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2019年8月28日水曜日

多すぎるビタミンDサプリは有害かも

(JAMA. 2019;322(8):736-745. doi:10.1001/jama.2019.11889 )より

カナダのカルガリーにおける単一施設, DB-RCT.
・骨粗鬆症がない健常, 55-70歳の住人で基礎の25(OH)D 30-125nmol/Lを満たす311例を対象とし
Vit D3 400 IU/d vs 4000 IU/d vs 10000 IU/d群に割り付けBMDをフォロー, 比較した.
 全群でCa <1200mg/dを併用した.

血清Ca異常, 骨に影響する薬剤を2年以内に使用した症例Vit D代謝に影響する疾患(サルコイドなど), 腎障害, 吸収不良, 2年以内の腎結石,日焼けサロンに通っている患者は除外

母集団

アウトカム

・血液検査では, 投与量が多いほど血清Ca濃度も上昇するがPTHC-telopeptideは差は認めない(C-telopeptide: 骨代謝マーカー)

BMDの変化
微妙な差ではあるがVit D投与量が多いほどBMDが低下する結果.

副作用頻度
有意差があるのは高Ca血症と高Ca尿症

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・健常人におけるVit DサプリによるBMD改善効果は微妙であり, 量が多いと反対にBMDが低下したり, 高Ca血症や高Ca尿症リスクとなる. 多ければ良いというものではない.
・ちなみに, 国内で買えるサプリは1錠1000IUで1日1錠. それだけならば多量というわけではない.
 海外で販売されているものは1錠で5000IUであり、量が多いからといって、そちらを購入している場合は注意したほうがよさそう.

2019年8月23日金曜日

薬剤の甲状腺機能異常への関連

(N Engl J Med 2019;381:749-61.)より薬剤の甲状腺機能への関連のReview

甲状腺機能に対する影響の機序と原因薬剤のまとめ
視床下部-下垂体レベルでの障害:
·レチノイドベキサロテン(タルグレチン)40-70%TSH抑制を呈する. 中止で数週間かけて改善.
·ミトタンも中枢性甲状腺機能低下症となる
免疫チェックポイント阻害薬では下垂体機能不全, 破壊性甲状腺炎
·他, ステロイド, ドパミンアゴニスト, ソマトスタチンアナログ, メトフォルミンで報告があるが, どれも軽度であり, Subclinical域であることが多い.

補足: メトフォルミンとTSHを評価したMeta
・7つのDatabase, N=206例における評価ではメトフォルミン開始後, 有意にTSHは低下する. ただし顕著ではない
A: L-T4使用中患者(甲状腺機能低下症),
B: 未使用(Subclinical患者)
(J Clin Endocrinol Metab 99: E143–E148, 2014)

甲状腺ホルモン産生, 分泌の障害
·過剰なヨウ素の摂取では甲状腺ホルモン産生が低下(Wolff-Chaikoff効果). 造影剤やアミオダロン, 消毒用ヨウ素の使用, 海藻
·リチウムは甲状腺ホルモンの分泌を抑制する

甲状腺自己免疫の賦活化
·免疫チェックポイント阻害薬. CTLA-4阻害薬使用例の5-10%, PD-1阻害薬使用例の10-20%で甲状腺に対する自己抗体が認められる. 無痛性甲状腺炎を呈することが多い.
·IL-2INF-α
·Alemtuzumab(Cell-surface antigen CD52に対するヒト化モノクローナル抗体). MSで使用されるが, 使用例の41.1%で甲状腺異常(うち71.6%がバセドウ病)

甲状腺への直接的な障害
·アミオダロン
·tyrosine kinase, multikinase阻害薬. 報告が多いのは腎細胞癌や消化管間質性腫瘍に対するSunitinib, 使用患者の14-25%で甲状腺異常を認める.

甲状腺ホルモン結合グロブリンに影響する薬剤
·結合グロブリンが増加する薬剤
 経口エストロゲン, Selective estrogen-Receptor modulators
 メサゾン, ヘロイン
 ミトタン, フルオロウラシル
·結合グロブリンが減少する薬剤
 アンドロゲン, 糖質コルチコイド, ナイアシン
·結合グロブリンから甲状腺ホルモン遊離を促進させる薬剤
 フェニトイン, カルバマゼピン, Salsalate(NSAID), 高用量フロセミド, ヘパリン
·問題となりやすいのは, チラーヂン使用中の患者におけるエストロゲン使用で, チラーヂンの必要量が増加することがある.

甲状腺ホルモン作用, 代謝, 排泄の影響
·T4からT3への変換を阻害する薬剤
 アミオダロン, デキサメサゾン(他のステロイドも), 高用量プロプラノロール, 胆道造影剤(ipodate, iopanoic acid), プロピオウラシル
·グルクロン酸抱合を誘発する薬剤では, レボチロキシンの必要量が増加する可能性がある.
 フェノバルビタール, フェニトイン, カルバマゼピン, リファンピン
·Tyrosine kinase阻害薬では, 甲状腺ホルモンの代謝に影響する可能性がある. Sorafenibではレボチロキシンの不活化を促進させる可能性が示唆.
·胆汁酸抑制薬(コレスチラミン, コレスチポール,コレセベラム)は甲状腺ホルモンの腸管循環を阻害し, 濃度を低下させる.

甲状腺ホルモンの吸収を阻害
·レボチロキシンは内服後2-4h60-80%が吸収される. 小腸で吸収される前に, 酸性環境で錠剤分解されることが必要.
 PPIの常用は吸収阻害の一因となる
·腸管の吸収を阻害するものに硫化鉄(ferrous sulfate), 炭酸Ca, 水酸化アルミニウムスクラルファート, 胆汁酸抑制薬, ラロキシフェン
 これら薬剤を使用している場合は, レボチロキシン内服後4h以上空けるか, レボチロキシンを寝前内服に移動させるかする
·牛乳やコーヒーも阻害するため, 空腹時の内服を推奨.

補足: 甲状腺機能検査に影響を与える薬剤
・使用頻度から, 注意が必要なものとしてはアミオダロン, カルバマゼピンやフェニトイン

2019年8月21日水曜日

感染症と無汗症

正直結論はわかりませんが。。。

30歳台男性, 真夏の熱疲労, 倦怠感あり.
本人曰く, 最近汗が全然でないと. 水分摂取はできている.
さらに, 四肢のピリピリした痛み, 発赤も生じる. 暑い時や風呂上がりなどに.
節々の痛みもある.

自分は無汗症なんだとおもう. 検査してほしいとの希望.

無汗症, 低汗症については
 こちら①
 こちら② を参照

・・・たしかに, 話を聞くとコリン性蕁麻疹+無汗症で矛盾しない.
ただし, 急性経過?

診察では四肢に淡い紅斑も認めている.
微熱もしばらく持続していたとの病歴.


希望も強く, 全身発汗試験を予定したが, 都合により2週間後となった.



そして, 検査を行う前に なんと, 発汗するようになったので大丈夫です. とのオチ.

ついでに, 初診時にチェックした検査で, パルボウイルスB19 IgMが陽性であった.

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正直結局なんだったのかはわかりませんが,
ウイルス感染症やマイコプラズマ感染症で自律神経障害を合併する例はある.
これもその一つなのだろうか?

論文を調べてみると, ほとんどと言って良いほど報告はない.

EBVによる伝染性単核症患者におけるIPSFを合併した報告
(Clin Exp Dermatol. 2013 Mar;38(2):156-9.)
・IPSF: Idiopathic pure sudomotor failure. AIGAのサブグループで, 若年発症, 急性経過のコリン性蕁麻疹や刺すような痛みを伴う無汗症. 他の自律神経障害は伴わない. IgE上昇を認め, ステロイドへの反応は良好.
・22歳の台湾人男性, 熱不耐, チクチクした疼痛や手掌の膨疹, 四肢体幹の皮疹を伴う低汗症で受診.
3wk前に, 2wk持続する発熱, リンパ節腫大を認めEBV Capsid antigen IgM, IgG陽性, EBNA陽性からIMと診断
・発汗試験では顔面, 頸部, 腋窩, 前胸部の一部, 手掌で発汗は保たれていたが, 他の部位では消失.
・組織検査では無汗部ではエクリン腺周囲, 血管周囲にリンパ球, 好酸球浸潤が認められていた
・他の神経学的所見は問題なし.
・IPSFと診断され2wkの抗ヒスタミン治療を行なったが反応なし
 その後mPSL 500mg3日間仕様したところ熱不耐やコリン性蕁麻疹は改善.
・1ヶ月後に発汗試験を再検すると, 発汗機能も改善あり
 その後も症状は安定した.


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報告例で見つけられたのはこれのみ
今症例では発汗試験ができていないので, 正直定かではないが, ウイルス感染症に伴う発汗機能の障害というのは実はあるのだろうと思う.

個人的印象ではあるが, 
・あまりそれを主訴に受診する人がいない可能性.
・倦怠感を感染後の慢性疲労症候群としていている可能性.
・冬とかだとそもそも気づいていない可能性
・ギランバレー様の症候群の1つとしてもあるのかもしれない.
 (以前感染後の起立性低血圧から発症, その後下肢脱力を呈したGBSがおりました)

補足までに, 感染症による自律神経障害のレビューより:
(Clin Auton Res. 2018 Feb;28(1):67-81.)

また, ジカウイルスでも自律神経障害の報告がある
(Clin Auton Res. 2018 Apr;28(2):211-214.)

2019年8月19日月曜日

副腎偶発腫瘍の自然予後

副腎の偶発腫瘍(Incidentaloma)では非機能腺腫(NFAT)や潜在性のコルチゾール分泌(Adenomas causing mild autonomous cortisol excess: MACE)が脂肪腫以外には多い.

これらは基本的にフォローとなり,
顕性化した場合や悪性化した場合は治療が必要となる.

これら腫瘍の自然経過をフォローしたMeta.

(Ann Intern Med. 2019;171:107-116. doi:10.7326/M18-3630)
非機能腺腫(NFATs)Adenomas causing mild autonomous cortisol excess(MACE)12ヶ月以上フォローした報告のMeta
・腫瘍の大きさやホルモン分泌の変化を評価した
32 studies, 前向きの評価が15, 後ろ向きが17
 N=4121例を評価(NFAT 2873, MACE 784, 464例がNFAT or MACE)
 女性例が61.5%, 平均年齢60.2
 平均フォローアップ期間は50.2ヶ月

腫瘍サイズの変化, 悪性腫瘍への転化
・平均41.9ヶ月のフォローにおいて, 腫瘍サイズが増大したのは6.3%
 10mm以上増大したのは2.5%のみ.
 MACEの方が増大しやすく(2.4%), NFATは少ない(1.2%)
・24ヶ月未満のフォローでは, 10mm以上増大するのは0.9%のみ
 24ヶ月以上のフォローでは2.9%, フォローする期間も重要
・さらに, 初期のサイズが≥25mmの場合<25mm群と比較して, 増大は軽度である傾向.

悪性腫瘍への転化は, 26 studies, N=2854において認められなかった(平均フォロー49.3ヶ月)

ホルモン産生の変化
・NFAT, MACEにおいて, 顕性のホルモン産生腫瘍に変化する例はほぼ認められない結果(2745例中, 9例のみ)
 内訳はCushing症候群が6, 褐色細胞腫が3アルドステロン症は無し
 Cushing症候群となった6例中, NFAT5, MACE1
・NFATからMACEとなったのは50.3ヶ月のフォローで4.3%[3.4-5.3]
 MACEからNFATとなったのは少なく, 18/840(49.8ヶ月)

心血管系合併症リスクもある
・フォロー中にHTや肥満, 脂質代謝異常, 耐糖能障害を発症する例もあり, フォロー時には注意が必要
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副腎偶発腫瘍の非機能腺腫やMACEは自然経過でサイズが増大することは少なく,
またホルモン分泌が顕在化することも基本的には少ない.

心血管系合併症、糖尿病、高脂血症などの新規発症例はそれなりにおり, 定期的にこれらをフォローすること, 患者教育は重要と考えられる.

2019年8月14日水曜日

薬剤性の運動障害

(Lancet Neurol 2019; 18: 880–90)
Recent developments in drug-induced movement disorders: a mixed picture.

薬剤性運動障害のReviewがでていました.
よくまとまっていて, とても勉強になりましたので, 極さらっとですが, 要点を.

薬剤性の運動障害は主にDopamine受容体阻害薬で生じる.
抗精神病薬や制吐薬が原因となることが多い
・抗精神病薬は第一世代で多く, 第二世代以降(非定型薬)ではリスクは低い

Dopamine受容体阻害薬による運動障害のタイプ
・主に
 遅発性症候群, 
 亜急性・慢性, 可逆性障害: 薬剤性パーキンソニズム, アカシジア
 急性, 可逆性障害: 急性ジストニア, NMS に分類される.

薬剤性運動障害の薬剤別の頻度・リスク
・12薬剤をReviewし, 頻度を評価した報告
(The Canadian Journal of Psychiatry / La Revue Canadienne de Psychiatrie 2018, Vol. 63(11) 730-739 )


症状別
・ハロペリドール, スルピリド, クロルプロマジンは薬剤性運動障害リスクが高い.
 ハロペリドールを常用する人はまずいないと思われるが,
 スルピリドやクロルプロマジンは未だに常用している患者はいる.
 注意すべき薬剤と認識.

Tardive Syndrome(遅発性症候群)
(Neurology 2013;81:463–469)(Lancet Neurol 2019; 18: 880–90)
抗精神病薬による不随意運動を呈する病態.
以下を満たす;
・総期間3ヶ月以上のNeurolepticの使用歴がある(継続使用, 断続使用は問わない)
・中等度以上の不随意運動が体の1箇所以上もしくは軽度な不随意運動が体の2箇所以上で認められる.
他に不随意運動を呈する疾患が除外される.

統合失調症で外来フォローされている患者の30%TSあり.
・2000-2015年に抗精神病薬を処方された11493例のうち, 21-30%TSが認められている.
 第二世代のみで治療されている群では7%程度.
・年間発症率は第一世代群では6.5%[5.3-7.8], 第二世代群では2.6%[2.0-3.1]

発症のタイミングは薬剤投与中~中止後6ヶ月以内
・中止後も発症し得る
 中止によるWithdrawal dyskinesiaとの鑑別点はTSは長期間持続する点(1ヶ月以上)
・また, 様々な運動障害パターンを合併し得る(Panel 1参照)
 Orofacial dyskinesiaStereotypiesは最も多いパターン
 Orobuccolingual movementはしばしば複雑で, 噛む様な運動, Jaw deviation, jaw opening, closing puckering, lip smacking, 異常な舌運動などを生じる嚥下や食事摂取の問題となる.
 Tardive dystoniaはやや少ないが, より障害が強い若年(30歳程度)に多い(Tardive dyskinesiaは高齢女性に多い異常な姿勢が持続し, 全身や局所のスパスムを生じる. 頸部の後屈, 後弓反射様の姿勢, 上肢の進展, 肩の内旋, 手関節の屈曲など

TSの治療: Vesicular monoamine transporter 2 阻害薬
・VMAT2阻害薬は2017年にUSAで使用可能となった薬剤.
 Velbenazine, Deutetrabenazineがある
VMAT2Monoamine, dopamine, NA, serotoninのリサイクルに関わる主要なタンパク
 Tetrabenazine(コレアジン®)は古いVMAT2阻害薬であり, 使用可能な地域が多いが, TDSに対してはClass Cエビデンス
VelbenazinePhase 3 studyまであり(KINECT3), DeutetrabenazinePhase 2 study(ARM-TD)があり, AIMS(Abnormal Involuntary Movement Scale)の低下効果が示されている.

他の薬剤
Acetazolamide; Class IIIstudyAcetazolamideThiamineの併用にて症状が軽減したとの報告があり. Acetazolamide>73yでは1.5g/d, 若年では2g/dの投与量Thiamine1.5g/dの投与量
Amantadine; Class II studyDyskinesiaの軽減効果が認められている300mg/dの投与をNeuroleptic開始時に7wk併用する方法が良い.(短期間の使用とすべき)
抗精神病薬の追加でDyskinesiaを軽減し得るが原因薬剤であり, maskしているのみとの考えも強く,  基本的に推奨されない.


TDへの対応アルゴリズム

薬剤性Parkinsonism
薬剤性の行動障害では頻度も高く, ADLへの影響も大きい
主にDopamine受容体阻害薬により生じる
頻度は8-12%, 2.5-3.3/10-y. 女性·高齢者で多い.
第二世代の抗精神病薬が出現してからは頻度は低下(1976年から2005年にかけて68%低下している)
・12種類の抗精神病薬におけるPakinsonismの評価を行なった報告では最も少ないものがAsenapine2%, 最も多いものはSulipride29%
(The Canadian Journal of Psychiatry / La Revue Canadienne de Psychiatrie 2018, Vol. 63(11) 730-739)

・他の薬剤も原因となる
(J Clin Neurol 2012;8:15-21)

薬剤性Parkinsonismは数日~数カ月の亜急性経過となる.
・最も多いタイミングは薬剤開始, 増量時だが長期間使用している状況で発症することもある(加齢により薬剤の感受性が増大するためや, 背景にParkinson病があり, 増悪する可能性が示唆)
原因薬剤中止後も数カ月~数年持続する
・薬剤開始後〜発症までの期間の分布(Mov Disord. 2011 Oct;26(12):2226-31.)


臨床的に薬剤性ParkinsonismPDを鑑別するのは難しい
DIPと特発性PDは非常に臨床症状が類似しておりまたDIPは高齢者で多いため, 両者の鑑別は困難なことが多い初期にPDと診断された6.8%DIPであった報告もある.(J Clin Neurol 2012;8:15-21)
・DaT-SPECTは両者の鑑別に有用かも
 薬剤性とPDの鑑別にDaT-SPECTは感度86%[81-90], 特異度94%[70-100]で有用( 2014 Nov;21(11):1369-e90.)


DIPの対応
(J Clin Neurol 2012;8:15-21)
DIPでは原因薬剤の中止が重要.
・原疾患(統合失調症やうつ病)で中断ができない場合は非定型抗精神病薬などのDIPの原因にはなるものの,  比較的リスクが低い薬剤に変更する

薬剤中止後数週~数カ月の経過でDIPは改善するが10-50%は中止後も症状は持続.
・経過により以下のタイプに分類される
 1) 中止後, 完全に改善し, その後も症状の出現がない
 2) 症状は持続するが, 増悪はない
 3) 症状が持続し, 増悪傾向となる
 4) 完全に改善するが, その後再発する
・1)のみが典型的なDIPであり, 他は背景にPDや類縁疾患があり薬剤によりマスクされていた症状が出現した可能性を考慮.



他の運動障害

Acute dystonic reactions

Dopamine受容体阻害薬, 特に第一世代で多い(ハロペリドールで17%, 第二世代では<2%)
また, 制吐薬での発症もある(メトクロプラミド)
・若年男性や小児例で多く, 薬剤使用後急性経過で発症する.
 初回投与でも生じる.
臨床症状はOculogyric-like crisis(注視性クリーゼ), 眼瞼痙攣, 頸部·体幹ジストニア, 口下顎ジストニア, 急性喉頭·咽頭ジストニア
 重症例だと誤嚥や窒息, 呼吸不全のリスクとなる
・抗コリン薬の投与に迅速に反応(Diphenhydramine, Benztropine)
 経静脈投与や筋肉内注射で数分で改善を認める
・効果が切れると再発するため, 再投与が必要な場合もある

Dystonic reactionを呈する薬剤
(BMJ 2007;334: 899-900)


Acute, Subacute akathisia
Akathisiaはしばしば不安感を伴うような, restlessness(落ち着きがない)な感覚で定義される.
・イライラ感や緊張感を伴い, 攻撃的な態度をとることもある.
 Stereotyped movement(常同行動)を伴うこともある
  常同行動: 目的のない行動を繰り返す. 叩いたり, 足踏みしたり, 体を揺すったりするなど.
・薬剤開始後数時間~数日で生じることが多い.
 50%1ヶ月以内に生じている.

Acute akathisiaTardive akathisiaを区別することが重要
・Tardive akathisiaは長期間投与にて生じるakathisia
 薬剤中止後, Acute akathisiaは改善するがTardive akathisiaは増悪する.

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Reviewにいくつか今までのまとめから肉付けしてみましたが、
薬剤性の運動障害の理解にとてもよくまとまっているReviewでした。
復習や知識付けに良いと思います。