ページ

2019年10月10日木曜日

感染症による蕁麻疹

2-3週間前からの繰り返す蕁麻疹で頻回に外来受診をしている女性

元々蕁麻疹の既往はなく、アレルギーもなし。
2-3週間前より全身のそう痒感を伴う膨疹を繰り返し、外来にて抗アレルギー薬の内服、H1阻害薬のDIVを受け、1日程度で消失するが、すぐに再発を繰り返す。

ペット、環境変化や薬剤、サプリメント、洗剤、化粧品、食事などまったく誘因となる要素はない。

------------------------


このような急性〜亜急性で発症し、繰り返す蕁麻疹は外来をしていると診療する機会は稀ではない.
疲労やストレスでも蕁麻疹は生じる(とされている)ため、その影響かな、と説明することもあるが, その背景に感染症があるかも、と、いつも考えている。

この患者さんでは、その眼で見ると、
「1ヶ月前から右奥歯の痛みがある」という病歴が得られた。

診察すると、右奥歯の歯肉腫脹、圧痛+
画像検査にて周囲の腫脹も認められ、歯性感染症と診断された.

----------------

この感染症は蕁麻疹の原因になりえるのか?







感染症と蕁麻疹

感染症は蕁麻疹の原因になり得る、とされているが, その因果関係の証明は難しく, あまり詰められていない領域.

2009年のReviewより, 報告がある感染症と蕁麻疹のまとめ
(Allergy, Asthma & Clinical Immunology 2009, 5:10)

細菌感染症
・ピロリ菌感染は慢性蕁麻疹との関係が強いことは以前より言われている.
・他にレンサ球菌やブドウ球菌, マイコプラズマは蕁麻疹との関係がありそう. また急性のじんま疹パターンもある.

ウイルスや寄生虫など
・様々なウイルスがじんま疹に関係する可能性がある.

じんま疹と細菌感染を評価した2014年のReview
(Allergy Asthma Proc 35:295–302, 2014; doi: 10.2500/aap.2014.35.3764)

・先程の報告よりも件数は増加.
 マイコプラズマではじんま疹性血管炎の報告もある.
 同じ非定型としてはクラミドフィラ肺炎も加わっている.

この症例のように, 歯牙感染症による慢性じんま疹, 治療により改善した症例報告もある
(F1000Research 2019, 7:1738 (https://doi.org/10.12688/f1000research.16836.3)
・1964年の報告では慢性じんま疹の29%で画像的に局所の歯牙感染症所見を認めるものもある(Allergy Asthma Clin Immunol. 2009; 5(1): 10.)
・症例報告では歯牙感染巣よりVeillonella parvula(GNR)が培養された報告があり, GNRのLipopolysaccharideが肥満細胞からのヒスタミン遊離を促進する機序が推測されている(J Oral Pathol. 1981; 10(2): 87–94.).