COMPASS trialにおけるPPI使用症例の比較が発表されました.
COMPASS trial: 安定した動脈硬化性血管疾患の既往がある患者を対象とした3x2 partial factrial designのDB-RCT.
(N Engl J Med 2017;377:1319-30.)
・患者は冠動脈疾患もしくはPADの既往がある群.
20年以内にMI既往, 多枝病変, 狭心症既往がある患者
<65歳の冠動脈疾患患者では, さらに2つ以上のリスク因子を有する群(喫煙, DM, GFR<60mL/分, 心不全, 1ヶ月以上前の非ラクナ梗塞)
・除外項目: 出血リスクが高い, 最近のStroke, 出血性梗塞やラクナ梗塞, 重症心不全, GFR<15mL/分, DAPT, 抗凝固施行, 他の抗血小板療法, 心血管疾患以外で予後不良な状況
上記患者群を
・Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA 100mg
vs Rivaroxaban 5mg bid単独
vs ASA 100mg単独群に割付け, 血管イベントリスクを評価.
さらに, 上記のうち, 臨床的にPPIが不要と判断された患者において
Pantoprazole 40mg vs Placebo群に割り付け上部消化管出血リスクを比較した.
Rivaroxaban, ASAの比較については省略.
結果としては, ASA単独と比較して, Rivaroxaban 2.5mg bid + ASA群において, 有意に脳梗塞リスクは低下し, 脳出血リスクは有意差なし. Rivaroxaban 5mg bidでは脳梗塞リスクは低下するが, 脳出血リスクは上昇する.
この結果により, Rivaroxaban, ASAの評価は途中でStudyは終了となっている
Pantoprazoleの比較は平均3年間継続
(Gastroenterology (2019), doi: https://doi.org/10.1053/j.gastro.2019.04.041.)
母集団
アウトカム
・PPI使用の有無で, 上部消化管出血リスクは同等
・画像や検査で証明された上部消化管出血はPPI群で少ないものの, その差は0.2%程度.
NNTはおおよそ500と多い.
・抗凝固療法, ASA投与群別の評価.
ASA 100mg投与群でのみ有意差を認めるが, Absolute risk reductionは微々たるもの.
-----------------------------
DOAC(rivaroxaban)やASA使用患者におけるPPIの予防投与は,
明らかな上部消化管の病変からの出血リスクは軽減するが, NNTは500オーバーと実感するのは難しいレベル.
でのPPIによる上部消化管出血リスク軽減効果はNNT 200程度であり,
「DOACやASAを使用しているからPPI」ではなく,
さらに+αのリスク因子を考慮し, PPIの開始, 継続を検討する必要がある.