副腎の偶発腫瘍(Incidentaloma)では非機能腺腫(NFAT)や潜在性のコルチゾール分泌(Adenomas causing mild autonomous cortisol excess: MACE)が脂肪腫以外には多い.
これらは基本的にフォローとなり,
顕性化した場合や悪性化した場合は治療が必要となる.
これら腫瘍の自然経過をフォローしたMeta.
(Ann Intern Med. 2019;171:107-116. doi:10.7326/M18-3630)
非機能腺腫(NFATs)とAdenomas causing mild autonomous cortisol excess(MACE)を12ヶ月以上フォローした報告のMeta
・腫瘍の大きさやホルモン分泌の変化を評価した
・32 studies, 前向きの評価が15, 後ろ向きが17
N=4121例を評価(NFAT 2873, MACE 784, 464例がNFAT or MACE)
女性例が61.5%, 平均年齢60.2歳
平均フォローアップ期間は50.2ヶ月
腫瘍サイズの変化, 悪性腫瘍への転化
・平均41.9ヶ月のフォローにおいて, 腫瘍サイズが増大したのは6.3%
10mm以上増大したのは2.5%のみ.
MACEの方が増大しやすく(2.4%), NFATは少ない(1.2%)
・24ヶ月未満のフォローでは, 10mm以上増大するのは0.9%のみ
24ヶ月以上のフォローでは2.9%と, フォローする期間も重要
・さらに, 初期のサイズが≥25mmの場合, <25mm群と比較して, 増大は軽度である傾向.
・悪性腫瘍への転化は, 26 studies, N=2854において, 認められなかった(平均フォロー49.3ヶ月)
ホルモン産生の変化
・NFAT, MACEにおいて, 顕性のホルモン産生腫瘍に変化する例はほぼ認められない結果(2745例中, 9例のみ)
内訳はCushing症候群が6例, 褐色細胞腫が3例. アルドステロン症は無し
Cushing症候群となった6例中, NFATが5例, MACEが1例
・NFATからMACEとなったのは50.3ヶ月のフォローで4.3%[3.4-5.3]
MACEからNFATとなったのは少なく, 18/840(49.8ヶ月)
心血管系合併症リスクもある
・フォロー中にHTや肥満, 脂質代謝異常, 耐糖能障害を発症する例もあり, フォロー時には注意が必要
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副腎偶発腫瘍の非機能腺腫やMACEは自然経過でサイズが増大することは少なく,
またホルモン分泌が顕在化することも基本的には少ない.
心血管系合併症、糖尿病、高脂血症などの新規発症例はそれなりにおり, 定期的にこれらをフォローすること, 患者教育は重要と考えられる.