる.
 症状はCrowned dens syndromeにも共通するが,  好発年齢は30-60yrと若い傾向. 症例報告は21-81yまで幅広くある.
 血液検査では軽度の炎症所見のみのことが多い.

頚長筋

 頸部の進展に関与.
 石灰沈着はC1-2の起始部に多い.

通常self-limitingな経過であり, 2-5dかけて増悪し,1-2wkで改善する.
 疼痛による頸部ROM障害, 嚥下障害がADLに大きく影響するためNSAIDによる鎮痛が有効となる.

(2020/7/26 追記)
Literature reviewより, 71例の解析
(Semin Arthritis Rheum. 2010 Jun;39(6):504-9.)
・発症年齢は21-65歳, 女性が6割
・頚部痛が最も多く(94%)ROM制限や嚥下痛後部硬直が半数程度
・38度を超える発熱も35%

画像所見

・石灰沈着や軟部組織の肥厚が多く認められる
・X線では軟部組織腫脹所見が有用. CTでは石灰化所見の感度が高い.
 ただし90%程度であり, 認められないものも1割程度あり

治療と改善までの期間

・様々であるが, ステロイドは短期間での改善に関連するかも
NSAID1-2wkで改善