AVSは(正式な和訳は知りませんが)急性前庭症候群(Acute vestibular syndrome)
急性発症の眼振, 回転性めまいを呈する疾患群で,
末梢性(主に前庭神経炎)と中枢性(小脳梗塞, 脳幹梗塞)の鑑別が問題となる.
また抗GQ1b抗体は, MFS(Millar Fisher Syndrome), GBS(Guillain Barre syndrome), BBE(Bickerstaff脳幹型脳炎), Acute ophthalmoparesis(AO)で陽性となる抗体で, 特にOphthalmopareisis(眼球運動麻痺)との関連が強い.
GQ1b抗体陽性の病態を, 「GQ1b IgG抗体症候群」とも呼び,
194例の解析では以下の図のような分布となる(J Neurol Neurosurg Psychiatry 2001;70:50-5)
一部のGQ1b抗体陽性患者ではOphthalmoparesisを認めず, 失調が主となることがある.
・失調症状は脳幹や小脳の神経節の後根が障害されることで生じると説明されている.
・脳幹や小脳が障害された場合, 様々な眼振(方向交代性眼振, 中枢性頭位性眼振, 注視誘発性眼振など)を生じる.
・急性の末梢性めまい症様の症状で受診した患者において, 抗GQ1b抗体陽性であった症例報告もあり, この症例では症状極期の抗GQ1b抗体の力価は1ヶ月以内に低下し, 症状も改善, HITやカロリック試験も正常化した.
>>AVSの鑑別として抗GQ1b抗体は考慮する必要がある.
(Neurology® 2019;93:e1085-e1092. doi:10.1212/WNL.0000000000008107)
2004-2018年にSeoul National University Bundang Hospitalで診断した抗GQ1b抗体陽性113例のうち, 発症から>14日経過例や他のOphthalmoplegiaやめまい症の原因がある症例を除外した90例を解析.
・上記のうち, MFSは31例, Acute ophthalmoplegia without ataxiaが27例, GBS with ophthalmoplegiaが18例, AVSが11例, BBEが3例であった
AVSを生じた11例を解析.
・HIT異常は2/11で認められる.
・眼振は自発眼振, GEN(注視誘発性眼振)やHSN(Head shaking nystagmus), 頭位性など様々なパターンとなる.
他の抗GQ1b抗体陽性例との比較
・前駆感染症の病歴は約半数で認められる
・AVS症例でIVIGやステロイドが投与されたのは1例のみ
それでも6ヶ月後の症状は全例で改善を認める
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中枢性AVSの鑑別疾患に抗GQ1b抗体症候群がある.
HITは主に中枢パターンとなるが, 一部で末梢性もあり得る.
予後は基本的には良い.
原因がわからないAVSでは想起しておきたい.