梅毒による骨病変はどのようなものがあるのだろうか?
梅毒は病期により以下に分けられる
・感染後2-6週で生じる一期梅毒
感染部位の硬結, 壊死.
その後免疫により病変は消失し, 慢性感染となる
・感染後6ヶ月程度で生じる二期梅毒
全身にTreponemaが拡散し, 悪寒や発熱, 頭痛, 皮疹, リンパ節腫脹, 手掌や粘膜疹など.
数週〜数ヶ月持続. 未治療ならば25%が4年以内に再発.
病変消失後もリンパ節や脾臓に菌は残存し, 潜伏期となる.
・数年(数十年)経過して生じる三期梅毒
未治療患者の1/3が移行.
中枢神経, 心臓, 眼, 皮膚, 各臓器の障害を呈する:
動脈瘤, 動脈炎, 心内膜炎, 髄膜炎, 脳実質への影響
皮膚, 内臓, 骨で腫瘤を形成(ゴム腫)
この病期で, 骨病変を呈するのは二期と三期となる.
二期梅毒における骨病変
(Sex Transm Dis . 2014 Sep;41(9):532-7)
・二期梅毒における骨病変は稀であり, 1964-2013年のLiterature reviewでは, 二期梅毒における骨病変の報告は37例のみ
・部位は長幹骨, 頭蓋骨が多く, 他は肋骨, 鎖骨, 椎体, 胸骨
骨破壊像を呈する
・病理では形質細胞やリンパ球の浸潤が認められる.
二期梅毒における骨病変の画像の例
三期梅毒では骨にゴム腫を形成する
(Medicine (2017) 96:50(e9098))
・画像の例
・ゴム腫の病理では, 肉芽腫形成が認められる.
組織内にOnion-like sclerosing vasculitisを伴う例も報告されている(Clin Nucl Med 2019;44: 313–316)
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まとめられるほど症例報告やReviewがないものの,
梅毒による骨病変は
二期梅毒: 溶骨性変化. 形質細胞やリンパ球の浸潤が主
三期梅毒: ゴム腫形成. 肉芽腫形成が主
という病態となる.
双方とも転移性腫瘍や血液腫瘍との鑑別が重要となる.
特に専門は絞っていない内科医のブログ *医学情報のブログです. 個別の相談には応じられません. 現在コメントの返事がうまくかけませんのでコメントを閉じています. コメントがあればFBページでお願いします
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2020年5月22日金曜日
VCMは持続注射の方が腎障害リスクが低い
(Crit Care Med 2020; 48:912–918)
ICU患者において, VCMを投与する際
持続注射を行う群 vs 間欠的に投与する群を比較したRCT, observational studyのMeta-analysis
・RCTが2件, 前向き観察研究が3, 後向き観察研究が6件, N= 2123
・初期投与量は持続注射で30mg/kg/d, 間欠群で15mg/kg q8-12hが最多
持続注射では血中濃度 20-25mg/Lを目標にコントロール
間欠投与ではトラフ値 15-20mg/Lを目標とする投与方法が主
・投与期間は1-2wk
・Loading doseは持続注射群で行われることが多かった
アウトカム
・AKIリスク: 持続注射群で有意に低下. OR 0.47[0.34-0.65]
・死亡リスクは有意差認めず. OR 1.04[0.80-1.35]
-------------------
VCMは持続投与の方がAKIリスクは低い.
持続投与する場合は, 初期量 30mg/kg/d程度で開始し, 血中濃度20-25mg/Lを目標
ICU患者において, VCMを投与する際
持続注射を行う群 vs 間欠的に投与する群を比較したRCT, observational studyのMeta-analysis
・RCTが2件, 前向き観察研究が3, 後向き観察研究が6件, N= 2123
・初期投与量は持続注射で30mg/kg/d, 間欠群で15mg/kg q8-12hが最多
持続注射では血中濃度 20-25mg/Lを目標にコントロール
間欠投与ではトラフ値 15-20mg/Lを目標とする投与方法が主
・投与期間は1-2wk
・Loading doseは持続注射群で行われることが多かった
アウトカム
・AKIリスク: 持続注射群で有意に低下. OR 0.47[0.34-0.65]
・死亡リスクは有意差認めず. OR 1.04[0.80-1.35]
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VCMは持続投与の方がAKIリスクは低い.
持続投与する場合は, 初期量 30mg/kg/d程度で開始し, 血中濃度20-25mg/Lを目標
2020年5月17日日曜日
晩期発症の家族性地中海熱の特徴
家族性地中海熱はコチラから
有病率が高いトルコ人、その周辺地域では, 10歳未満発症が80%と小児で発症することが多い家族性地中海熱.
しかしながら日本国内では, 30歳台, 40歳台での発症例も多く報告されており, 同じ地中海熱といいつつ日本と地中海沿岸では様相が異なることは実臨床でもよく感じる.
日本国内のFMF 292例を後ろ向きに解析し, 発症年齢 ≤19歳, 20-39歳, ≥40歳の3群に分類し, 症状/経過を比較した
(MODERN RHEUMATOLOGY 2020, VOL. 30, NO. 3, 564–567 )
・FMFの診断はLivneh criteriaを使用
・≥40歳発症のFMFは44例. 15%は晩期発症であった.
また, 20-39歳発症は≤19歳発症と同程度にある
・発作の頻度はどの群も変わらず, 年1回~週1回まで様々
・≥40歳発症では胸膜炎や腹膜炎の頻度が少ない
・≥40歳発症では家族歴(+)は稀
・また, 遺伝子型はどの群でも大きくは変わらない.
-----------------------
日本国内では成人発症, ≥40歳発症のFMFも多く報告されている.
晩期発症例では腹膜炎や胸膜炎の頻度が少なく, 相対的に関節炎(股関節, 膝, 足関節)が目立つ.
もしかしたら, 高齢者の繰り返す "結晶性関節炎" のなかにFMFがいるのかもしれない.
予防目的のコルヒチンが効いてしまっているということもあるかも.
有病率が高いトルコ人、その周辺地域では, 10歳未満発症が80%と小児で発症することが多い家族性地中海熱.
しかしながら日本国内では, 30歳台, 40歳台での発症例も多く報告されており, 同じ地中海熱といいつつ日本と地中海沿岸では様相が異なることは実臨床でもよく感じる.
日本国内のFMF 292例を後ろ向きに解析し, 発症年齢 ≤19歳, 20-39歳, ≥40歳の3群に分類し, 症状/経過を比較した
(MODERN RHEUMATOLOGY 2020, VOL. 30, NO. 3, 564–567 )
・FMFの診断はLivneh criteriaを使用
・≥40歳発症のFMFは44例. 15%は晩期発症であった.
また, 20-39歳発症は≤19歳発症と同程度にある
・発作の頻度はどの群も変わらず, 年1回~週1回まで様々
・≥40歳発症では胸膜炎や腹膜炎の頻度が少ない
・≥40歳発症では家族歴(+)は稀
・また, 遺伝子型はどの群でも大きくは変わらない.
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日本国内では成人発症, ≥40歳発症のFMFも多く報告されている.
晩期発症例では腹膜炎や胸膜炎の頻度が少なく, 相対的に関節炎(股関節, 膝, 足関節)が目立つ.
もしかしたら, 高齢者の繰り返す "結晶性関節炎" のなかにFMFがいるのかもしれない.
予防目的のコルヒチンが効いてしまっているということもあるかも.
2020年5月12日火曜日
トリガーポイント注射は生食でOK. 鍼灸もOK
筋膜痛症候群
Myofascial pain syndrome: MPSは筋と筋膜に由来する疼痛を呈する症候群.
・筋肉に関連する放散痛や, トリガーポイントを認めることが特徴で, TPは筋のコリの部位に認められることが多い.
・MPSのEtiologyは様々なものが関連している.
Myofascial pain syndrome: MPSは筋と筋膜に由来する疼痛を呈する症候群.
・筋肉に関連する放散痛や, トリガーポイントを認めることが特徴で, TPは筋のコリの部位に認められることが多い.
・MPSのEtiologyは様々なものが関連している.
機械的要因 外傷, 微細な外傷, 骨折, 外科手術 姿勢, 骨格の非対称性 繰り返す同一筋帯への負荷 運動量の低下, 筋疲労 | 栄養障害 鉄欠乏 低ビタミン(B1, B6, B12, C) |
代謝/内分泌 電解質異常 甲状腺機能低下症 低血糖 高尿酸血症 | その他 Radiculopathy, 内臓疾患, 感染症 うつ病 加齢 |
多い疼痛の分布とトリガーポイントの部位
MPSではトリガーポイント注射が効果的であるが, 薬剤の使用ではアレルギーや局所反応などが問題となる.
そこで, 僧帽筋, 中臀筋/大臀筋, 胸腸肋筋, 腰方形筋, 傍脊柱筋のMPS症例51例において, TPIで使用する薬剤で効果を比較.
(American Journal of Emergency Medicine 38 (2020) 311–316 )
・Single blind RCT(患者がBlind)
・NSによるTPI群 vs Lidocaine 1% 10mL + Triamcinolone 40mg/mL使用群に割り付け, 疼痛の経過を比較した.
・TPIは25G針を使用
・投与後はBlindされた評価者が疼痛の経過をフォローする.
母集団
アウトカム
・疼痛の経過は両群で有意に改善傾向を示し, 投与後2週間の経過もほぼ同等.
頭頸部のMPSで顔面の側面に疼痛があり, 咀嚼筋にTPを認める患者群を対象としたDB-RCT.
(ORL 1996;58:306-310)
・Bupivacaine 0.25% 5mL群 vs Lignocaine 1% vs NS群に割り付けTPIを施行.
・各部位1mLを使用. 0.3mLを皮内に投与し, 0.7mLを筋膜レベルに投与
アウトカム
・どの薬剤でも疼痛抑制効果は良好に認められる.
僧帽筋のMPS症例39例において, Lidocaine 0.5%を用いたTPI群 vs 鍼灸針を刺入する群に割り付け, 比較したSingle-blind RCT.
(ACUPUNCTURE IN MEDICINE 2007;25(4):130-136.)
・処置は0, 7, 14日に施行.
・患者は60歳以上で慢性経過(6ヶ月以上)の頚部痛, 頭痛を認める群.
・6ヶ月以内に鍼灸やTPI施行した群や, 頭頸部の手術既往が1年以内にある群, オピオイド使用群, 線維筋痛症の基準を満たす群, 頚部Radiculopathy, myelopathy, 重度の心疾患, 肺疾患, 薬剤や注射へのアレルギー, 認知機能障害, コミュニケーション不可の例は除外
・鍼灸治療は伏臥位で全てのTPに対して鍼灸針を刺入.
母指と示指で近傍を触れながら, 深さは30-35mm程度で針を前後させ, TPが不活化するまで継続.
不活化は針を刺入し, 前後させた際の筋のピクつきの消失で定義
・TPIは25G針を用いて, 0.5% LidocaineをTP1カ所につき0.2mL注入
アウトカム: 疼痛の変化, うつ症状, ROMの変化
・双方とも有意に疼痛やROM, 抑うつ症状は改善
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筋膜痛症候群における治療ではトリガーポイントは有効な治療の一つ.
注射液はリドカイン+ステロイドで行われることが多いが, 生理食塩水でも効果は変わらない.
はたまた、薬液を用いない鍼灸のみでも効果は十分ある.
自分は筋膜リリースというのはNSによるトリガーポイントと認識しているのですが,
エコー下での筋膜リリースと, NSによるトリガーポイントで差がでるのかどうかは気になります.
POEMS症候群における胸腹水の性状
POEMS症候群についてはコチラ
下肢浮腫や胸水, 腹水貯留を合併することが多い疾患であるが,
これら胸水, 腹水はどのような性状になるのか, というのはあまりデータがない
POEMS症候群における腹水所見の特徴
(Ann Hematol. 2013 Dec;92(12):1661-4.)
・中国のPLA General Hospitalより, POEMS症候群106例の解析
・上記のうち腹水を認めたのは42例(39.6%)であった.
・腹水(+)群ではよりTNFα, 補体が高値となる
腹水所見
・細胞数は<200/µLで, 好中球が50%弱.
・蛋白は4.96 g/dL, SAAGは0.67±0.19 g/dLと, 非門脈圧亢進パターン
・LDHも600台と高値となる
・ADAは40 U/L付近まで上昇
・腹水では漏出性や滲出性という評価はしないが
Light基準に当てはめると, 全例が滲出性となる.
POEMS症候群における胸水所見の特徴
(Hematol Oncol. 2015 Jun;33(2):80-4.)
・中国のPLA General Hospitalより, POEMS症候群96例の解析.
・このうち41例(42.7%)で胸水(+)
・胸水(+)例ではC3, TNFα, IL-6, VEGFが高値となる
12例の胸水検査所見
・細胞数は1382/µL, 好中球はおおよそ半数
・蛋白は4.5g/dL, 胸水/血清蛋白比は0.69±0.17
・LDHは500IU/L程度と滲出性胸水となる.
---------------------
ということで, POEMS症候群における胸腹水は滲出性/非門脈亢進性となる.
基本的には血管透過性亢進の場合は滲出性.
圧差が開大して漏れる時のみ漏出性と覚えておきましょう
圧差: 静水圧, 浸透圧
例: 門脈圧上昇, 肺静脈圧上昇, 胸腔内圧の低下, 膠質浸透圧
考えれば当然なんですが, 実際データが少ないので, どうなるのか不安な人も多いのでは(自分含)
下肢浮腫や胸水, 腹水貯留を合併することが多い疾患であるが,
これら胸水, 腹水はどのような性状になるのか, というのはあまりデータがない
POEMS症候群における腹水所見の特徴
(Ann Hematol. 2013 Dec;92(12):1661-4.)
・中国のPLA General Hospitalより, POEMS症候群106例の解析
・上記のうち腹水を認めたのは42例(39.6%)であった.
・腹水(+)群ではよりTNFα, 補体が高値となる
腹水所見
・細胞数は<200/µLで, 好中球が50%弱.
・蛋白は4.96 g/dL, SAAGは0.67±0.19 g/dLと, 非門脈圧亢進パターン
・LDHも600台と高値となる
・ADAは40 U/L付近まで上昇
・腹水では漏出性や滲出性という評価はしないが
Light基準に当てはめると, 全例が滲出性となる.
POEMS症候群における胸水所見の特徴
(Hematol Oncol. 2015 Jun;33(2):80-4.)
・中国のPLA General Hospitalより, POEMS症候群96例の解析.
・このうち41例(42.7%)で胸水(+)
12例の胸水検査所見
・細胞数は1382/µL, 好中球はおおよそ半数
・蛋白は4.5g/dL, 胸水/血清蛋白比は0.69±0.17
・LDHは500IU/L程度と滲出性胸水となる.
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ということで, POEMS症候群における胸腹水は滲出性/非門脈亢進性となる.
基本的には血管透過性亢進の場合は滲出性.
圧差が開大して漏れる時のみ漏出性と覚えておきましょう
圧差: 静水圧, 浸透圧
例: 門脈圧上昇, 肺静脈圧上昇, 胸腔内圧の低下, 膠質浸透圧
考えれば当然なんですが, 実際データが少ないので, どうなるのか不安な人も多いのでは(自分含)
2020年5月8日金曜日
侵襲性髄膜炎菌感染症のセログループ別の特徴
(Clinical Infectious Diseases® 2020;70(10):2036–44)
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)にはセログループB, C, W, Yがある
・西欧ではIMD-B, Cが多かったが, 髄膜炎菌ワクチン(セログループCに対するワクチン)が広がってからはIMD-Cは減少
・セログループWは2000年以前にはたまに報告がある程度であったが, 近年増加傾向にある
オランダにおける前向きのサーベイランス
・2015-2018年に診断されたIMD症例を解析
・セログループ別のIMDの特徴を調査した.
563例のIMDのうち, IMD-Bが48%, IMD-Wが36%
・IMD-Cが減少し, IMD-Wが占める割合が増加
・近年はIMD-Wが最も多いタイプとなる
・IMD-Yは常に1割前後
セロタイプ別の特徴
・IMD-Wは中年~高齢者で多く
IMD-Bは小児例で多い
・IMD-Wでは髄膜炎よりも敗血症が多い. 肺炎のみの例もある
呼吸器症状を伴う例が45%と多い
・IMD-Bでは髄膜炎が主となる. 点状出血も多い
-------------------------
髄膜炎菌のなかにも, 中高年が主の呼吸器症状や敗血症がメインとなるタイプ(W)や, 小児の髄膜炎が主となるタイプ(B)がある.
YはWに似ている.
Cはワクチンが普及してからは減少している.
侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)にはセログループB, C, W, Yがある
・西欧ではIMD-B, Cが多かったが, 髄膜炎菌ワクチン(セログループCに対するワクチン)が広がってからはIMD-Cは減少
・セログループWは2000年以前にはたまに報告がある程度であったが, 近年増加傾向にある
オランダにおける前向きのサーベイランス
・2015-2018年に診断されたIMD症例を解析
・セログループ別のIMDの特徴を調査した.
563例のIMDのうち, IMD-Bが48%, IMD-Wが36%
・IMD-Cが減少し, IMD-Wが占める割合が増加
・近年はIMD-Wが最も多いタイプとなる
・IMD-Yは常に1割前後
セロタイプ別の特徴
・IMD-Wは中年~高齢者で多く
IMD-Bは小児例で多い
・IMD-Wでは髄膜炎よりも敗血症が多い. 肺炎のみの例もある
呼吸器症状を伴う例が45%と多い
・IMD-Bでは髄膜炎が主となる. 点状出血も多い
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髄膜炎菌のなかにも, 中高年が主の呼吸器症状や敗血症がメインとなるタイプ(W)や, 小児の髄膜炎が主となるタイプ(B)がある.
YはWに似ている.
Cはワクチンが普及してからは減少している.